"1日3つチャンスを書くと進む道が見えてくる"、そんなキャッチフレーズで話題となっている「ミーニング・ノート」をご存じだろうか。「1日3つ、チャンスをノートに書く」「ノートに書いたチャンスを見返す」、この2つを繰り返すというシンプルなノート法だ。

このノート法の発案者は、株式会社ダイジョーブのCEOで、渋谷のスタートアップであるオシロ株式会社のCOOも務める山田智恵さん。一部上場企業へ転職後1年で部長に昇格、日本で初めてInstagram・マーケティングの著書を出すなど、華々しい経歴の持ち主だが、実は32歳で初の就職活動をし、ゼロからキャリアを切り開いてきたという。

彼女はどのようにして自らのキャリアを花開かせていったのか、そして彼女の人生を好転させることとなったノート法とはどんなものなのか。20~30代社会人女子のための少人数制キャリアイベント「オンナの未来塾」で行われた講演の内容を中心にお伝えする。

  • 20~30代社会人女子のための少人数制キャリアイベント「オンナの未来塾」で行われた講演

お嬢様生活から一転、リーマンショックで人生に絶望した日々

大学を卒業後、父親が経営する製造業の会社で働いていたという山田さん。当時は自分の人生やキャリアについて、真剣に考えたことがなかったという。

「"行くところがなかったので、入れてもらった"という感じです。仕事をやってはいたのですが、精神的にも経済的にも自立していなくて……ラッキーを享受していただけで、そこでのキャリアの実績はほとんどないですね」。

高層ビルの最上階にあるオフィスへ車で出勤するというバブリーな日々。しかしリーマンショックを機に、状況は一変する。父親の会社の経営が立ち行かなくなり、民事再生を申請。翌年には山田さんを含む一家全員が無職となってしまったのだ。

「好きなことも得意なことも、スキルも実績もない。そもそも働きたくないっていう状態で第2の人生が始まりました。これからどうやって生きていけばいいのか分からず、人生に絶望していました」。

そんな中、どうにか前向きに人生を進めなくてはと始めたのが、「うれしいこと日記」だったという。

「"お母さんが玄関まで笑顔で送り出してくれた"とか"雨の日で湿度が高いのも良いものだな"など、ささいなことでも書いていくうちに、『人生ってそんなに悪いことばかりではない』と思えるようになったんです」。

そして32歳にして初めての就職活動を開始。履歴書の書き方も、そもそも世の中にどのような業界があるのかも分からない状態だったが、3社目の面接で大手印刷会社の内定を獲得。契約社員から山田さんの第2の人生はスタートした。

  • 山田智恵さん

同じ努力をしても追いつけない、チャンスをつかむしかない!

入社後は、見積書の作り方も宅急便の送り方も分からないところからのスタート。

「気持ちとしては社会人デビュー。10年遅れの社会人生活が始まったという感じでした」。

みんなと同じ努力をしても絶対に追いつけない、何とか「チャンス」をつかまないといけない。そう思ったとき、思い返すのは過去に逃してきたチャンスの数々だったそうだ。

「あの時留学していたら、みんなと同じように就職活動をしていたら、結婚していれば……今まで逃してきたチャンスを振り返り、体が震えるほど後悔しました。そして今この瞬間も、チャンスを逃してしまっているかもしれないと思いました」と山田さん。

今あるチャンスを逃したら、未来の私が後悔する。そんな思いがあって、失業後から続けていた「うれしいこと日記」を「チャンスを書く日記」に変えた。これが、山田さんが現在提唱している「ミーニング・ノート」の原型だ。

  • ミーニング・ノート(ウィークリーページ)の書き方

その日起こった印象的な出来事(チャンス)を1日3つノートに書き、ノートに書いたチャンスを見返すといったシンプルなノート法。チャンスは決して大きな出来事でなくても良く、山田さんも「今日はたくさん寝た」といった非常に小さなチャンスから書き連ねていったという。

うれしかったこと、学んだこと、●●さんと会った、●●に誘われた……それらの出来事に自分の中で一つひとつ意味づけをし、毎日3つ、1カ月で90個、1年では1,000個と記録していく。すると、一つひとつのチャンスがつながっていき、自らが進むべき道が見えてきたという。

「日常の些細な出来事だったとしても、『チャンスかもしれない』と意味づけしていくことで、行動が積極的になっていくんです」

そんな風にチャンスを書いていくうちに、たまたま友人から送られてきたメールでさらなる大きなチャンスのきっかけをつかむ。友人の勤めるインターネット広告代理店への転職が決まり、当時(2012年)黎明期だったソーシャルメディアの事業を担う部門へと活躍の場を移すこととなったのだ。

「ソーシャルメディアが伸びることは明白だったけれど、まだ新しい業界。ここなら実績ゼロの状態から参入しても、活躍できるかもしれない」。

転職先では1年で、上司から部長職を打診されたり、ボストンでのリーダーシッププログラムに参加することになったり、本を書くことになったりと、たくさんのチャンスが舞い込んできたそうだ。

"目の前の出来事に価値を見出す力"で人生を切り開け

このように人生を変えたノート法をもっと多くの人に広めたい。そんな思いから現在は会社を設立し、スタートアップのCOOも務めながら、セミナーや講演を行うようになった山田さん。

自らの人生を好転させたミーニング・ノートには、以下のような意義があると実感しているそうだ。

1.「目の前に起きたことに価値や可能性を見つけ出し、柔軟に変化していく」生き方に変わる

2.「今」に集中することができる

3.「自分の心」と対話できる

4.「縁」の大切さを感じることができる

5.進む道が見えてくる

「次に何が起きるのか分からない、そんな時代には目標設定すること自体に無理がある。今何が起きているのかを捉えて、価値を見出す力が鍵になる」(山田さん)。

情報過多の時代、外からの情報ばかりが頭の中を占めていて、自分が何を感じ、何を考えているのかについては、見失いがちだ。1日数分、腰を落ち着けてノートに向き合う時間が、自分らしい人生を切り開いていってくれるかもしれない。

『ミーニング・ノート 1日3つ、チャンスを書くと進む道が見えてくる』(山田智恵著/金風舎)

「1日3つ、チャンスをノートに書く」「ノートに書いたチャンスを見返す」。「ミーニング・ノート」で必要なのは、このシンプルな行動だけ。これを続けると、「自分に起きる出来事(チャンス)に価値を見出す力=『意味づけ力』がアップする」「無理に目標を立てなくても、目の前で起きていることを捉えて、変化できる」「『ないもの』ではなく『あるもの』に豊かさを感じ、幸福感が高まる」という生き方にシフトしていくことができます。

本書では、自分に起こる出来事からチャンスを探して、見出した価値をノートに書いていく方法を解説します。出来事に価値や可能性を見出せると、迷いや不安が消えていき、自分の進むべき方向が定まっていきます。このノートメソッドが「個人の時代を支える」セルフ・サポートツールとなることを期待します。

『ミーニング・ノート1 日3つ、チャンスを書くと進む道が見えてくる』