• 岩田剛典 (C)フジテレビ

――バディの若宮役、岩田さんの魅力についてお伺いします。獅子雄との関係は、『シャーロック』が“月9”というのもあって、2人が惹かれあっていくようにも見えますね。岩田さん相手だと全く違和感がないというか、かわいらしく見えてきて魅力的です。

いい化学反応を起こしてくれたなと思います。僕は岩田さんとは初めてお仕事をしたので、最初はどんな感じになるのかなと思っていたんです。ディーンさんは“モンテ”でご一緒していたので彼の造詣の深さとか魅力は自分の中で想定できたんですけれど、それに対するバディはどうかと考えたときに、2人のキャッチボールがうまくいかないとドラマが崩壊してしまうなと思いました。

そのキャッチボールをうまく見せるにはもう1人の視点が必要だなと思って、他のキャストをいろいろ悩んであたってみたときに、ラッキーなことに『美女か野獣』でもご一緒した(佐々木)蔵之介さんが入ってくれたので、そこでひと安心しました。あとは自分が岩田さんとどれだけ勝負できるか、芝居の現場でどう戦うことになるのかなって思っていたのですが、彼はすごく魅力的でしたね。

――岩田さんはすごくツッコミがうまいですよね。返しの間とかが絶妙です。どんな演出をしていったんですか?

第1話の若宮というのは、自分の友人で医者の同僚が死んでしまったり、自分が疑われてしまったりと、自分を抑える芝居が延々と続くんですけれど、ラストに若宮が窓からモノを投げるシーンがあったじゃないですか。あそこで初めて若宮が“解放”され、バディの時間が始まるんです。ラストシーンで視聴者がこの先も2人を見届けたい、と思わせられればなと。まずは2人の関係づくりのために、ラストシーンからリハーサルを始めました。

――あのシーンは、最悪の出会いから始まり、突然2人が同居することになり、マンションの窓から物を落とす…という共通点から『ロングバケーション』の第1話の名シーン“スーパーボールを窓から落とす”とかかっていて、そのオマージュだとばかり思っていました(笑)

それはないですね(笑)。最初の段階で1話の終わりに2人で住み始めるというのは決めていて、勝手に土足でずかずかと入り込んでくる獅子雄に対して若宮がどういうリアクションをすれば“解放”されるのかなって考えたんです。口ではふざけるなとか警察呼ぶぞとか言うんだけれど、なあなあで住み始めて押し込まれちゃう。家賃が助かるとか職がないからとか理屈ではいろいろお膳立てはできるんだけど、それだけじゃなくて、獅子雄にとって若宮は「面白い奴だな」と思われなきゃいけないですよね。そうしたときに、もし仮に獅子雄の部屋に若宮が押し入ってきたら、獅子雄ならどうするのか!?…そんな想像をしながら作りました。

――確かにシンパシーを感じるシーンにも見えました。

先ほどツッコミがうまいとおっしゃいましたが、リハで彼がツッコんだときにいい表情を見せたので、これが彼の持ち味なんだなっと思っていろいろ考えたりしました。彼からどんな反応が返ってくるかを見たくなったんですね。1話で船の上で彼に熱湯がかかるシーンがあるんですが、最初の台本では獅子雄に熱湯をかけようとしたら若宮も目を覚まして、2人でそれを止めて収めるというシーンだったんです。だけど、彼の中に死んだ友人に対する無念さとか悔しさとか犯人に対する憤りとか、そういう怨念があるときに、痛いとか熱いとかの思いや感情とは違うものが加わったらどういう芝居になるんだろうと思って。そういう反応が見たくなって、どんどん肉付けしてあのシーンができたんです。

――その後も、若宮に熱湯がかかって「熱い!」とリアクションするくだりが何回もありました(笑)

あれを気に入っちゃったのか分からないんだけど、彼が「『熱い』やりたい!『熱い』やりたい!」って言って(笑)。彼は、時々子供みたいに思いのままなことを言うのがチャーミングでとてもかわいいですね(笑)

――監督が担当した第7話で、かかりそうでかからない…けどやっぱりかかるというあのくだりは最高でした。

そうですね(笑)。獅子雄と若宮の2人を見て、こういう風にしたら化学反応が起きるんじゃないか?と思って作りました。

  • 岩田剛典(左)とディーン・フジオカ (C)フジテレビ

■物語に深みを増す佐々木蔵之介

――主要キャストの3人目である江藤礼二役の佐々木蔵之介さんについて伺います。前回の第10話のラストで全てがひっくり返るようなお芝居をされていて衝撃的でした。佐々木さんの印象、キャラクターづくりはどうされたのでしょうか?

蔵之介さんは『美女か野獣』で出会った当時は舞台では有名で、ドラマではまだ主演もやられていないときだったんですけれど、センスの塊で天才だなって思いました。先ほども言いましたけど、2人のキャッチボールを華麗に見せるためにはもう1人の視点が必要で、この『シャーロック』という舞台づくりを江藤という役柄以上にもやってもらっていますし、彼は役の幅も広い人ですから、ああいう形でおバカっぽいことをやりつつ、シリアスな芝居をやると物語に深みが増すことができます。

――あの全てがひっくり返る展開は、最初から考えていたんですか?

ひっくり返るという明確なものはなかったですけれど、江藤という役は、ただの賑やかしだけではないようにしたいというのはありました。ですので、最終回前の最後に国歌斉唱しているっていうのを考えたんですね。

――江藤警部はあの前に「獅子雄が事件を解決できるように自分が導いてるんだ」ってコミカルに話していて、その後に国歌斉唱があったので、そのセリフの意味もそうですし、これまでの回も全てひっくり返ったようですごく衝撃的でした。その国歌斉唱を最後に足したというのには驚きました。

“マジシャンズセレクト”をモチーフにした回で、実は自分の方がリードしているんだという意味で、そこに陥るには何がインパクトがあるのかなって考えたんです。

  • 佐々木蔵之介 (C)フジテレビ

――それでは、最終回(12月16日放送)の見どころを教えてください。

それはもう、最終回は井上由美子さんと太田(大)プロデューサー渾身の“シャーロック愛”ですね。そして、僕にとっての冒険小説の部分は、若宮の独り立ちですね。最初に作り出したときのその2つの要素の集大成です。

●西谷弘
1962年生まれ、東京都出身。これまでに手がけた主な作品は、ドラマは『美女か野獣』『白い巨塔』『エンジン』『ガリレオ』『任侠ヘルパー』『昼顔~平日午後3時の恋人たち~』など。映画は『容疑者Xの献身』『アマルフィ 女神の報酬』『真夏の方程式』『昼顔』などで、現在『マチネの終わりに』が公開中。