鉄道・バス等の交通機関をスマートフォンで手軽に選択、決済できる2次交通統合型サービス、観光型MaaSの伊豆半島で行われている実証実験が12月1日から「Phase2」に移行した。これに先立ち、11月にメディア説明会も行われた。
メディア説明会では、まずジェイアール東日本企画の常務取締役営業本部長、高橋敦司氏から「Phase1」の結果と課題について説明が行われた。「Phase1」は今年の4月1日から6月30日にかけて実施。名称は「Izuko」とし、「Phase1」では専用アプリとして配信。クレジットカード決済による交通機関のデジタルフリーパスや、AIオンデマンド乗合交通の予約、観光6施設での決済などを機能として実験を行った。
数値上の結果としては、開始57日で想定を大幅に超える2万3,231ダウンロードに達したが、一方で実際に購入された交通機関や観光施設のデジタルパス購入数は合計1,045件と、非常に少ない結果に終わったという。
数値目標でいえば成功と失敗が半々という結果だったが、この実験を受けて現地の参画意識が変わってきていると高橋氏は語る。地元の学生らも、観光型MaaSについて学びを深めているそうだ。観光利用の面においても、アプリ内で決済して画面を「見せるだけ」で鉄道・バスに乗れる点は非常に便利なことが判明した。
しかし、当日に現地に行かないとデジタルパスを購入できない使いづらさや、画面を見せるだけで入場可能なことによる不正への懸念、さらには旅行者に勧めるサービスがそもそもアプリで良いのか、などが今後の課題として明らかになってきた。
これらの点を踏まえた上で、「Phase2」での改善策が東急の都市交通戦略企画グループ課長、森田創氏から発表された。
「Phase2」では、「Izuko」をアプリではなくウェブシステムとして配信。「Phase1」のようにアプリをダウンロードする必要がないため、端末のバッテリー消費を抑え、商品展開も柔軟に行うことができる。各施設のポスターや、伊豆急行線の車両の中吊り広告にはQRコードが掲載され、これを読み取ることで、移動中でも「Izuko」での決済や予約が可能になる。
UIはわかりやすく改良され、同サービスを利用して鉄道・バスおよび観光施設のデジタルパスを購入する際には、選択・購入・見せる(パスを選んで、買って、その画面を現地で見せる)という3ステップで完了する。説明ページも充実するので、使い方がわからなくても安心して利用できる。
検索機能においては、鉄道・バスに加えて飛行機と船も検索に加わり、使いやすさが向上した。「Phase2」の実験期間は旧正月や河津桜の開花時期とも重なることから、言語設定では従来の日本語と英語に加え、繁体字も追加された。
商品内容も大幅に拡大し、交通機関のデジタルフリーパス、観光施設のデジタルパス、オンデマンド交通の停留所の増加に加え、JR伊東線や熱海周辺エリア、三島駅周辺エリアが「Izuko」の利用可能範囲内に加わった。
「Phase2」では地域のエンタメ企画および商業などともタイアップし、デジタルフリーパスを利用することで参加可能なイベントや、ショッピングの割引などが実施される予定。あわせて宿泊時の特典付与、キャッシュレス対応の施設も「Phase2」において拡大。「Izuko」の利用をきっかけに、伊豆エリアの観光をより楽しみやすくする。
説明会の終了後、「Phase2」でサービス開始予定となった「Izuko」のデモ体験が行われた。観光施設でデジタルパスを使って入場する際、決済した画面を見せると電子スタンプを押してもらえる。画面にスタンプ押印欄が用意されており、その中にスタンプが押されるしくみとなっている。
交通機関のデジタルフリーパスにおいても、基本的には見せるだけで利用可能になる。フリーパスを買う場合には、氏名、メールアドレス、クレジットカード情報が必要になるが、観光情報などを見るだけなら個人情報の登録不要で自由に閲覧可能とのこと。今回は特急「踊り子」が走っている画面を表示できていれば、決済完了の証明になる。
最後に、下田市内で実験予定のオンデマンド交通について、配車方法が紹介された。イッツ・コミュニケーションズと共同開発したデモ機に、オンデマンド交通予約機能が実証実験用に追加され、モニターの家庭に準備される。画面の指示に従い、リモコン操作で手続きを進めて行けば、スマートフォンを使わなくても家庭で簡単に配車が可能になる。モニターの家庭には、デジタルフリーパスとは別に乗車証が配布され、それを使ってオンデマンド交通に乗降する。
伊豆半島の観光型MaaS「Izuko」実証実験「Phase2」は12月1日から始まり、実証実験の期間は2020年3月10日までの予定。「Phase1」の結果をもとに使いやすい機能とし、観光の楽しさや地域内交通の利便性向上に向けた実験を行っていく。