JR・大手私鉄をはじめとする全国の鉄道事業者による全面協力の下、1964(昭和39)年の東京オリンピック・パラリンピック開催以降の鉄道文化を紹介する「特別展 天空ノ鉄道物語」が、12月3日から東京都港区の六本木ヒルズ森タワー52階、森アーツセンターギャラリー&スカイギャラリーで開催されている。
この展示会は、全国の鉄道系博物館でも通常は見られない展示品を軸に、国鉄時代の駅と改札を再現し、歴史を振り返る空間が広がる。過去のヘッドマークや時刻表、制服なども展示され、これまでの鉄道を振り返る体感型の展示会となっている。
開催に先立ち、12月2日に報道関係者向けの内覧会が実施され、オープニングセレモニーも行われた。主催者を代表し、日本テレビ事業局長の沢桂一氏が、「前回のオリンピック以降の鉄道文化を未来に継承するため、今回の特別展を開催しました。総計1,000点の展示品には一般初公開のものもあります。できる限り多くの皆様に足を運んでいただきたい」と挨拶した。
「特別展 天空ノ鉄道物語」を監修した建築家・デザイナーの川西康之氏は、この展示会の趣旨を「鉄道は多くの人があこがれ、夢と希望を運ぶ交通機関ですが、それだけでなく、地域を元気にする役目を持っていることも知ってほしい」と説明した。
続いてアンバサダーを務める中川家礼二さんと松井玲奈さんが登場。アンバサダー就任に関して、松井さんは「光栄以外の何物でもない」と話し、礼二さんも「鉄道の仕事をしてきてよかった」と喜んでいる様子だった。
■鉄道の発展、現在までの変化を一堂に展示
鉄道が好きになったきっかけについて、松井さんは「リニア・鉄道館を見て」、礼二さんは「先頭車両でかぶりつきをして」とコメント。今回の展示で最も印象に残ったものとして、松井さんは新幹線0系の鼻、礼二さんはJR各社の制服を挙げた。「一度に見られる機会はない」(礼二さん)とのことだ。オープニングセレモニーではその後、川西氏と礼二さん、松井さんも参加しての記念のテープカットが行われた。
展示会の会場に入ると、まずはダッチングマシンが展示されている。振り返ると、国鉄時代の上野駅改札が再現されていた。東北・上越方面の夜行列車の発車案内が下がっており、夜行列車全盛期の上野駅を思い起こさせる。もちろん有人改札である。
国鉄時代のヘッドマークや新幹線の座席、0系の車体前面などが展示され、昔の鉄道を懐かしむことができる。JR移行期の展示では、当時のポスターや記念列車のヘッドマークが並び、JR発足からかなりの時間が経過したことを実感する人も多いだろう。
在来線時代の青函トンネルや夜行列車関連の展示では、急行「はまなす」のヘッドマークや寝台特急「北斗星」「トワイライトエクスプレス」のヘッドマークも。いまは見られなくなった客車夜行列車を思い出す人も多いだろう。
新潟県糸魚川市で展示される予定の「トワイライトエクスプレス」レプリカでは、最後尾の「スイート」や食堂車「ダイナープレヤデス」が再現され、テーブルの上にはカトラリーがフルコース向けとしてセットされていた。
このレプリカは、糸魚川大火の復興支援として寄付した「トワイライトエクスプレス」の車両部品をはじめ、糸魚川市および新潟県の技術を結集した木造で再現した箇所もあるという。糸魚川市は札幌駅へ向かう同列車がちょうど夕暮れになるころに通るエリアであり、地元の人のあこがれの列車であったという。
JR各社による制服の展示に続き、1964年以降の時刻表が展示した「時刻表ライブラリー」へ。かつてのダイヤ改正を思い出す表紙を見つける人も多いことだろう。一部の時刻表は手に取ることができ、2011年3月号も閲覧できた。九州新幹線開業も含む同年3月12日のダイヤ改正後の時刻が掲載されていたが、3月11日に発生した東日本大震災の影響で、この時刻表通りに列車が走ることはなかった。
そしてリニアなど未来の鉄道を考えるコーナーへ。鉄道写真家の中井精也氏による写真で三陸鉄道の奮闘も見ることができ、地方における鉄道の存在を強く感じられる。途中、休憩施設の「天空橋カフェ」にて、鉄道にちなんだメニューも提供される。
SLエリアに入ると、ダンボール製の一号機関車、機関士の乗務員の制服などが展示されている。鉄道車両ドアを使ったデジタルインスタレーションでは、ひとつひとつのドアを触ると開閉し、中からさまざまなものが飛び出すしかけになっていた。
青函連絡船関連の展示のほか、過去の廃線時または開業時のヘッドマークなどの展示もあり、時代の変化を感じられる。最後は営団地下鉄時代の券売機や自動改札を通った。タッチ箇所のない自動改札がなつかしい。
1964年以降、60年近くに及ぶ鉄道の変化を展示した「特別展 天空ノ鉄道物語」は2020年3月22日まで開催予定。「あの時代は……」と思い出せる展示会である。