ボーナスが支給される時期になりました。ボーナスをどう使うかは生活設計上、皆様が考えている以上に重要な局面です。日頃手にしない額ですし、プラスアルファのお金という高揚感もあります。またこの時期は何かと出費の多い時期でもあり、つい油断すると思わぬ金額を使ってしまったということも珍しくないでしょう。
ボーナス時期こそ、その使い道で人生設計が問われる時ではないかと思います。しっかり考えてから、ボーナスを使い道を配分しましょう。
ローンと割賦払いの違い
ローンにはいろいろな種類があります。それぞれに一括返済のメリット・デメリットが異なります。代表的なものは住宅ローンです。その他に、自動車ローン、教育ローン、カードローンなどがあり、その背景には大きな違いがあります。
住宅ローンであれば、住まいという不動産が手に入ります。家賃を消費しなくても済みますし、不要になれば売ったり貸したりもできます。まったくの消費財とは異なります。車は高額で、地域や職業によっては必需品で、ローンを利用せざるを得ない面もあります。教育ローンは、それがないと子供が状況教育を受けられないのであれば、子どもの将来への投資として、やむをえないケースもあります。
一方、カードローンは他のローンと少し異なります。他のローンと比較して利用目的が規定されません。金利もJCBのカードローンで年利4.40~12.50%と高い設定です。
また、ローンと似たような制度に「割賦払い」というものがあります。「割賦払い」とは、分割して返済を行うことで3回から24回まで選択が可能。対象は物品の購入に限られます。
「割賦払い」と「ローン」の違いは、対象となるものの違いのほか、対象の所有権がどこにあるかが違います。「割賦払い」の所有は返済が完了するまでは金融機関等ですが、「ローン」は購入者に所有が移ります。また金利の計算も異なります。「割賦払い」はあらかじめ決められた利子と返済回数に基づいて、月々の返済額が決められますが、「ローン」は当初は設定された利率と返済期間によって、毎月返済額は設定されますが、考え方としては、借入残高に対する利息の再計算です。
そのために繰り上げ返済や一括返済は「ローン」の方が、考え方にマッチする側面があります。ただし、「割賦払い」でも、繰り上げ返済や一括返済が可能ですが、手数料等は個別に問い合わせください。ローンに関しても、タイプによっては手数料がかかります。一括返済に関するメリットやデメリットもローンのタイプによっても異なります。事前に調べてから着手してください。
手数料にご注意!
ローンの繰上げ返済や一括返済には、別途手数料が必要なことが一般的です。手数料から考えると、繰り上げ返済等で少なくなった利息分よりも手数料の方が高くなるケースもあります。
住宅ローンについて考えると、フラット35のような証券化ローンは、繰り上げ返済に手数料はかかりません。繰上げ返済額は、インターネットサービス「住・My Note」利用の場合は10万円以上、取扱金融機関の窓口利用の場合は100万円以上からとなっています。
証券化ローンでも商品によって多少条件が異なりますし、通常の住宅ローンは手数料が必要です。※なお、証券化ローンとは、民間の金融機関が発売した長期固定金利の住宅ローンの債権を住宅金融支援機構等が買い取り、投資家に販売するものです。
民間の金融機関にとって、長期の固定金利商品を販売することは経営リスクが高く、商品化が難しくなります。以前は住宅金融公庫が長期の固定金利の住宅ローンをほぼ独占的に扱っていましたが、民間金融機関の活性化のために、フラット35を代表とする証券化ローンの制度が作られました。
一括返済は応用が利かない
30代、40代になると、多くの方は住宅ローンを借り入れていると思います。完済後を考えれば、住宅ローンのない住まいがあるとないとでは大違いです。その反面、ローン返済中は万一の時のリスクもあります。団体信用生命保険の支払い対象ではない病気やケガで収入が少なくなった、不景気で思ったより収入が伸びなかったなど、返済に窮する事態は誰にも起きうることとして想定しておく必要があります。そのために、繰り上げ返済や一括払いで住宅ローンの負担を低減させることは意味があります。他のローンも同じです。
特に変動金利で借り入れている場合は、金利上昇のリスクは高く、上手に繰り上げ返済していくことは考えた方がよいでしょう。
しかし、現金の使い道はいろいろありますが、一旦ローン返済に充ててしまうと、後戻りはできません。万一の治療費や、先々の教育資金、老後の準備として今から加入しておくと掛け金や保険料が低く抑えられるプラスαの年金の加入など、必要な他の資金準備とのバランスが重要です。
そのためにボーナスをどう使うかは長期的計画のもとに考えなくてはならないのです。
その他の資金が準備された後の一括返済は?
では「万一のための資金は準備済みである」「ローンは固定金利で借り入れていて、ある程度余裕がある」「将来の教育資金や老後の資金も準備を始めている」……とした場合、ボーナスをローンの一括返済や繰り上げ返済に着手してよいでしょうか。
住宅ローンの場合は、団体信用生命保険(以下団信)加入により、債務者が亡くなられたり、所定の障害を負われたりした場合、残債に対して保険金が支払われます。保険料も割安で有利な保険です。そのために団信に加入したら、今まで加入していた生命保険を見直せる可能性があります。
反対に、一括返済してしまうと、団信から外れますので、借入金のない住まいがあることにはなりますが、念のために、再度生命保険の必要額を検討した方がよいでしょう。
また若い方は、長期的な資産形成面からみて一定範囲の投資も必要です。他の資金の準備がすでに進んでいる冒頭の設定の場合、もし投資の利回りが固定金利よりも高ければ、ローンはそのまま維持し、投資に資金を回すという選択もないわけではありません。
投機的な投資は、よほどの余剰金でない限り問題も多いですが、長期的な人生設計と収支設計から見て、一定範囲、一定利回りの投資が妥当と判断できれば、ローンを温存して投資に回すことも考えられます。
結局は人生設計次第なのです。ローンという借財を負っている以上は、少なくとも返済完了まで、人生100年と言われる時代なので100歳までの生涯収支表を作成してしかるべきだと思います。一括返済が先々どのような効果となって表れるかを数値で把握することができますし、問題点なども事前に発見することができるのです。