JR東海は30日、N700S確認試験車の本線走行を東海道新幹線東京~豊橋間で行い、車内設備を報道関係者らに公開した。グリーン車・普通車の乗り心地を体感するとともに、特大荷物コーナーや2カ所の車いすスペースなどの設備も紹介された。

  • 東京駅19番線ホームで発車を待つN700S確認試験車(写真:マイナビニュース)

    東京駅19番線ホームで発車を待つN700S確認試験車

N700S確認試験車(J0編成)は2018年、N700系以来のフルモデルチェンジとなる次期新幹線車両の営業投入を目的とし、新技術の最終確認を行うために開発・製造。おもに東海道新幹線で走行試験を重ねてきた。N700Sの量産車は2020年7月から営業運転を開始する予定で、これまで積み上げてきた技術開発の成果を取り入れ、安全性・安定性の向上や異常時対応力の強化、快適性・利便性の向上、さまざまな編成長を容易に構成できる「標準車両」といった特徴を有する車両となる。

報道公開が行われた10月30日、N700S確認試験車は9時37分頃、東京駅19番線ホームへ入線。報道関係者らが乗車した後、9時53分に発車した。車内では2班に分かれ、交代でグリーン車(10号車)・普通車(15号車)に乗車。あわせて11号車に設置された2カ所の車いすスペース、2023年度から利用可能となる特大荷物コーナーも公開された。

グリーン車は個の空間を演出したデザインコンセプトを実現するため、座席ごとに荷棚と一体化した大型の側面パネルを採用。シートは背もたれと連動して深く沈み込む機構とし、長時間座っても疲れにくいように工夫された。ヘッドカバー横に取り付けた読書灯は従来より照射範囲を広げている。N700Sではフルアクティブ制振制御装置をグリーン車と一部の普通車に搭載し、体に感じる横揺れを軽減して乗り心地の向上も図る。

  • 長時間座っても疲れにくいというグリーン車の座席。読者灯も従来より照射範囲が広がった

  • 普通車もシートと背もたれが連動して動く構造を採用

  • グリーン車・普通車の全座席にコンセントを設置。普通車の背面テーブルはノートパソコンが置ける大きさ

普通車は無駄のない機能性を重視したデザインコンセプトとし、シートは背もたれと連動して動く構造を採用している。グリーン車・普通車ともに座席周りの利便性も向上し、全座席でコンセントを利用可能。傘・小袋等を掛けられる背面フックを設置したほか、側窓テーブルを設けることで、カーテンを下げた状態でも飲料を安定して置けるようにしている。全号車で「Shinkansen Free Wi-Fi」も利用できる。

客室自動ドアの上部に設置した液晶ディスプレイは大型化された。異常時には日本語・英語での情報提供も行うという。室内照明は走行時に減光し、駅停車時に全光として荷棚を照らすことで、荷物の置き忘れに気づきやすくするように工夫されている。客室端部に設置された特大荷物置場は事前予約により利用可能に。2023年度以降、デッキ部の特大荷物コーナーも利用できるようになるという。

  • 11号車の客室内に設置された2カ所の車いすスペース。周囲の8席は省スペースで転回可能な機構を採用し、バリアフリーに対応した腰掛としている

  • デッキ部の特大荷物コーナーは2023年度から利用できる予定。N700S確認試験車の車内にも喫煙ルームが設けられている

バリアフリーにも対応。車いすスペースは従来1カ所とされていたが、N700S確認試験車では11号車の客室内に2カ所の車いすスペースを設けた。その周囲の座席は新開発の省スペースで転回可能な機構を採用した腰掛となっている。多目的室も利用可能。車内セキュリティの向上も図り、客室内の防犯カメラは従来の1両2台から1両6台に増設した。客室自動ドア横に通話装置(1両2台)も新設するため、異常時等において乗務員や指令所の係員とタイムリーに連絡を取ることもできる。

報道関係者らを乗せて東京駅を発車したN700S確認試験車は、品川駅・新横浜駅のみ停車(ドア開閉なし)し、その後は全駅を通過。1時間以上かけて東海道新幹線を走行し、豊橋駅には11時19分に到着した。その後、JR東海新幹線鉄道事業本部の副本部長、上野雅之氏が挨拶し、「N700Sは東京オリンピック・パラリンピックの開催される少し前、2020年7月の営業運転を予定しています。あらゆる面で最高の性能を備えたN700Sの営業運転に向け、しっかり準備をしていきたい」と述べた。

  • N700S確認試験車の車内(普通車・グリーン車)と車体側面のシンボルマーク