老後のお金を自分で準備するための制度「iDeCo」。公的年金だけでは2000万円の老後資金が不足するという金融庁の報告書が公表されたこともあり、関心を持つ人が増えています。

複数の税制メリットがあるオトクな制度ですが、働く高齢者の増加といった世の中の変化に合わせてさらなる制度改正の議論がスタートしました。加入年齢が65歳まで延長されるなど、検討されている内容についていち早くご紹介します。

まずはiDeCoの概要の確認と現状をチェック

まず、iDeCoという制度について、いまいちど確認してみましょう。というのは、まだまだ多くの人は内容をきちんと知らないのでは? と思うから。

2017年の制度改正で加入者の範囲が広がり2019年7月時点での加入者は131万人を超えました。下図からもわかるように大幅増ですが、20歳から60歳までの人口は6000万人超ですから実は加入しているのはまだまだ少数派。iDeCoは多くの税制メリットがあり、自分で確実に老後のお金を貯めることができることから、ぜひ活用したい制度なのですが、実際はまだ利用者が少ないのが現状です。

iDeCoとは「個人型確定拠出年金」のことで、確定拠出年金法に基づいて実施されている私的年金の制度です。2017年1月から企業年金がある会社員や公務員などの共済年金加入者、第3号被保険者(専業主婦など)も加入できるようになり、20歳以上60歳未満のほぼすべての人が加入できるようになりました。

拠出と給付の基本的な仕組みは下図の通りですが、最大のメリットは「拠出時」「運用中」「受取時」の3つの時点で税制メリットがあること。まず「拠出時」の掛金は全額所得控除になり、税金を軽減する効果があります。「運用中」に得た配当金や分配金には税金がかかりません。そして「受取時」も一時金なら退職所得控除、年金なら公的年金控除の対象になるため税金を軽減することができます。

非課税メリットがある制度には「NISA(少額投資非課税制度)」や「つみたてNISA」もありますが、投資信託などの投資商品でしか運用ができないため元本割れのリスクはゼロではありません。その点、iDeCoには選択できる商品の中に預金もあります。

預金金利が低い今、手数料が必要なiDeCoで積み立ててもメリットがないのでは? という声もありますが、所得控除という税制メリットも含めて考えれば預金で運用しても積立額を割り込むことはありません。お金のプロたちがiDeCoを勧める理由はここにあるのです。

加入年齢が65歳までになり、アラフィフ世代も見逃せない制度に

では今回、厚生労働省の社会保障審議会 企業年金・個人年金部会で議論が始まった内容について見ていきましょう。iDeCoに関連する主なものは、

・加入可能年齢を65歳まで延長
・拠出限度額の引き上げ
・裁定請求期限(70歳)の引き上げ、もしくは撤廃
・通算加入期間に関わらず、60歳から老齢給付金の受給を可能にする
・事務手続きのオンライン化、マイナンバーの活用、クレジットカード払いによる掛金の払い込み

といった内容です。

中でも注目されているのが、加入年齢を65歳まで引き上げるという点です。確定拠出年金の企業型は60歳前と同一の事業所ならば65歳未満まで加入できること、特別支給の老齢厚生年金の支給開始年齢が引き上げられていることなどを踏まえ、加入年齢を65歳まで引き上げるというもの。審議会で議論された内容すべてが実現するとは限りませんが、この件については多くの人が実現可能性大と見ているようです。

40代以下の人たちにとっては拠出期間が5年延びるだけのことかもしれませんが、加入期間が短いからと迷っていたアラフィフ世代は早速行動に移した方がよさそうです。というのは投資信託で運用するならば、時間が長ければ長いだけリスクが軽減されるから。iDeCoは老後資金に不安を感じている人こそ、検討してみる価値がある制度です。

  • 鈴木弥生

鈴木弥生

編集プロダクションを経て、フリーランスの編集&ライターとして独立。女性誌の情報ページや百貨店情報誌の企画・構成・取材を中心に活動。マネー誌の編集に関わったことをきっかけに、現在はお金に関する雑誌、書籍、MOOKの編集・ライター業務に携わる。ファイナンシャルプランナー(AFP)。