目前に迫る消費増税。10月1日に、消費税がいよいよ10%の大台に乗るわけだが、今回は飲食料品(酒税法に規定する酒類を除く)に対し、2%の軽減税率が導入される。この軽減税率は店内やフードコートでの飲食などの「外食」には適用されないが、テイクアウトなどのいわゆる「中食」には適用となるため、飲食店各社が対策に乗り出している。
そうした中、和食チェーン「大戸屋ごはん処」(以下、大戸屋)を展開する大戸屋ホールディングスは9月18日、店内&持ち帰り商品の新メニュー発表会を開催し、10月からの方針を打ち出した。コスト高の影響を受け、2019年4月には値上げに踏み切った大戸屋だが、その後は客足が伸び悩み、苦戦を強いられている。今回の軽減税率対策は同社にとって、浮上のきっかけとなるのか。そんなことを思いながら発表会に参加してきた。
あの人気ランチが早くもカムバック
大戸屋が発表した新メニューは、定食9品、お弁当7品、惣菜6品の計22種類。新たに加わる定食メニューは税込み価格で800円台のメニューが5品と、比較的リーズナブルな価格帯が中心となった。そして、最大のサプライズとなったのが「大戸屋ランチ」の復活だ。
大戸屋ランチは多くのファンから支持を集めていたかつての人気商品。今年4月のグランドメニュー改定で姿を消した際には、同社の客数減に直接的な影響を与えた。このランチのカムバックはファンにとって朗報といえるだろう。販売価格の790円(以下、価格は全て税込み)も、消費増税後の価格であることを考えれば魅力的に映るはずだ。
また、大戸屋の代名詞でもある焼き魚を使った定食のうち、4品については値下げを断行する。例えば、「鯵の炭火焼き定食」は1,000円から990円に変更する。「チキン味噌カツ煮定食」や「もろみチキンの炭火焼き定食」など、定番の4品目については増税後も値段を据え置くとのことだ。
客数減で苦戦していた大戸屋だが、持ち帰りメニューはこのところ、好調に推移していたという。店舗によっては、売上高で前年比120%増を記録することもあったそうだ。軽減税率が適用となる持ち帰りメニューは消費増税後、さらなる需要の高まりが見込まれる。そういった事情を踏まえ、大戸屋では弁当と惣菜のメニューに13品を追加し、計33種類に拡充する。
店内調理とできたての提供にこだわる大戸屋らしく、「炭火焼き鶏の親子丼弁当」と「四元豚のロースかつ丼弁当」に使用する容器は、汁がこぼれにくいものを新たに開発。持ち帰った後でも、できたての味を楽しめるような工夫を施した。
これまでの値上げ路線から値下げ路線に転換し、勝負に出た印象の大戸屋。その意図について山本社長は、「(消費増税に伴う軽減税率の導入は)基本的に、チャンスではなくピンチ」であるとし、次のような考えを示した。
「増税前から、お客様は価格に対してシビアになっていると感じています。増税後も、価値のあるものは購入していただけると思いますが、今後は、『使う時』と『抑える時』の幅の中で、選択されるようになるとおもいます」
軽減税率が適用になるとはいえ、消費増税を前にした消費者は、外食に費やすコストに対してシビアな考え方を持ち始めている。これが山本社長の分析だ。
そんな状況を踏まえ、大戸屋は「大戸屋ランチ」と「五穀のおこげと野菜の塩出汁ぞうすい」の2種類の700円台メニューを用意し、低価格帯商品を充実させた。さらには、単なる値下げで来客を促すだけではなく、提供する商品の価格帯を広げることで、ユーザーに多様な選択肢を提供する。大戸屋は、顧客によって異なるニーズに対応し、消費増税を乗り越えていく考えだ。