国連が定める「SDGs 週間」初日となった9月22日、機能性食品などの開発・販売などを行うユーグレナ社は、寿司の名店『銀座久兵衛』の協力のもと、日本人に身近な寿司を通し、地球温暖化について考えるイベント「ユーグレナ×銀座久兵衛『未来の寿司体験会』」を開催した。

フィギュアスケーター・女優の本田望結さんと一般親子4組が招かれ、地球温暖化の影響でこのままでは近い将来食べられなくなるかもしれない「消えゆく寿司ネタ」を体験した。

  • 「ユーグレナ×銀座久兵衛『未来の寿司体験会』」が開催された

SDGsに関する取り組みに力を入れるユーグレナ

ユーグレナ社は2005年、世界で初めて微細藻類ユーグレナ(和名: ミドリムシ)の食用屋外大量培養技術の確立に成功した。出雲充社長は、冒頭のプレゼンで子どもたちを前に「ユーグレナ社は私が学生時代にバングラディシュに行き、大勢の子どもたちが栄養失調に悩まされている現状を見たことがきっかけで、栄養価の高いミドリムシで元気に健康になってもらいたいという思いからスタートした東京大学発のベンチャー企業です」と同社の事業について説明した。

  • ユーグレナ社の出雲充社長

食べ物で人々に元気になってもらおうという気持ちで始め、ミドリムシの良さをいろいろと研究していく中で、来年にはバイオジェット燃料を完成させて飛行機を飛ばそうと計画しているという。

  • ユーグレナ社はさまざまな事業を手がけている

さらに、CO2を吸収する性質を持つユーグレナを使ったCO2削減技術や、バイオ燃料の生産に向けた研究などを行う同社のSDGsに関する取り組み、今回のイベント開催の経緯を紹介した。

  • バイオ事業も展開している

「ちょうど9月末に開催される国連総会ではSDGs達成に向けた議論をするところでして、私もこの後ニューヨークに向かい、会合に参加して発表を行います。SDGsに関する取り組みの1つ目は私の原点でもあるバングラディシュで栄養素たっぷりのミドリムシの給食を毎日1万人の小学生に届けるプロジェクト。2つ目はCO2を出さない国産のバイオ燃料、特にジェット燃料の研究。そして、3つ目が今日体験していただこうと思っている環境問題に対する取り組みです」

8月には18歳以下のCFO(最高未来責任者: チーフ・フューチャー・オフィサー)」を募集し、世間に話題を提供した同社だが、その募集のきっかけは地球温暖化・気候変動対策を訴え、世界中で大きな反響を呼んでいる16歳の環境活動家、グレタ・トゥーンベリさんだったという。

「近年の異常気象を踏まえ、大人の仕事を子どもたちはどう受けとめているのか聞いてみたいと思いました。ヨーロッパでは夏に熱波が襲い大変な被害が発生していますが、『スウェーデン人のグレタさんのように意見や行動力のある子どもは日本にもいるはずだ』ということで論文を募集すると、世界中から511人の子どもたちがCFOに応募してくれました」

現在選考中で、「東証一部上場企業初の最高未来責任者」を間もなく発表する見込みとのこと。このCFOをはじめ、18歳以下の人に参画してもらうことで、同社は「未来の大人」である子どもたちの意見を取り込み、世界の社会課題が解決されるサイクルを広げていきたいとした。

  • SDGsに関する取り組みとして、ミドリムシ配合の給食を届けることを掲げた

身近な寿司ネタが消える!?

ゲストの本田望結さんが登壇すると、早速、子どもたちの前には未来のお寿司が登場。しかし、それは寿司ネタがないシャリだけのお寿司だった。

  • ネタがないシャリだけのお寿司にびっくりした様子の本田望結さん

出雲社長は「ちょっとびっくりさせちゃったかもしれませんが、久兵衛さんと未来のお寿司を一緒に考えて本気で作っていただきました。みんなが大人になって、自分でお金を払ってお寿司を食べるときはこれが出てくるかも。悲しいですが今の大人はこういう未来をつくっているんです」と語り、地球温暖化の影響で身近な魚が食べられなくなるかもしれない現状を指摘した。

続いて、本田さんと子どもたちは食べられなくなるのが早い順にサケ・イクラ、ズワイガニ、シャコ、アワビ、ホタテの寿司ネタを、並び替えるクイズに挑戦。

東京大学大気海洋研究所・伊藤進一教授が、海水温の上昇によるストレスのほか、「弱アルカリ性の海水が二酸化炭素を吸って中性に近づくことで貝やカニの殻が生成されにくくなる」「表層の海水が冷やされず、重たい水ができないため海の深いところに酸素が運ばれにくくなる」など、地球温暖化で海洋生態系の破壊されるメカニズムを解説した。

そんなショッキングな話の後、親子には久兵衛で今食べられるお寿司が振る舞われた。本田さんも久兵衛の寿司に舌鼓を打ち、「シャコを初めて食べました。シンプルな言い方ですけど、初めての味で美味しいです、とても」とシャコデビューにご満悦の様子だった。

  • 久兵衛の寿司に満足した様子

地球温暖化と寿司ネタが消滅するかもしれない未来について学んだイベントを振り返り、「みんなと一緒にクイズができて美味しいお寿司も食べられましたし、地球温暖化についてたくさん勉強して、もっと知りたいなと思いました」とコメントしていた。

100年先を見据えた持続可能な産業の育成、日本をバイオ燃料先進国にすることなどを掲げる出雲社長は、最後に「(子どもたちが大人になったときも)久兵衛で今と同じ最高のお寿司を食べられる――。これがサステナブル、持続可能という言葉の一番わかりやすい表現だと思います。僕らもどんどん研究を進めて、みんなで解決に向けて取り組んでいく。今日がそのきっかけになったら」とメッセージを送り、イベントを締め括った。