電気自動車と自動運転は相性抜群

日産は環境対応を図るべく、電気自動車(EV)の市販を他社に先駆けて行った会社だ。そして、EVの累計販売台数で世界一を誇る。

自動運転への取り組みについても、2013年に開催した媒体向けのイベント「ニッサン360」において、世界に先駆けて宣言した。その際には、EVの初代「リーフ」をベースとする試験車を用いて、歩行者の飛び出しという危険な状況でさえ、完全自動で避けて走ることができるということを証明すべく、模擬走行を公開していた。

実は、EVと自動運転は非常に相性がいい。なぜなら、エンジンよりもモーターの方が、100倍近く速く制御を行うことができるからだ。緊急事態に素早く対応する際、重要となるのは制御のスピードだ。新型スカイラインにはガソリンエンジン車とハイブリッド車(HV)があるが、HVのみがプロパイロット 2.0を搭載しているのは、モーター走行部分があるためである。

具体的な未来像を描き、その目標へ向け着実に技術を開発してきた日産。その結果、プロパイロット 2.0の実用化にこぎつけ、今回の市販に至った。日産の最新技術は、今回もスカイラインから導入されたわけである。

  • 日産の新型「スカイライン」

    日産の最新技術を取り入れたのは、またしても「スカイライン」だった

存在感を増した「スカイライン」

現行スカイラインは2014年にフルモデルチェンジした13代目である。驚くべきことに、今回のマイナーチェンジまで、現行スカイラインは「インフィニティ」のバッジを付けていた。インフィニティは日産が海外で展開する高級車ブランドで、位置づけとしてはトヨタにとってのレクサスに近い。

もともと、スカイラインは国内専用車だった。これを海外で販売するため、2001年からインフィニティ系列の販売店で取り扱いが始まった。国内では、あくまでも「日産スカイライン」だったわけだが、現行型からバッジだけはインフィニティとしていたのである。その理由は、いまだに不明だ。バッジが変わった影響もあったのだろう。スカイラインの販売台数は近年、月販200台レベルにまで落ち込んでいた。

今回の新型スカイラインは、フルモデルチェンジではなくマイナーチェンジを受けたクルマなので、世代としては13代目のままだ。ただ、このタイミングでバッジを「NISSAN」に戻した。クルマの顔つきを見ると、グリル開口部は「R35 GT-R」を思い起こさせるデザインとなっている。そこには、ほかの日産車と同じく「Vモーション」という造形が用いられている。

  • 日産の新型「スカイライン」

    バッジを「インフィニティ」から「NISSAN」に戻した新型「スカイライン」

改めてスカイラインの全体像を眺めてみると、ほかのどの自動車メーカーの4ドアセダンとも異なる輪郭で、独特の雰囲気を漂わせている。やや丸みがあり、抑揚を強めた造形は堂々としていて、格好いいといえるだろう。メルセデス・ベンツやBMW、あるいはアウディなどと並べても、存在感に遜色はない。それに、国内専用車であるトヨタの「クラウン」や「マークX」とも違う風合いを持っている。日本を代表するグローバルな4ドアセダンとして、スカイラインの存在意義は大きいと再確認した次第だ。

しかし、フルモデルチェンジから5年を経ているので、乗り心地や上質感といった点では、競合の輸入車やトヨタ車と比べ、熟成が進んでいない印象はぬぐい切れない。室内の雰囲気も、見た目にこそ上級車種の趣はあるものの、ナビゲーション画面の寸法は小さいし、コネクティビティを重視する昨今のクルマに比べると、前時代的だ。

それでも、世界初の技術となるプロパイロット 2.0の搭載により、世界最先端の上級4ドアセダンとして、スカイラインの存在が従来よりも重みを増したのは事実だろう。また、プロパイロット 2.0を搭載するHVは、V型6気筒のガソリンエンジン車と比べて静粛性に優れていて、より上質な乗り味を伝えてきた。

  • 日産の新型「スカイライン」

    フルモデルチェンジから5年を経ているので、クルマとしては前時代的な部分も目に付く新型「スカイライン」だが、プロパイロット 2.0は間違いなく先進的な機能だ

クルマ本来の部分で進化を期待したい部分は残る。ただ、このタイミングで、プロパイロット 2.0を搭載したスカイラインをあえて選ぶことは、1つの意味ある選択ではないかと思った。実際、発売からの1カ月半で受注台数は約1,760台に達している。この数字は、月間販売計画の約9倍だ。このうち、プロパイロット搭載車は48%に及ぶ。