大事なときに風邪をひいて失敗した経験はないだろうか。仕事の予定が詰まっているとき、旅行を楽しみたいとき、学校の試験が迫っているときなど、大事なときに限って人は風邪をひく。ちなみに、身体を鍛えていても風邪はひくらしい。現にスポーツの国際大会では、トップアスリートが風邪をひくケースも多いというから意外だ。何が風邪をひく原因で、どうやって予防したら良いのだろうか。

  • 花王ヘルスケアフォーラム開催 - 大事なときに感染症にかからないためには?

    花王ヘルスケアフォーラムを開催。高疲労・高ストレスが招く免疫機能低下など、興味深い研究成果が発表された

花王は9月3日、最新のヘルスケア知見を紹介する「花王ヘルスケアフォーラム」を都内で開催した。これは同社が毎シーズン開催しているもので、今回のテーマは感染症(風邪やインフルエンザ)の予防についての興味深い研究成果が発表されていた。

感染症は「免疫」と「表面バリア」に注目

冒頭に登壇した、花王パーソナルヘルスケア研究所の柳澤友樹氏は「社会の変化により人の移動頻度が増し、人との接触頻度も増えた。このため現代人は、感染症に罹りやすくなっている。その一方で、予防の技術が追いついていないのが現状です」と説明する。

同社では、感染症の予防を「免疫」と「表面バリア(のど)」の2つの側面から研究している。ここで得られた知見は、今後の商品づくりに活かされる見込みだ。

  • 花王パーソナルヘルスケア研究所室長・柳澤友樹氏

  • 感染症の予防について「免疫」と「表面バリア(のど)」の側面から読み解いていった

どうやったら免疫機能を上げられる?

免疫について詳しく解説したのは、アスリートのコンディショニングについて研究を進めている国立スポーツ科学センターの枝伸彦氏。「身体を鍛えていても風邪はひきます。ロンドン五輪の出場選手も、風邪、胃腸炎、皮膚疾患といった内科系疾患に罹っています。どの国際大会でも、この傾向は変わりません」と話す。

  • 国立スポーツ科学センター スポーツ研究部 研究員 博士(スポーツ科学)の枝伸彦氏

  • ロンドン五輪における内科系疾患の割合

アスリート並みに身体を鍛えていても風邪をひくのは何故だろう。原因は、やはり免疫にあった。枝氏によれば、中強度(適度)な運動は免疫機能を高めて感染リスクを低めるが、高強度(過度)な運動は高疲労・高ストレスとなり、免疫機能が低下して感染リスクが増大するという。もっともアスリートともなれば、飛行機での長距離移動、のしかかる大きなプレッシャーといった要因で高疲労・高ストレスを感じる。アスリートには、アスリートならではの風邪をひく理由があったわけだ。

  • 運動、免疫機能、感染リスクの関係

  • アスリートならではの免疫機能が低下する理由があった

これを我々の日常生活に落とし込んだ場合、どういったことが言えるだろうか。枝氏は、次のように説明した。「高疲労・高ストレスの人は、特に免疫機能の低下に注意が必要です。例えば、試験を控えた学生、育児中の父母、重要な会議を前にした社会人といった人々ですね。失敗できない人ほど、感染症のリスクが高まっている恐れがあります」。

  • 失敗できない人ほど免疫機能が低下し、感染症のリスクが高まっている恐れがある

ちなみに男女では、免疫機能が低下する要因が微妙に異なる。男性は「ネガティブな出来事」によって、女性は「抑うつなどの気分」によって免疫低下が起こりやすいという。男性なら外的要因で、女性なら内的要因で免疫が低下しやすい、と言い換えられるだろうか。

  • 免疫機能が低下する要因。男女で微妙に異なる

では感染症予防のためにはどういった対策が効果的なのだろうか?枝氏は、従来から言われてきた「規則的な生活習慣」「バランスの良い食事」「感染症予防の対策(手洗い・うがい・マスクなど)」に加えて、次の2点を挙げた。ひとつは「免疫のベースラインを上げておく」ことで、具体的には適度な運動習慣をつけることだ。もうひとつは「免疫向上ツールの活用」で、物理療法・リラクゼーション・栄養補助食品がこれにあたる。「物理療法とはマッサージや針刺激など。リラクゼーションにはヨガやアロマテラピーが良いでしょう。栄養補助食品には、ビタミンA・D、クロレラ、乳酸菌の摂取が効果的です」と語る。

  • 免疫向上ツールを活用するのもひとつの方法

枝氏は、最後に感染症予防の対策として、まずは病原体を体内に入れないことが大事であるとした。そのための対策として、手洗いうがいといったことのほかに、水分摂取を挙げている。これはのどの粘液によるバリア機能を保つためで、緑茶のカテキンが効果的とのこと。「表面バリア(のど)」については花王パーソナルヘルスケア研究所の山本真士氏より発表があった。

  • 感染症予防の対策

のどは最後の砦

山本氏が着目したのは、のど奥の粘膜「のどバリア」。「のどは、口から入ったウイルスや細菌を体内に入れないための最後の砦。唾液、粘液、線毛運動の働きを高めることで、感染症の予防につなげられます」と語る。

  • 花王パーソナルヘルスケア研究所の山本真士氏

  • 感染前の最後の砦、のどバリア(のど奥の粘膜)に着目

では、のどバリアの働きを高めるためにすべきことに何があるのだろうか。山本氏は「炭酸刺激による唾液分泌」「とろみをつけたカテキンの摂取」「温熱蒸気とユーカリの香気成分の吸入」の3点を挙げた。本稿ではアカデミックな内容をできるだけ割愛して、簡単に紹介していこう。

安静時に唾液がたくさん分泌される人ほど、感染症に罹らない。そして唾液の質には個人差があり、『結合型シアル酸』を含む唾液にはウイルスを吸着する働きがあるという。そこで山本氏は、唾液の量を増やしつつ質も高める「炭酸発泡刺激」による効果に期待すると語る。

  • 唾液の量と質を高める研究が進められている

次に、のどの粘膜細胞を守るための粘液に注目する。過去の研究では、お茶うがいにインフルエンザを予防する効果が認められている。でもお茶は液体のため、のどに留まることができない。つまりうがいをしても、一定時間を過ぎれば効果が薄まるということ。そこで同社では、茶カテキンを粘膜に滞留させるために”とろみをつけたカテキン”の研究を進めている。飲むだけで、のどをカテキンがコーティングしてくれる、そんな商品があったら大ヒットするのではないだろうか。

  • 粘膜に留まりやすくした、とろみをつけたカテキンの研究が続けられている

最後は純粋に、のどの線毛運動を高めるためには温熱蒸気とユーカリの香気成分を吸入すると良いという研究成果を紹介。この方法では、風邪の原因となる黄色ブドウ球菌の量が減少することが分かっているという。詳細は後日、あらためて発表すると説明した。

  • のどの線毛運動を高めるため、温熱蒸気とユーカリの香気成分を吸入すると効果的

感染症にかかる原因と、その予防法についての研究成果が発表された、今回の花王ヘルスケアフォーラム。「毎日のちょっとした工夫で、生涯ずっと健康に」という理念を掲げる同社ならではの内容となっていた。