国内では「クラフトビール」の認知度が90%を超え、クラフトブルワリーの数も381社まで増加するなど、クラフトビールへの関心が年々高まっている。こうした中、日本産のフレッシュなホップでつくった美味しいクラフトビールが飲める「フレッシュホップフェスト 2019」が今年も開催される。

5年目を迎えた今期は、参加ブルワリーと飲食店数が過去最大規模となる予定だ。実施期間は9月1日から11月30日まで、開催場所は全国各地。

  • 美味しいクラフトビールが飲める「フレッシュホップフェスト 2019」が今年も開催される

フレッシュホップフェストの狙い

ビール市場を活性化し、日本産ホップ農業を盛り上げる目的で2015年からスタートしたフレッシュホップフェスト。今年は参加クラフトブルワリーが過去最高の81にまで拡大、参加飲食店も1,500店舗以上と昨年の1.5倍に増えることが見込まれている。

期間中は、全国各地でフレッシュホップを使った個性豊かなクラフトビールが楽しめる。また、関連イベントも各地で開催を予定している。例えば東京では、10月12日、13日にGinza Sony Parkの地下4階にあるBTGで「GINZA de FRESH HOP FEST 2019」を開催。同イベントには30ブルワリー以上の商品が集結する。

  • フェスでは全国各地でフレッシュホップを使ったクラフトビールが楽しめるようになる。写真の女性が掲げているのはSVBの「SPRING VALLEY BREWERY Hop Fest」

ところで、そもそもフレッシュホップとは何のことだろうか。フェス開催の狙いも含めて、ここで改めて説明しておこう。

ビールの原料であるホップは、ハーブの一種。そしてフレッシュホップとは、その年に収穫された乾燥させていないホップのことを指している。ひとくちにホップと言っても種類はもとより、その状態、投入するタイミングでビールの香りが様々に変化する。フレッシュホップを使うと、野性味あふれる、香り豊かなクラフトビールがつくれるのが魅力だ。

  • 茨城県 常陸野ネストビールの「常陸野ネストラガー」と「ホワイトエール」

当フェスでは国産にこだわっている。それは何故だろうか。ホップ自体は足が早いため、採れたての生のホップを海外から輸入することができないからだ。このため、国産のフレッシュホップに注目が集まる。

ところが、である。農家の高齢化、担い手不足の進行により、日本産ホップの生産量は直近の10年で半減してしまった。依然として後継者、新規就農者の確保が急務な状態である。そこで日本産ホップを守るため、フレッシュホップフェストが5年前にスタートした、というのがフェス開催の背景にある。

  • 東京都 籠屋ブルワリーの「渾の花 麹BRUT」と「國平雄町玄米ラガー」

明るい兆しもある。近年では、ユニークなホップの国産品種が増えてきた。キリンでは「IBUKI」「MURAKAMI SEVEN」といった国産品種を保有しているし、若い世代が地方に移住して新たにホップづくりを始めるケースも増えているようだ。

ちなみにクラフトビールはアメリカでブームに火がついている。そこで今後は、日本の国産ホップが海外で注目される可能性も出てきた、と関係者は話している。つまりピンチでもあり、チャンスでもある。それが国産ホップをめぐる現状と言えそうだ。

  • 大阪府のブリューパブセンターポイントの「KOTOBUKI Gold & Red」

都内で開催されたメディア説明会には、岩手県の遠野醸造、栃木県のろまんちっく村の地ビール、東京都の籠屋ブルワリー、大阪府のブリューパブセンターポイント、茨城県の常陸野ネストビール、そしてスプリングバレーブルワリーが参加した。

各ビールを試飲する機会を得たが、なるほどブルワリーによってビールのこだわりが全く違うことに驚かされる。どのクラフトビールも香りが豊かな点では一致するが、フルーティーでカクテルのような味わいのもの、ジュースのように軽やかで爽やかな後味が鼻に抜けるもの、日本酒のようにコクのあるもの、etc...。それぞれキャラクターが立っている。クラフトビールの奥深さを改めて感じた。

フェスが今年の集大成に

登壇したスプリングバレーブルワリーの島村宏子氏は「フェスは5年目を迎え、全国で盛り上がりを見せています。初年度は12ブルワリーでスタートしましたが、今年は北は北海道から、南は種子島まで81のブルワリーが参加しています。そこで2019は、以前よりも期間を延長して3か月の長丁場になりました。わたしも楽しみにしています」と挨拶した。

  • スプリングバレーブルワリー 代表取締役社長の島村宏子氏

また、同社の田山智広氏は「クラフトビールでは、ホップを大量かつ多品種使用します。つまりクラフトビールの成長により、ホップ栽培が成長産業になる。海外では、すでにその傾向が伺えます」と解説する。なお、今年のSVBが掲げるキーワードは「SOCIAL BREWERY」。個性あふれるモノづくりで人と人をつなぎ、社会をより良くするきっかけをつくるブルワリーを目指す、というものだが、その集大成となるのがフレッシュホップフェスト 2019であると説明した。

  • スプリングバレーブルワリー マスターブリュワーの田山智広氏。「新しいビアカルチャーをつくっていきたい」と意気込んだ