NHK連続テレビ小説『なつぞら』(毎週月~土曜8:00~)で、広瀬すず演じるなつの夫、“一久さん”こと坂場一久役を演じている中川大志。小学校6年生で出演した『おひさま』以来の朝ドラ出演となった中川にインタビューし、主演の広瀬すずの現場での様子や、なつと坂場の関係について話を聞いた。

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    『なつぞら』坂場一久役の中川大志となつ役の広瀬すず

――『おひさま』以来の参加となった朝ドラですが、出演が決まった時の感想から聞かせてください。

朝ドラのオーディションに呼んでいただいたのは『おひさま』以来でしたし、制作チームのみなさんが、大河ドラマ『真田丸』でもお世話になった方たちだったので、まずはうれしかったです。『おひさま』の時は、まだ芝居を始めたばかりの子どもだったので、何もかもわからない状態でしたが、それから僕もいろんな仕事をし、朝ドラはいつかまた戻ってきたい場所だと思っていました。でも、まさか記念すべき節目の作品『なつぞら』で、中学生の頃から一緒に仕事をさせてもらっている広瀬すずちゃんの主演作に参加できるとは思ってもみなかったです。

――広瀬すずさんの印象についても聞かせてください。

すずちゃんは常に自然体で、気負っていないので、いつも驚かされます。この人が緊張する瞬間なんてあるのかな? と思うくらい、どしっと構えているというか、器がすごく大きい方です。僕なんて常にビビっているので、『なつぞら』の現場に入った時も、撮影が始まってから1カ月間くらいはずっと緊張していました。

なっちゃんという中心の柱がしっかりしているからか、たくさんのキャストやスタッフの方々が入れ替わって撮影していくのに、『なつぞら』のチームは全くぶれないです。彼女の疲れているところはあまり見ないですし、それくらいエネルギッシュで、体力がすごすぎます。だから、すずちゃんの前では寝たりできないですし、それくらい強い座長なので、同い年ですがすごく尊敬しています。

――坂場一久役に決定した時は、どんな気持ちでしたか?

具体的に何役というよりは、男性キャストのどなたかということで、オーディションを受けさせていただきました。「決まりました」という連絡をいただいてから半年くらいどういう役なのかもわからなかったので、「本当に出られるのかな?」とだんだん不安になっていきました(苦笑)。僕が登場するシーンの台本が上がってきたのは、北海道でクランクインしたあとでした。

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――作りたいものへのこだわりが強く、とっつきにくいタイプの坂場ですが、どんなふうにアプローチをしていったのですか?

まず脚本を読んだ時、今までやったことがないような東大卒のキャラクターで、正直、第一印象は「こいつ、面倒くさい」という感じでした(苦笑)。なつをはじめ、東洋動画の周りの人たちからの印象も最初は悪かったし、これまでいなかったタイプの新人だったので、本当に異物感を感じました。

――確かに出会った当初は、なつも坂場に対して敵対心みたいなものを感じていましたね。そこから一緒に仕事をしていくなかで、坂場の良さを知っていきました。

台本を読んでいくうちに、2人がお互いにないものを持っていることがだんだんわかっていくんです。出会った頃、坂場がなつに「アニメーションにしかできない表現ってなんですか?」と質問を投げて「それはあなたが自分で考えてください」というシーンがありました。その週の最後に、坂場が「あり得ないことも、本当のように描くことです」という答えをなつに言います。その週で、なつは馬の前足を4本描くのですが、なつは言葉じゃなく、画で答えを出したから、坂場はそのことを言葉にしたのかなと納得しました。

なつはわりと感覚の人で、魂をぶつける人ですが、坂場はそれを言語化してなつを導いていくのかなと。つまり、お互いにないものがあるんだろうなと思いました。

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――坂場は、なつの才能を愛しているのか、それとも女性としての彼女を愛しているのでしょうか?

そこは僕も演じていてすごく難しかったです。この2人が恋に落ちた瞬間はどこだったのかな? と。僕も恋愛映画を何本かやらせてもらっていますが、これまでやったことのないような関係性だったので、そこをどう演じようかと思いました。

――決め手になったシーンはありましたか?

喫茶店で別れを切り出すシーンで、坂場がなつに「君の力を一番活かせる演出家に僕はなりたかった」と言うシーンがありますが、2人の関係性の出発点は、同じアニメーションを作る、同じもの作りをするというところだったのかなと。東洋動画の新しい世代として、坂場にとってのなつは、自分と同じ熱量を持ちつつも、自分にはない発想力や画に込めるエネルギーを持っていたので、そういう力に坂場は惚れて、「この人と一緒に作品を作っていきたい」と思ったのではないかと思います。

――クリエイティブにこだわる坂場から、中川さんが俳優として何か影響を受けたことはありますか?

『なつぞら』は、アニメーション、もの作りの話なので、そういう意味でたくさん刺激を受けた台詞があります。僕たち役者も、もの作りをする人間だから、ここまでやったからOKというものがない仕事です。答えがないからこそ、終わりもないですから。

今回、何よりも僕が「すごい、そのとおりだ」と思ったのは、「お客さんの力をなめちゃいけない」という点です。それはアニメーションを受け取る側の人たちのことですが「子どもはどこまでも観ているんだ」という台詞にあるように、何かを作って届ける側の人間としては、やっぱりそれくらい真剣勝負で、観てくれる人たちにも向き合っていかなければと思いました。どんな現場でも時間がなかったりするし、予算と期日を守らなければいけない状況にあっても、そこの熱量だけは失ってはいけないなとすごく思いました。

■プロフィール
中川大志(なかがわ・たいし)
1998年6月14日生まれ、東京都出身。ドラマ『家政婦のミタ』(11/日本テレビ)で注目され、『南くんの恋人~my little lover』(15/フジテレビ)、NHK大河ドラマ『真田丸』(16)、『花のち晴れ~花男 Next Season~』(18/TBS)などに出演。映画は『きょうのキラ君』(17)、『ReLIFE リライフ』(17)、『虹色デイズ』(18)、『覚悟はいいかそこの女子。』(18)などで主演を務めた。10月からTBS系ドラマ『G線上のあなたと私』に出演予定。

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