南海トラフ地震が心配される中、つい先日も新潟で震度6強の地震が起こりました。東日本大震災から8年が経過し、地震被害の記憶も少し薄れてきていた人も、改めて地震への備えを考え直したのではないでしょうか。

新潟では幸いなことに大きな被害とはならなかったようですが、地震が起きてマイホームが被害を受けたときに大きな助けとなるのが地震保険です。

ただ通常の地震保険では、契約火災保険金額の50%までしか補償されません。つまり地震で家を建て直さなければならないほどの被害を受けたときにも最大でその半額しか補償してもらえないということです。

それでは不安だということから特約を付けることで100%の補償を確保できる保険が注目されています。安心してマイホームを地震から守るにはどうしたらよいのか、改めて検討してみてはいかがでしょうか。

地震保険は全損でも50%しか補償されない

先日、新潟で震度6強の地震が起きたばかりですが、東日本大震災以降、熊本や北海道などでも大きな地震があり、地震保険への関心は年々高まっています。マイホームを災害から守るために加入するのが火災保険ですが、一般的な火災保険では地震や噴火と、これを原因とした津波などによる火災や倒壊の被害は補償の対象外となっています。

地震による被害があった時に受けられる地震火災費用特約というものがあり、この特約は火災保険に自動的にセットされていますが、これは地震が原因で建物が半焼以上または家財が全焼したときに火災保険金額の3~5%が支払われるものです。

あくまでも地震による火災などで損害が発生した時の費用をサポートするための保険金であり、地震によって建物が壊れたり、津波で流されたりした場合は補償されません。また補償される額は火災保険金額の5%(最高300万円)までなので、地震による火災で大きな被害を受けたときに十分な補償とはいえません。

そのため、地震による被害をカバーするには、火災保険にプラスして地震保険に加入する必要があるのです。地震保険は単体での加入はできず、火災保険とセットで加入し、どこの保険会社で加入しても保険料は同じとなっています。

地震保険は、火災保険金額の最大50%まで加入できることになっています。たとえば2500万円の火災保険に加入し地震保険に最大限加入した場合、地震保険金額は1250万円となります。このケースで、地震で全損となった場合は1250万円が補償の上限ということになります。地震火災費用保険金が満額出たとしても125万円なので合計で1375万円です。

仮に住宅ローンの残債が2000万円のときに地震で家を失ったら、保険金が下りても家の建て直しどころか単純計算で625万円もの借金が残ってしまうことになります。

特約を付加することで地震に万全に備えられる保険がある

地震で家を失った場合でもなんとか再建できる方法はないのかといったニーズにこたえたのが火災保険に任意で付加できる特約です。地震火災費用保険金に関しては、前述したように通常の火災保険では火災保険金額の5%までの補償となっていますが、「地震火災費用保険金支払い割合変更特約」は、この割合を50%まで増やせるという特約です。

これなら、地震保険の補償とあわせて、100%の補償が得られることになり、地震で家を焼失した場合にも新たにマイホームを再建することが可能になります。ただし、この特約は地震による火災で半焼以上した場合が対象なので、地震や津波で倒壊や流失したときには補償されない点は注意が必要です。この特約は、損保ジャパン日本興亜、三井住友海上火災保険、あいおいニッセイ同和損保などで取り扱っています。

倒壊や流失にも備えたいという場合に検討できるのが「地震危険等上乗せ特約」です。この特約は地震保険と同じ補償内容なので、地震が原因の火災以外に、揺れによって建物が倒壊したり津波で流されたりしたときなども補償されます。

この特約も火災保険の最大50%まで付加できるので、地震保険と合わせて火災保険の100%まで補償を確保できます。この特約は、東京海上日動火災保険などで取り扱いがあります。地震のリスクに万全に備えたい人は、この特約を付帯することを検討しても良いでしょう。

ただし特約を付ければその分保険料の負担は増えることになります。保険料は住んでいる地域や建物構造などの条件によって異なりますが、特約を付加することで火災保険と地震保険に加入していた時よりも1.3~2倍程度の負担増になります。

ミニ保険なら単体でも上乗せでも加入できる

特約を付加する以外にも、単体のミニ保険に加入する方法もあります。ミニ保険とは少額短期保険のこと。少額から加入でき、地震に備える保険は「地震補償保険」と呼ばれ、この保険単独で加入することができます。

SBIリスタ少額短期保険の地震補償保険「Resta(リスタ)」(地震被災者のための生活再建費用保険)がそれにあたり、火災保険や地震保険に加入しなくても入れるのが最大の利点といえます。保険金額は最大で900万円で世帯人数により上限が異なります。地震を原因とした倒壊や火災などで半壊以上の被害を受けたときに補償され、火災保険や地震保険の上乗せとして加入することもできます。

特約で加入するかミニ保険にするかは、どの程度の上乗せ補償が必要なのか、保険料はいくらプラスになるかということを調べたうえで比較検討するといいでしょう。万一の時のために万全に備えたいのはもちろんですが、家計に占める保険料負担との兼ね合いも考慮して無理のない範囲で考えることが大切です。


堀内玲子
ファイナンシャルプランナー。証券会社勤務後、編集製作会社で女性誌、マネー関連書などの編集を経て93年に独立。96年ファイナンシャルプランナー資格を取得。FPとして金融・マネー記事などの執筆活動を中心に、セミナー講師、家計相談などを行う。著書に「あなたの虎の子資産倍増計画」(PHP研究所・共著)「年代別 ライフスタイル別 生命保険のマル得見直し教室」(大和出版)など。