海外での買い物などの支払いに外貨がそのまま使えたら、為替レートに一喜一憂しなくても済むのに……と思ったことありませんか。

そんな気持ちを解消してくれるのが、自分のタイミングで預金した外貨普通預金を海外での支払いに使うことができるデビットカードやプリペイドカード。どんな通貨を、どのように利用できるのかをご紹介します。

旅行時期の為替相場に左右されないで決済するには?

海外へ出かけた際に利用する決済手段といえばクレジットカードが一般的。この場合、旅行の時期に為替相場が円高ならばトクをした気持ちになりますが、円安になっていると損をした気分になってしまいます。というのは、クレジットカード決済に適用される為替相場は旅行の時期に左右され、自分でコントロールすることができないからです。

そんなプチ不満を解消してくれるのが、外貨預金口座にある資金などで支払うことができるプリペイドカードやデビットカード。外貨預金口座の購入平均単価が旅行時よりも円高水準ならばその預金で、円安ならばクレジットカードで買い物するというように、為替の状況に合わせて自分で決済方法を選択することができます。

外貨で決済できるカードはプリペイドとデビット。コストには要注意

海外の現地通貨で支払いができるカードには、プリペイドカードとデビットカードがあります(カードによって利用できる通貨の数や種類は異なる)。プリペイドカードは事前にチャージした金額の範囲内のみで使え、デビットカードは預金口座に紐づけられ決済と同時に引き落とされる仕組み。

デビットカードは日本ではあまり使われていませんが、世界全体で考えるとクレジットカードよりも発行枚数も利用額も多いカードの主流派。主な違いをまとめたものが下図です。

円建てのプリペイドカードやデビットカード、クレジットカードを海外で利用すると、現地通貨に両替して決済することになるため為替手数料がかかります。為替手数料はカードの種類や国際ブランドによって異なりますが2~4%程度が一般的。これに対して外貨をチャージしたプリペイドカードや外貨普通預金に紐づいたデビットカードは、資金が外貨で用意されているので支払い時の為替手数料は必要ありません。

ただし、手数料は為替コストだけではないので要注意。プリペイドカードは、基本的にチャージするときに手数料がかかります。外貨建て商品を利用するときは手数料が大きなポイントになるので、十分に確認しましょう。

利用前には各カードの特長をしっかり読み解いて。コストの確認を忘れずに 下記の表に外貨預金で支払える主なカードをまとめましたが、具体的に商品を見ていきましょう。

「JAL Global WALLET」はJALマイレージバンクカードの基本機能にMastercardのプリペイド決済機能が追加されたカード。日本円のチャージは銀行振り込みやネットバンキングだと手数料が1件216円(税込)かかりますが、住信SBIネット銀行が銀行代理業を担当しているため、住信SBIネット銀行の口座振替でチャージをすると手数料は無料です。

外貨はチャージした円を14通貨に両替することができ、そのうち米ドル、ユーロ、英ポンド、豪ドル、NZドル、スイスフラン、香港ドルは住信SBIネット銀行の外貨普通預金口座からチャージすることもできます(要手数料)。

新生銀行の「プリペイドカードGAICA(Flex機能付き)」は円と外貨4通貨(米ドル、ユーロ、英ポンド、豪ドル)のチャージが可能。オートチャージや毎月定額チャージの機能もあるので、チャージ不足になる心配がなく日常使いのカードとしては便利。ただし外貨はチャージする際にチャージ金額の3.5%の手数料がかかるので、海外で使うときは高額な買い物をするというより現金代わりに少額を使うカードと考えるのがよさそう。

大和ネクスト銀行の「DAIWA SMART DEPOSIT」は米ドル、ユーロ、英ポンド、豪ドル、香港ドルを外貨普通預金からチャージする、海外のみでの利用を考えたプリペイドカード。外貨預金からのチャージ手数料はチャージ金額の1.5%で、クレジットカードの一般的な外貨取扱手数料よりやや低めなので、為替相場が同水準だったとしてもこのカードを利用するメリットはありそう。海外で使いきれなかった外貨は、大和ネクスト銀行の外貨普通預金口座へ戻すことが可能です。

上記の3枚はプリペイドカードですが、以下の2枚はデビットカードです。住信SBIネット銀行の「ミライノデビット」は同社の口座を開設すると利用できるデビットカードが一体になったキャッシュカード。

カードブランドをMastercardとVISAから選ぶことができ、さらにMastercardは年会費無料の一般カードだけでなく年会費1万800円(税込)のプラチナカードを保有することもできます。外貨での決済は米ドルのみですが、同社のスマートプログラムのランク判定対象&ポイント付与対象なので利用状況によっては特典を受けることができるメリットがあります。

国内では円普通預金のキャッシュカード、海外ではデビットカードとしてVISA加盟店で使えるのが、ソニー銀行の「Sony Bank WALLET」。対象通貨は、米ドル、ユーロ、豪ドルなど10通貨。

利用時に外貨預金の残高が足りない場合は「円からアシスト」という機能で、自動的に不足分をチャージ。円預金まで含めた金額が使えます。デビットカードの場合は、コストが外貨預金への預入時の為替手数料以外はかからないのが一般的。ソニー銀行は為替手数料も安く、使い勝手がいいカードです。

使える通貨や手数料のシステムなどがそれぞれ異なるので、カードの優劣をつけるのは難しいといえます。だからこそ内容をきちんと理解し、自分にとって使いやすくコストも有利なものを賢く使いましょう。

  • 鈴木弥生

鈴木弥生

編集プロダクションを経て、フリーランスの編集&ライターとして独立。女性誌の情報ページや百貨店情報誌の企画・構成・取材を中心に活動。マネー誌の編集に関わったことをきっかけに、現在はお金に関する雑誌、書籍、MOOKの編集・ライター業務に携わる。ファイナンシャルプランナー(AFP)。