■総評 若手社会人は転勤をどう捉えてる?
調査の結果、転勤制度はあったほうがいいと思う人の割合は57.1%と、半数を超える結果となった。転勤制度があったほうがいいと思う理由では、「いろいろな土地や環境で仕事をすることで視野が広がり、スキルアップに繋がる」というコメントが多かった。そのほかには、「マンネリや緩み、癒着を防げる」「自身の可能性を発見できる」「選択肢が増える」などの意見も見られた。
一方、転勤制度がないほうがいいと思う理由では、「引越しが面倒」「未知の土地での生活が不安」「新たに人間関係を構築するのが大変」「転校など、子どもへのケアが心配」「家を購入しにくくなる」といった声が多かった。これについては、転勤者の年齢や家庭を持っているか否か、持ち家かどうかなどで受け止めが分かれる部分かもしれない。
現在勤務している会社に転勤制度があるかどうかについては、「はい」が50.2%、「いいえ」は49.8%とほぼ拮抗している。自身が転勤の経験があるかどうかについては、「はい」は44.5%、「いいえ」は55.5%と未経験者がやや多かった。
転勤をして大変だったことを聞くと、先の転勤制度がないほうがいいと思う理由と重なり、「引っ越し」「職場や生活の環境変化」「子どもの転校」「人間関係」などのワードが並んでいる。少数意見では、「方言」や「満員電車」に慣れるのに大変だったという声もあった。
転勤経験者に、それが自分の希望だったかをどうかか聞くと、「はい」は41.0%、「いいえ」は59.0%と、自身の希望ではない転勤が約6割を占めている。転勤を希望した理由では、「新しい環境で仕事がしたかった」「経験を積みたい」「昇給や昇進のために必要」など、転勤制度を肯定的に捉え、積極的に利用している様子がうかがえる。ただ一部では、「前の会社に居場所がなくなった」「同僚のストーキングが嫌で」など止むに止まれぬ判断での転勤というケースもあるようだ。
一方の、転勤を希望していなかった理由については、「家族と別れるのが嫌だった」「慣れ親しんだ環境を変えたくない」「家庭の事情で転勤は難しかった」などが並んでいる。自身の気持ち以外に、子どもを始めとする家庭生活を考えて踏み込めなかった、という人は多いようだ。
転勤をして良かったかどうかについては、「はい」が77.6%と、8割近い人が積極的に評価していることがわかった。転勤をして良かったと思う理由は、「さまざまな経験を積むことができた」「新しい環境が快適なものだった」「ストレスが解消された」「給与が上がった」などの声が寄せられている。
転勤がなければ良かったと思う理由は、「引越が面倒だった」「余計な負担やストレスを感じた」「新しい環境になかなか馴染めなかった」「家族に負担をかけた」などが目立った。これも、先の転勤制度がないほうがいいと思う理由と共通している。
「転勤族」という言葉がある。会社員や公務員が、複数の支社などに頻繁に転勤を繰り返す人やその家族を指していう俗称だが、転勤はかつての高度成長期の日本では普通に見られた就業制度だった。ただ最近では、子育てや介護などが理由で転居を伴う転勤に応じられずに会社を辞めてしまう、「転勤離職」も問題となっている。近年の「働き方改革」の動きを受け、例えば「地元採用で原則転勤なし」といった採用を行う企業も増えているようだ。
今回の調査では、転勤制度があったほうがいいと考える人は6割近く、転勤をして良かったと思う人は8割近くになり、会社員にとってまだまだ「転勤」は肯定的に捉えられていることがわかった。ただ、転勤対象者が独身か、あるいは家庭を持っているのか。持ち家や否か。就学児童がいたり、要介護の家族がいたりと、いろいろな要因で転勤への受け止めも変化するだろう。
今回のアンケートにも、そんなさまざまな実情を反映した意見が寄せられており、興味深い内容となった。
調査時期: 2019年7月4~6日
調査対象: 20~30代のマイナビニュース会員(男性205名、女性96名)
調査数: 301人
調査方法: インターネットログイン式アンケート