「出産や子育てをしながら働き続けたい」という企業で働く女性たちを支える制度が「産休」で、産前産後休暇中には、社会保険料である「厚生年金保険料」が免除されます。

しかし、フリーランスとして働いている場合などは国民年金で、「国民年金保険料の免除」はありませんでした。

そこで、2019年4月1日から国民年金保険料の免除が始まりました。今回は、国民年金保険料の産前産後期間の免除制度について解説します。

  • 産前産後期間における国民年金保険料の免除制度を知っていますか?(写真:マイナビニュース)

    産前産後期間における国民年金保険料の免除制度を知っていますか?

産前産後期間の免除制度とは

次世代育成支援の観点から、国民年金第1号被保険者が出産を行った際に、出産前後の一定期間の国民年金保険料が免除される制度が2019年(平成31)4月から始まりました。

これまで第2号被保険者(会社員)の場合、産前産後期間中は厚生年金保険料の免除制度がありましたので保険料の負担はありませんでした。また、第2号被保険者の被扶養配偶者である第3号被保険者は元々保険料の負担がありません。

第2号被保険者と第3号被保険者以外の人(自営業者などの第1号被保険者)には、産前産後期間中にかかわらず国民年金保険料の免除制度はなく、納付義務がありました。

しかし、2019年4月より、第1号被保険者の産前産後期間中の国民年金保険料(令和元年度月額16,410円)が免除されることになります。

まだまだこの制度が周知されていないこともあり、制度自体の内容がよく分からない、そもそもまったく知らなかったという方が多くおられると思います。

こちらの制度は申請しなければ免除を受けることができませんので、待っていても勝手に免除申請の手続きがなされるものではありません。よく理解したうえで忘れないように申請するようにしましょう。

いつから適用されるの?

この制度の施行日は2019年4月1日となっています。また、免除の対象となるのは出産日が2019年2月1日以降の方となっています。

届け出に関しましては出産予定日の6カ月前から提出可能となっていますので、出産予定日の6カ月前になりましたら速やかに提出してください。
※ ただし、施行日の関係から提出ができるのは2019年4月からとなっています

また、この産前産後期間の免除期間は、将来年金額を計算するときに免除期間として扱われずに保険料を納付したものとして老齢基礎年金の受給額に反映されます。

以前からある他の保険料免除制度では、免除期間中に関しては保険料を払っていないものとされていたために、将来の受給額はその分少なくなるというものでした。

この点において、今回の産前産後期間の免除制度は、以前からある免除制度と較べても良い方向に大きく変わっています。※以下図参照

  • 国民年金の産前産後期間の保険料免除制度 出典:厚生労働省

    国民年金の産前産後期間の保険料免除制度 出典:厚生労働省

対象となる者・期間・届け出先

対象となる国民年金第1号被保険者とは?

日本に住んでいる20歳以上60歳未満の人は、すべて国民年金に加入し、将来、老齢基礎年金を受けることになります。そこで国民年金では加入者を3種類に分けています。

そのうち、20歳以上60歳未満の自営業者・農業者とその家族、学生、無職の人等、第2号被保険者、第3号被保険者でない者が第1号被保険者となります。

国民年金保険料が免除される期間は?

出産予定日又は出産日が属する月の前月から4カ月間(以下「産前産後期間」といいます)の国民年金保険料が免除されます。

なお、多胎妊娠の場合は、出産予定日または出産日が属する月の3カ月前から6カ月間の国民年金保険料が免除されます。
※出産とは、妊娠85日(4カ月)以上の出産をいいます
※死産、流産、早産された方を含みます

申請書類の届け出先はどこか

住民登録をしている市(区)役所・町村役場の国民年金担当窓口へ届け出をしてください。必要なものは以下となっています。

・個人番号または基礎年金番号の確認ができるもの
・本人確認書類、母子健康手帳など出産(予定)日を明らかにすることができる書類
・国民年金被保険者関係届書(申出書)

よくある質問事例

Q.2019年3月に出産予定ですが、何月分の保険料から産前産後の保険料免除が適用されるのでしょうか?
A.施行日が2019年4月ですので、2019年4月1日以降に届け出を提出いただき、 出産日を基準として産前産後免除期間が決定されます。3月に出産した場合は、4月分、5月分の保険料が免除となります。

Q.令和元年11月に出産予定ですが、何月分の保険料から産前産後の保険料免除が適用されるのでしょうか?
A.出産予定日の6カ月前になる令和元年5月以降に届け出を提出いただき、出産日を基準として産前産後免除期間が決定されます。11月に出産した場合は、10月分、11月分、12月分、1月分の保険料が免除となります。

Q.産前産後期間は付加保険料を納付することができますか?
A.産前産後期間について、保険料は免除されますが、付加保険料は納付できます。

Q.出産後に届け出することはできますか?
A.出産後でも届け出することができます。この場合でも産前産後期間は、出産日の属する月の前月から翌々月までの4カ月間となります。

Q.保険料を前納していますが、産前産後期間の保険料は還付されますか?
A.保険料を納付されている場合、産前産後期間の保険料は還付されます。

以上のように、産前産後期間の国民年金保険料が免除になる対象の方は出産予定日の6カ月前から提出可能となっていますので、出産予定日の6カ月前になりましたら速やかに提出するようにしてください。

国民年金保険料の負担が減額される制度ですので、くれぐれも申請を忘れることのないように心がけましょう。

おわりに

国民年金第1号被保険者の産前産後期間の保険料の免除制度は、財源として国民年金保険料が月額100円程度引き上げられることになりますが、他の被保険者とのバランスが取られることとなり、自営業者などの人にとっては非常に有用な制度になり得ると思われます。

多くの方がこの制度を利用することで、出産しやすい環境を整え、将来の展望が持てるようになればと思います。

著者プロフィール

塚本泰久
ツカモト労務管理事務所 代表社会保険労務士・FP。
関西地区を中心に、地域に密着した事務所を目指しています。会計事務所出身であるという視点から、企業の宝である人財と企業会計のバランスに重点を置くことで、より強い企業の体制作りをサポートしています。「ツカモト労務管理事務所