様々なアニメ・ゲーム作品のキャラクターの声を担当する声優・松井恵理子。一方で、2017年1月にはアルバム『にじようび。』をリリース、さらにはソロラジオをはじめ、様々なラジオのパーソナリティーも務めるなど幅広く活躍をしている。そんな彼女が、自身のソロ名義番組『松井恵理子のにじらじっ!』のテーマソングCD「irouta」をリリースした。

  • 松井恵理子

    松井恵理子(まついえりこ)。3月8日生まれ。愛知県出身。IAMエージェンシー所属。主な出演は『魔法少女特殊戦あすか』ミア・サイラス役、『新幹線変形ロボ シンカリオン THE ANIMATION』大空レイ役、『雨色ココア sideG』天見ヨーコ役、『アイドルマスター シンデレラガールズ』神谷奈緒役、『えとたま』モ~たん役、『未確認で進行形』夜ノ森紅緒役など
    撮影:西田航(WATAROCK)

今回は番組テーマソングの発売を記念し、松井にインタビューを実施。歌唱に至った経緯や、2年以上続くソロラジオ、また、自身の根幹だという声優活動についてお話を聞いた。

■自分の中の今までの経験を元に誰かの背中を押したい

――松井さんに作品絡みでないインタビューをするのは、アルバム『にじようび。』のリリース以来になります。

その節はお世話になりました(笑)。

――こちらこそ心に沁みる言葉の数々、ありがとうございました! 今回、番組テーマソングとなる「irouta」はどういった経緯で制作することとなったのでしょうか?

私は歌で表現することが好きなのですが、『にじようび。』がひとつ完結した作品になったなという気持ちがありました。だから、積極的に次、次という感じでリリースはせず、焦らずじっくりでいいかな、という想いでいました。ただ、『にじらじっ!』のリスナーさんから様々なメールをいただくなか、私自身の歌も聴いてみたいという意見や応援をいただくこともあって。もう2年以上も『にじらじっ!』を続けてこられたのはそうやって応援してくださるリスナーさんのおかげなんです。だから恩返しじゃないですけども、みんなで盛り上がるようなことができないかなと思って、テーマソングを作るということを考えるようになりました。

――リスナーのみなさんの想いからテーマソングを制作するという発想に至ったんですね。

そうですね。生放送ならリアルタイムでコメントを読むこともできますが、収録のラジオってどうしてもタイムラグがあるので、一方通行になりがちなんです。だから、曲作りを一からやるということで、みんなで『にじらじっ!』を育てているという感じが出せたらいいな、「みんなで楽しいことをやろうぜ!」という企画になればいいなとも思ったんですよね。

――なるほど。

制作するうえでは、うちの事務所に曲を作れる馬渕由妃ちゃんという仲の良い女の子がいるので、その子の力を借りました。『にじようび。』のときはあまり提案せず、自然と自分が生きてきた中にあったものに近い曲が集まってきましたが、今回は「こういう感じがいい!」という提案をたくさんさせていただきました。歌詞も激論に次ぐ激論(笑)。深夜に馬渕由妃ちゃんとLINEでああでもない、こうでもないとやりとりをして出来上がりました。だから、『にじようび。』のときとは違った曲に仕上がったと感じております。

――『にじようび。』のときも作詞されていましたが、それとは違う熱が入った?

そうですね。『にじようび。』に収録されていた「声」という曲は声優という職業に対する自分の気持ちを歌にして、「ユメキセツ」という曲はファンタジーというか物語チックな歌詞を書きました。今思えばどちらの曲も自己完結感が強かったかもしれません。ただ、「irouta」は自分の中の今までの経験を元に誰かの背中を押したい、聞いてくださっている人に届けたいという気持ちのほうが強かった。みなさんに届いて欲しいという想いは『にじようび。』のとき以上かもしれません。

――そんな届けたいという想いがこもったテーマソング。レコーディングはいかがでしたか?

キャラクターではなく松井恵理子として歌うとなると、何が正解か、どれが一番いい形なのかすぐには見えず何だか不思議な感じではありましたが、収録自体はそんなに手こずらず、スムーズに進みましたね。むしろ普段のキャラクターソングのお仕事のほうが何テイクも重ねるくらいでした。今回は通常時の私というよりは叫んでいる私という感じです。歌詞にも「叫べ」という箇所があるのですが、がむしゃらさみたいなのが曲に乗るといいなと思いながら歌わせていただきました。

――レコーディングでは馬渕さんもご一緒でしたか?

一緒でした。色々と指導していただきました(笑)。

――指導(笑)。例えばどのようなことを?

疾走感がテーマの曲なので、息のスピードを速くして、呼吸感を大事にしようという話をしました。

――確かに、ラジオの内容的にはもっと癒やし系の曲になるのかなと思っていたのですが、疾走感のあるカッコいい曲ですよね。

私がこういうのが好きなんですよね(笑)。番組のカラーでいうとおっしゃる通り、ミディアムテンポのゆるっとしたものになると思うのですが、ラジオのコンセプトが“色々な色が見える”であるのをいいことに、やりたい放題やっちゃおうかとなったんです。「こういう曲にするの?」というリスナーさんも中にはいらっしゃったかと思いますが、わりと聞いてくださる方が楽しんでくださっている感があるので、一安心しています。

■転機のひとつは「未確認で進行形」のラジオ

――先ほどラジオのコンセプトのお話がありましたが、ラジオの放送も100回を優に超えましたね。

ありがたいですね。最初はそれこそ『にじようび。』の宣伝を兼ねて始まったラジオだったので、まさかこんなに長く続くとは思ってもいませんでした。歌を定期的にリリースしていなくても続けられているというのは、リスナーの皆様や支えてくださっているスタッフさんのお力のおかげだと思っています。

――思い返してみると、『にじらじっ!』が松井さんにとって初のソロでの冠ラジオ番組だったんですよね。

基本的に作品の括りだったり、仲良しの子と何人かでやったりというラジオが圧倒的に多かったので、ソロっていうのはあまりなかったですね。

――ソロでのラジオをスタートした当時と今で変わったと思うところはありますか?

いい意味で変わっていない。基本的には一人で喋るときってしっかりしなきゃ、という気持ちになると思うんですけど、私は最初からそういう気持ちがあんまりなくて。ひょっとしたら、デビューのときから仕切り役やまとめ役、司会進行役をやらせていただくことが多かったので、最初から落ち着いてできたのかもしれません。

――松井さんは進行役やまとめる役を務めることが多いですよね! そして聞いている側も松井さんがいれば安心します(笑)。

でも、実は仕切るとかまとめるとか苦手だったんですよ! 専門学校のときはどちらかというとにぎやかし担当。もっとしっかりした子が進めて私がかき乱すという感じでした。

――仕切り役をやったことはあまりなかったんですね。

必要に迫られないとやらなかったです。だからみなさんに「仕切れるよね」って言われると自分としてはギャップを感じるんですよね。ありがたいお言葉ではあるのですが、実際の私は抜けているところもあるので、「そうでもないんだよなぁ」と思っちゃいます(笑)。

――私としては『未確認で進行形~うまく言えないのでラジオで確認してください~』でご一緒していた照井春佳さん、吉田有里さんがすごくいい意味で個性が強烈で、それをまとめている松井さんという構図が見事だった記憶があります。

あのふたりと共演したときは、私なんぞは普通の人間で、上には上がいるなと思ったし、誰かが軌道修正しないと、これは番組が成立しないと思ったんですよね(笑)。それが今となってはいいバランスだったと思っています。あれがあったからこそ、色々なところで司会やパーソナリティーを任せていただける機会が増えたので、とても貴重な経験でした。ただ、一人でのラジオとなると各段に自由度が上がるので、自分自身でどういう話をするかによって方向性が決まってしまう。そういう意味では作りこんだり、凝りすぎたりしてしまうと長くは続かないだろうなと思っていました。

――ここまで続いているということは、いい意味でリラックスしてできている。

リスナーのみなさんにも助けていただきながら、自分の話したいこと、好きなことを話せています。私のなかではとても居心地のいい番組ですね。