Aクラスは日本市場で人気を博しているようだ。2018年12月の発売から4月までの間に、ガソリンエンジン車の販売実績は5,000台を超えている。現在は納車が間に合わないほどの状況だそうで、これから注文しても、クルマの引渡しは秋口になりそうな見通しだという。これにディーゼルエンジンが加わると、さらに販売を伸ばすことになるのではないだろうか。
その顧客の動向は、他社からの乗り換えが5割を超えているという。顧客の約25%は女性だそうだ。前型のAクラスでは、かつての高級車然としたベンツを好む人たちとは異なる顧客層から、運転しやすくて身近なクルマの1台としての評価を得たと思うが、新型Aクラスでは、その傾向をさらに強めているようだ。
最先端のクルマに乗りたいなら「Aクラス」
Aクラスと競合する1台にフォルクスワーゲンの「ゴルフ」がある。ゴルフは小型車の世界的な規範といわれ続け、これまでに45年の歴史を積み上げてきた大定番だ。
それに対し、1997年に誕生したAクラスは、歴史こそゴルフに比べれば浅いものの、2012年に登場した3代目からは大きく方向転換し、新しい小型車の姿を目指して挑戦を続け、時代の先端を走るクルマであることを追求しているような気がする。
Aクラスのそんな姿勢を印象付けるのが、「ハイ! メルセデス」に象徴される対話型インフォテインメントシステム「MBUX」(メルセデス・ベンツ ユーザーエクスペリエンス)だ。内装も、メーターに大きな液晶を使うなど、斬新な造形を取り入れている。運転支援機能が「Sクラス」に近い内容となっていることも見逃せない。ゴルフのモデルチェンジも間近なはずだが、新型Aクラスの先進性と比べると、少なくとも現行ゴルフは、今や一時代前の小型車の規範と見えてしまうほどである。
Aクラスとゴルフのどちらが合うかは人それぞれの価値観によるし、これまでの比較も決して良し悪しを判断しようとしたものではない。しかし、ユーザーのクルマに対する期待が「所有」から「使用」へと変化する中で、あえて所有するならば最先端のものがいいと考える人たちには、Aクラスが適しているのではないだろうか。
今回のディーゼルエンジン車が、運転感覚や快適性で文句のない仕上がりだったことはこれまで述べてきた通り。だが、欧州では“ディーゼル離れ”の流れが強まっているのも事実だ。今後、クルマが電動化していく過程で、ディーゼルエンジンの残存価値はどうなっていくのか、今は思案の時でもある。
Aクラスで比べると、ガソリン車とディーゼル車の価格差は30万円ほどあるが、減税や軽油の安さなどを考慮すると、そこまで大きな差だとは感じなくても済みそうだ。しかし、排ガス浄化を行うための尿素水溶液(アドブルー)を定期的に補充する必要があるなど、将来的な残存価値への不安も無くはないのである。
時代の変化は早くなっている。現時点では素晴らしいクルマでも、その価値がいつまで持続するのかは予測が難しい。まさに今、クルマを購入する時期を判断するには困難な時代を迎えているのだ。