年に一度、神奈川県・大磯を舞台に開催される日本自動車輸入組合(JAIA)の試乗会。たくさんの輸入車を一度に楽しめる同イベントを、安東弘樹さんに取材してもらった。

※文と写真はNewsInsight編集部の藤田が担当しました

夜には「バラいろダンディ」(TOKYO MXで放送中、安東さんは火曜レギュラー)の生放送が控える2月5日、朝から夕方までの間に安東さんが乗ったクルマの台数は、アストンマーティン「DB11」やテスラ「モデルX」などを含む計8台。最初のクルマはジャガーのステーションワゴン「XF スポーツブレイク」だ。

  • ファルコンウィング(ドア)を広げたテスラ「モデルX」を背にポーズをとる安東さん。編集部からは「ヒーロー風に」と注文させてもらった

早速、「XF スポーツブレイク」の話に入りたいところなのだが、実は試乗の開始直後、安東さんからあるクルマの購入を決めたという話を聞いたので、まずはプロローグとして、そちらから取り掛かりたい。というのも弊紙では、安東さんがクルマ選びに悩む様子を以前から追っていた経緯があるので、その結果をご本人から直接聞いた以上、本連載にてお伝えしておきたいと思ったからだ。

大前提として、安東さんは現在、ポルシェ「911 カレラ 4S」とジャガーのSUV「F-PACE」を所有しているのだが、TBSを退職してフリーとなって以降、クルマ(F-PACE)で仕事現場(特に東京都内)に通勤する機会が増えると、深刻な“駐車場問題”に直面することとなった。つまり、横幅が1,935mm、高さが1,665mmと大柄なF-PACEだと、基本的には立体駐車場に入れられないなど、クルマをとめておく場所を探すのに苦労が多いのだ。

購入検討リストに入っては消えていったクルマは、マツダ「アテンザ」やミニ「クラブマン」など枚挙に暇がない。そんな安東さんのクルマ選びが、ついに結論に達したと小耳に挟んだので、「XF スポーツブレイク」に乗り込んですぐ、そのあたりの話を聞いてみた。

クルマ選びが決着!

安東さん(以下、安):そうなんです、メルセデスの「オールテレイン」にしました。最終的に「ヴェラール」と悩んでたんですけど、やっぱり駐車場に入らないんで……。実はメルセデスって、以外に幅は、そんなにないんですよ。(全幅が)ヴェラールは1,930mmなんですけど、オールテレインは1,860mmしかありません。ちなみに、「Sクラス」でさえ1,910mmです。

  • 「オールテレイン」とは、メルセデス・ベンツの「E220d 4MATIC オールテレイン」(画像)というクルマのこと。Eクラスのステーションワゴンをベースとするクロスオーバー車で、2.0L直列4気筒のディーゼルエンジンを搭載する。最高出力は194ps、最大トルクは400Nm。サイズは全長4,950mm、全幅1,860mm、全高1,495mmだ。公式サイトで見ると、車両本体価格は893万円となっている

  • 「ヴェラール」(画像)はSUV専門メーカーであるレンジローバーから2017年に新登場したクルマ

安:実は年末に遅刻したんですよ。しかも2件。所属している事務所で打ち合わせや雑誌の取材などを行う事が多いのですが、その立体駐車場にF-PACEが入らないので、いつもは近場のコインパーキングを利用して打ち合わせなどをするのですが、その日は近くの駐車場が全く空いてなくて。どうにもならなくて、1キロ以上も離れたところにとめて、そこから歩いて事務所に向かったら遅刻してしまいました。それが1件目。

もう1件は共演者のライブ。場所が代官山だったのですが、空きが有っても立体駐車場では「サイズが大きすぎる」と断られるところばかりで……。1カ所、「空」と表示されている平置きの駐車場を見つけたんですけど、そこは1台ごとにバーで区切られている所で、よく見ると「横幅1,900mm以上はご遠慮ください」って書いてありました。結局、かなり離れた、しかも超高額な駐車場にとめた挙句、開演時間に少し遅れてしまいました。

編:“横幅問題”が身にしみたわけですね。

安:ええ、クルマを3台所有できるなら、1台は横幅を気にせず選んでもいいんですが、家を改装して(3台目のクルマをとめておく)駐車場を作れないことも分かりましたから……(※)。

※編集部注:安東さんは自宅の庭を改装して3台目のクルマのために駐車場を作るつもりだったが、建築法上の理由で断念した。このあたりの事情は以前、本連載でお伝えした通り。

編:F-PACEを買い換えるということですか。

安:F-PACEって、とってもいいクルマで、(駐車場問題以外には)何の不満もなかったんですけどね。オールテレインが5月に納車なので、それまで、計2年8カ月で手放すことになりますね。もっとも、走行距離は計算上、5月には9万キロ前後になるので、買い換え時ではあるかもしれません。

  • 安東さんがとても気に入っていると話すジャガー「F-PACE」

編:納車待ちでウキウキしてますか?

安:そうですね。ただ、あまりにもF-PACEが気に入ってるんで、少し複雑ですけど。それと、人に自分の所有車を言うときに「メルセデス・ベンツです」というのが、若干その……。何に乗っているんですかと聞かれて、「メルセデス・ベンツです」と答えると伝わりきらないというか、「Eクラスのオールテレインです!」まで、全て言いたい、というか(※)。

※編集部注:「メルセデス・ベンツ」だから買ったのではなく、こだわって選んだクルマが「メルセデス・ベンツ」だったということを伝えたいけど、クルマにあまり興味がない人には伝わらない、というニュアンス。

安:テレビ局やスタジオなどの現場にクルマで行く時は、事前にマネージャーが先方に車種を聞かれるわけです。マネージャーはクルマもナンバーも把握しているので、それを先方に伝えるんですけど、車種を聞かれた時に5月からは「安東は“ベンツ”です」って答えることになるのですが、「あー、フリーになったからねー」みたいな感想をもたれるのかなと思うと……。

実は、実際の購入金額はF-PACEよりもオールテレインの方が低いんです。少し複雑で、F-PACEの方が「何円から」というカタログの表記ではオールテレインよりかなり安価なのですが、オプションや諸経費を含めると、実は、F-PACEはかなり価格が上がってしまったので、最終金額は逆転するのです。これはオールテレインにほとんどの装備が標準で付いていることが大きいです。

※編集部注:クルマの値段を見る場合、ほとんどオプションが付いていない状態での価格表記なのか、“コミコミ”での価格表記なのかには注意する必要がある。例えば、サンルーフやシートベンチレーションのような「あったら嬉しい装備」のみならず、カーナビなどの「ぜひとも付いていて欲しい装備」すら付いていない“素”の状態で、かなり安く見える値段を提示している場合もあるからだ。

編:オールテレインとポルシェ、しばらくはこの2台体制ですか?

安:ですね。ドイツ車2台、しかもベンツとポルシェっていうと、人によっては反感を買うかもしれませんけど(笑)。「ポルシェ 911 カレラ4Sの右ハンドルのマニュアルトランスミッション(MT)です!」とか、いちいち全部説明したいくらいですよ! 2台とも、結構マニアックだと思うんですけどね。

ただ、クルマに詳しくない方には、「ベンツとポルシェ」としか言いようがないので、「フリーになると違うな」などと思われるんでしょうね(笑)。かといって、その都度、「メルセデスですけど、社員時代に乗っていたクルマより安いんです」とか言うのも変だし。難しいですね。

「オールテレイン」の気になる点は?

安:オールテレインの少し気になるところは、最低地上高(地面からクルマの最も低い部分までの距離)が140mmで、それって“普通”なんですよね(※)。「E 220 d」のステーションワゴンは115mmともともと低いので、それでも25mm上がってはいるんですけど。

※編集部注:もっと高くてもいいのに、という意味。クロスオーバーSUVだと200mm前後のことが多いので、確かに高くはない。

安:オールテレインはエアサス(エアサスペンション)で車高が上げられるんですけど、それでも20mmしか上げられなくて。(車高上昇時の)160mmって、これでも下手したら“普通のクルマ”なんですよ。さらに、車高は時速35キロを超えると、(自動的に)下がっちゃうんですよね。

メルセデスとしては、本当に速度が出せないような道でしか、車高を上げさせたくないと考えている、ということなんでしょうね。メルセデスは他のメーカーより、そういった部分でマージンをとるので。この手のクルマは200mm位の最低地上高にしているメーカーが多いのですが(スバルやボルボなど)、メルセデスとしては、そこまで上げた時の安定性を担保できない、ということなのかもしれません。

編:クルマづくりの話で、メルセデス・ベンツは乗り手をあんまり信用していなくて、逆にBMWは乗り手に委ねる、というような言葉を聞いたことがあります。

安:よく言われてますよね。

編:車高についても、メルセデスが考えている以上に、乗り手に上げたり下げたりして欲しくないから、クルマ側である程度は制御する、ということなんでしょうか?

安:そこが残念といえば残念ですね。

  • ジャガー「XF スポーツブレイク」で箱根ターンパイクを疾走する安東さん

かなり吟味して購入を決めたのだから、おそらく、オールテレインが届くのを楽しみにしているのだろうとは思うのだが、「ちょっと気になる点」として最低地上高に言及するところなどは、クルママニアの安東さんらしい観点という気がした。MT車のシフト操作を喜びと語る安東さんだけに、自分で運転するクルマに関することは全て、自分で考え、自分で決めて、(最低地上高の調整も含め)自分で操作したいのだろう。

さて、クルマ選びの顛末をお伝えすることできたので、編集部としてもひと安心だ。次回からはいよいよ、JAIA試乗会の模様をレポートしたい。最初に乗るクルマは(すでに乗ってはいるが)、ジャガーのステーションワゴン「XF スポーツブレイク」だ。ジャガーのSUV「F-PACE」を気に入って乗っている安東さんだけに、この2台の比較も気になる。