少子高齢化が進む日本。これから一層、年金受給者が増え、社会保険を支える労働者が減っていきます。若い世代の人には、「自分が老後を迎えた時、果たして年金はきちんともらえるの?」そして、「いくらもらえるの?」という不安や疑問が多少なりともあることでしょう。

そこで今回は、厚生年金の仕組みや年金受給額の平均がどのくらいなのかについて解説していきます。

  • 年金「将来もらえる?」「平均いくらもらえる?」

    年金「将来もらえる?」「平均いくらもらえる?」

厚生年金の仕組みとは

近ごろでは、公的年金に対する信頼が薄れ、「きちんと保険料を支払っていても、将来年金がもらえないのでは」と考えている人が多いのではないでしょうか。

しかし、公的年金は支払った年金保険料に比例して受け取れることになっています。要するに、年金保険料を支払わなければ原則的にはもらえませんが、年金の受給要件を満たしていればもらえないということはなく、支払った保険料が多いほど将来受け取れる年金額は増えていくのです。それでは、厚生年金の仕組みとはどのようなものなのでしょうか。

■厚生年金保険料の支払い方法
厚生年金とは、会社勤めのサラリーマンや公務員が加入している年金です。20歳未満は年金を支払う義務はありませんが、20歳前でも就職していれば自動的に加入されます。会社員は、給与や賞与から社会保険料が差し引かれており、その保険料には国民保険料も含まれています。なお、厚生年金保険料はその半額を会社が負担しています。

■厚生年金の仕組みとは

厚生年金に加入していると、自動的に国民年金にも加入しているので、公的年金は2階建て(1階部分「国民年金(基礎年金)」、2階部分「厚生年金」)と手厚くなっています。では、厚生年金の内訳をもう少し詳しく見てみましょう。

厚生年金の内訳はどうなっている?

■報酬比例部分とは
報酬比例部分とは、年金額が厚生年金保険加入期間中の報酬および加入期間に基づいて計算される部分のことを指します。先述した2階建てにおいては、基礎年金(1階部分)に対する厚生年金(2階部分)のことです。現役時代の加入期間と報酬に比例した年金が支給されます。

■定額部分とは
報酬比例部分は報酬と加入期間に基づいて計算されますが、この定額部分は、年金額が厚生年金保険の加入期間に基づいて計算される部分です。「生年月日による単価×加入月数×物価スライド率」で計算されます。

なお、厚生年金では、65歳より前から支給される「特別支給の老齢厚生年金」があり、定額部分および報酬比例部分から構成されています。これについては法改正が平成6年と平成12年にあり、まず平成6年の法改正により支給開始年齢が段階的に引き上げられました。男性は昭和24年4月2日以降に生まれた者、女性は昭和29年4月2日以降に生まれた者については定額部分がなくなり、60歳から65歳までの間の年金は、報酬比例部分のみの支給となっています。

また、報酬比例部分についても、平成12年の法改正で支給開始年齢が段階的に引き上げられ、男性は昭和36年4月2日以降に生まれた者、女性は昭和41年4月2日以降に生まれた者について、60歳から65歳までの間の年金はなくなり、65歳から老齢基礎年金と老齢厚生年金が支給されることになっています。

■加給年金とは
加給年金は、基礎年金と厚生年金のうち厚生年金について適用されるもので、以下の2つの条件を満たしている必要があります。

条件1:厚生年金保険の被保険者で一定の要件を満たした人が65歳に到達するか、または特別支給の老齢年金のうちの定額部分の支給開始年齢に到達した時点で、受け取りができるようになります。

条件2:その被保険者が生計を維持していて、一定の要件を満たした子供や配偶者がいる場合、追加で年金が支払われます。つまり、一定の年齢に達した厚生年金の被保険者の子供や配偶者を対象として支給される年金が加給年金ということになります。

加給年金は、扶養家族である妻が年下で厚生年金受給資格がある場合、65歳の受給年齢になるまでは、加算して年金を支払ってもらえるのです。たとえば、家計を支える夫が65歳で年金の受給をスタートするとき、妻は50歳だとします。その場合、妻が65歳になるまでの15年間は加算額をプラスして支給されるのです。

加給年金は、生計を維持する者が受給年齢に達するまでの金銭的な不自由さを補う役割がありますが、年の差婚(妻が年下の場合、または夫が年下の主夫で妻が家計を支えている場合)の年金受給に関しては、お得と言えるでしょう。

厚生年金や国民年金の平均支給月額は?

それでは、厚生年金は平均でどのくらい支給されているのでしょうか。厚生労働省の「平成29年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、男性の平均支給額が165,668円、女性の平均額が103,026円、全体の平均では147,051円となっています。男女間では実に約6万円もの差があります。この差が生まれる理由としては、現在年金を受給している世代では、結婚により離職して専業主婦になった女性の割合が多いことが考えられます。その結果、男性と女性では働いた期間と賃金に大きな差が生じたと言えそうです。女性でも管理職に就いているなど職業によって給料に男女差がない場合は、男性と同じ受給額になります。

ちなみに、国民年金についてはどうでしょうか。国民年金(老齢基礎年金)の平均支給月額は、55,615円でした。国民年金は、40年間未払いなく満額を支払った場合、支給額は64,941円となります。つまり、実際に受給している平均額は1万円ほど少ないことがわかります。

では、実際の老後生活にはどのくらいの費用がかかるのでしょうか。総務省統計局の「家計調査報告(家計収支編)2018年(平成30年)平均結果の概要」によると、高齢夫婦無職世帯(夫65歳以上、妻60歳以上の夫婦のみの無職世帯)の1ヶ月の支出は、消費支出が235,615円、非消費支出(社会保険料や税金など)が29,092円で、合計すると264,707円となっています。つまり、夫婦で標準的な老後生活を送るための費用は月に26万円ほどと考えることができます。どのような老後生活を送るかによって必要な金額は変動しますが、公的年金など社会保障給付だけで不足する分を補う際には、目安となるでしょう。

厚生年金の受け取り額を増やすには?

老後生活を支える大切な年金。少しでも多くもらうために、できることはあるのでしょうか。そもそも厚生年金に加入している会社員や公務員の方は、2階建ての年金が受け取れるため、有利になっています。そのうえで、できるだけ長期間働き、一定額以上の収入を得ることで、年金の受け取り額を増やすことができます。公的年金は、加入期間が長ければその分年金額が増えますし、2階部分に当たる厚生年金は、加入期間に加えて報酬が高いほど多く受け取れる仕組みだからです(上限あり)。

また、2階建ての年金に加え、企業年金や確定拠出年金などに加入すれば、3階建ての年金を受け取ることができます。特に、個人型確定拠出年金(iDeCo)は現役世代ならほぼ全ての人が加入できる制度ですので、積極的に活用してみましょう。


年金について今から知っておこう

今回は、厚生年金の仕組みや年金の平均額などについて解説しました。老後の生活を送るためのお金としては、充分な金額ではないと感じた方もいらっしゃるかもしれません。年金の平均額だけでなく、自分の場合は公的年金をいくらもらえるのか、その受給見込み額を年金定期便でチェックし、リタイア後の生活をイメージしたうえで、不足する分は今から備えておきましょう。