京浜急行電鉄は4日、総合車両製作所の協力の下、修繕作業を完了した京急デハ230形デハ236号を報道関係者向けに公開した。修繕作業は横浜市みなとみらい地区にオープンする京急グループ本社1階への保存・展示を目標に、約2年にわたり行われた。
この車両は1929(昭和4)年に湘南電気鉄道デ1形として製造された中の1両であり、1948(昭和23)年の京浜急行電鉄発足時にデハ230形へ改番された。「当時の最高の技術を取り入れ日本の名車として広く知られ、現在の高速化のスタイルを確立した電車の草分け的存在」とされ、軽量で丈夫な車体構造や大きな窓が特徴。走行性に優れた軸受を採用し、地下鉄と郊外の双方に適した車両だったという。
1978(昭和53)年に引退した後、1979年から川口市児童文化センターに保存・展示された。川口市立科学館(2003年オープン)の建設にともない川口市児童文化センターが閉鎖された後も、同施設のあった青木町公園に置かれていたが、京急電鉄への譲渡が決まり、2017(平成29)年5月、川口市から38年ぶりの「里帰り」を果たした。
その後は同車両の活躍を知るOBの知見も生かしつつ、総合車両製作所(横浜市金沢区)で修繕作業が進められた。車体の外板塗装剥離・補修・塗装に加え、車内の内装部品の修理、乗務員室や床の修繕を実施。数々の困難も乗り越え、約2年にわたった修繕作業が完了し、京急電鉄の特徴である鮮やかな赤い車体に白帯の外観が蘇った。
車両のお披露目に先立ち、修繕作業に携った関係者らによる記念撮影が行われた。京浜急行電鉄鉄道本部車両部長の中山伸氏が挨拶し、「いまから2年半前、川口市へ行き、雨がしとしと降る中、デハ230形を見ました。外板の鉄板に穴が開き、中もほぼボロボロ。実際に里帰りすると決まってからも、クレーンで吊り上げるだけでバラバラになってしまうのではないか、材料を手配できるのかなど、いろいろな心配や苦労がありました」と振り返った。「電気扇風機などの部品がなく、秋葉原へ買いに行った」「(車内の)木の部分は手作りで代用した」などのエピソードも明かされた。
修繕作業では総合車両製作所のほか、京急ファインテック、京急ファインサービス、東芝ライテック、東邦工業などが協力したという。「おかげさまで、今月中に新本社ビルへ搬入予定となりました。鉄道のミュージアムに収められ、一般の方にも見ていただけるようになります」と中山部長。協力した各社へ感謝の気持ちを表すとともに、「私たちの技術力を披露できたことに自信を持ちたい」と述べ、挨拶を締めくくった。
京急デハ230形デハ236号の車体寸法は最大長16m、最大幅2.74m、最大高3.96m。自重33.5トン。台車はMCB-R型、主電動機は93.3kw(125馬力)×4台とされ、定員は100名とのこと。赤い車体に白帯を巻いた車両外観に加え、床面や座席端部の袖仕切りなどに木を用い、レトロな雰囲気としたロングシートの車内も公開された。京急の創立120周年を記念したヘッドマークや、京急大師線の行先板を取り付けての撮影も行われた。
同車両は横浜市みなとみらい地区で建設の進む京急グループ本社の1階「京急ミュージアム(仮称)」に保存・展示される予定。電車のシミュレータや京急沿線を再現したジオラマ等も設置した企業ミュージアムになるという。京急グループ本社は地下2階・地上18階建て(高さ85.55m)のビルとなり、京浜急行電鉄をはじめとするグループ企業11社が入居する。9月17日から順次移転し、10月28日までに完了予定となっている。