RIZAP(ライザップ)は5月30日、同社が取り組んでいる研究開発の成果と今後の取り組みについての戦略発表会を東京・新宿区のRIZAP本社にて開催した。発表会には、糖尿病研究の第一人者である朝日生命成人病研究所附属医院の菊池貴子氏も登壇し、低糖質食についての研究結果の報告も行われた。
RIZAP Lab始動、トップアスリートをサポート
独自のボディメイク・メソッドでパーソナルトレーニングジムを展開しているRIZAPは、2019年1月に研究機関となるRIZAP Labをスタートさせている。このラボはRIZAPメソッドをより進化させ、アスリートのサポートを行うための研究施設となっており、サッカーの湘南ベルマーレをはじめとしたアスリートたちへトレーニングや栄養面でのサポートを行っているという。
メソッドを応用したトレーニングにより、湘南ベルマーレのメンバーは多くの項目で体組成やパフォーマンスが向上。U-20日本代表の齋藤未月選手においては、3月のアジア選手権予選で左太もも肉離れを起こしてしまい、全治3~4週間と診断されたが、RIZAP Labでのリハビリにより2週間後には練習復帰を果たすことができたという。
現在もプロゴルファー、トライアスロン、バスケットボールなどさまざまなアスリートのサポートを行っており、今後もラボを活用し支援を続けていく。
糖尿病における低糖質食の共同研究
続いて、RIZAPが研究に協力した「短期間の低糖質食事法と肥満症の改善」の研究報告が菊池氏より行われた。
現在、日本では男性の肥満者が多く、40代~60代の3人に1人が肥満となっている。肥満は日本のみならず、世界的な問題になっており、ソーダ税やシュガー・タックスなど改善に向けた法整備を行っている国もあるが、肥満問題を解決できた国はいまだゼロとするレポートもあるほどだという。肥満の人は死亡率も高いとする研究結果もあり、今後、世界的に取り組むべき問題と考えられている。
肥満対策としては運動療法や薬物療法、手術療法とさまざまな手法があるが、今回の研究は食事療法にフォーカスした研究となる。
これまでに食事療法についての研究報告はあるが、現時点では日本人を対象にした研究は少なく、食事内容の遵守率やサンプルサイズ、追跡期間など多くの制限があったというのが現状。今回、菊池氏らが行った研究はランダム化比較実験で行われており、科学的根拠、信頼性においてかなり精度の高い研究報告となるという。
その内容は、2カ月間のすべての食事(朝、昼、夕、間食)を全提供し、厳密な低糖質食を被験者に実践してもらうというもの。糖質量は50gと120gで設定し、血液検査や体組織のパラメーター変化などの検証を行った。
被験者はBMIが25~35の20歳以上65歳未満の日本人で、「境界型糖尿病」「2型糖尿病(ただし投薬治療者など一部除外)」「脂質異常症」「高血圧症」のいずれかを1つ以上合併し、病態が安定している人を対象とした。食事の記録方法にはRIZAPで使用されているアプリを活用し、信頼性の高い研究に寄与しているという。
早起きの習慣がある人はやせやすい
研究の結果、参加者全員の体重が減り、糖質量が50gであっても120gであっても体重減少の動きに大きな差が無いことがわかった。肝機能、中性脂肪、善玉コレステロールなどさまざまなパラメーターが改善。血糖値やHbA1cも改善されたという。
食事内容においてタンパク質、脂質の割合が多くなることにより、悪玉コレステロールの悪化や腎機能への影響が懸念されたが、どちらも数値が悪くなることはなかった。
また、体重減少に寄与する生活習慣として、早起きの習慣がある人がやせやすい傾向にあり、21時以降に夕食を摂(と)っている人はやせにくい傾向が見られた。このことにより、生活習慣にも注意が必要であるとしている。
今回の研究により、肥満の是正において短期間の低糖質食は安全で有効な方法であることが明らかにされた。ちなみに、今回の研究では運動指導は行っておらず、食事のみのサポートとなっている。
参加した被験者からもポジティブな声が多く、特に糖質量120gの群では「食事量にボリュームがあり、満足感がある」とする声が多かったとのこと。
菊池氏は今後、さらに長期に安全性を保って継続するためのプラン作成や検証を進めていきたいと締めくくった。
今後はボディメイクに加えヘルスケア事業も
最後にRIZAPは今後、ボディメイク事業に加えてヘルスケア市場で健康への貢献をしていくことを発表した。これまでも、ボディメイクの結果、糖尿病などの症状が改善されたという事例が個別にはあったが、そのような効果に結びつくような取り組みを組織としてしていきたいとしている。さらに、大学や研究機関などとさまざまな共同研究を行ってきたが、それをヘルスケアプログラムとして提供し、健康寿命の延伸に努めていくという。
RIZAP店舗のある都道府県にはすべて提携医療機関が存在しているが、7月から順次、医師の各店巡回サービスを展開。入会時やプログラム中に健康に関する質問を医師に直接できるようにしていく。
また、専門知識を有した「メディカルトレーナー」を全店舗に配置できるよう、ヘルスケアのプロ育成に注力する。メディカルトレーナーとは同社の社内呼称で、疾病別の栄養摂取や運動障害と予防についてなど、医療とRIZAPをつなぐ知識を有したトレーナーとなる。そして、医師監修の入会基準を設け、安全にプログラムを受けられるように配慮。糖尿病患者や予備軍の約96.4%が受け入れ可能としている。
医療機関ではないため、あくまで治療ではないが「これまでのボディメイクで培ってきた実績を、アスリートやヘルスケアの分野で活用しサポートしていきたい」と、今後の企業としての戦略姿勢を示した。