お通夜・葬式。その服装は混同されがちですが、厳密には同じではありません。昼間の告別式を主とする葬式ではお通夜以上にフォーマルな服装が求められます。のべ4,000人以上のビジネスマンにアドバイスしてきた服のコンサルタントが葬儀における男性の服装について教えます。

  • 葬儀での服装のマナーを正しく理解していますか?(写真:マイナビニュース)

    葬儀での服装のマナーを正しく理解していますか?

男性の礼装の格式とは

そもそも、礼装とは冠婚葬祭などで威儀を正したり、敬意を表したりする場で正装することです。礼装のうち、お通夜や葬式に参列するために着る服装を「喪服」といいます。喪服の色は、黒が一般的で、できるだけ目立たない服装を心がけます。

礼装は決まりが多く、葬式で着る喪服についても黒を着ておけばよいわけではありません。最近は、通常2日間かけて行う葬儀を1日で済ませる「一日葬」や、親族や親しい友人だけで行う「家族葬」などのシンプルな葬儀スタイルが増えていますが、それでも葬儀は厳粛な場です。

死者をしのんで喪に服し、火葬場にも行きますから、喪服のマナーを踏まえて葬儀に出席しましょう。

男性が葬儀で着る洋装の格式

お通夜・葬式で着る服装は3種類に分かれます。参列者ではなく喪主など遺族側の代表者が着ることもある正式礼装と呼ばれるモーニングコートです。コートのように着丈が長いジャケットにグレーもしくは黒生地にストライプが入ったスラックスを合わせたスタイルです。

日常生活で見掛けることはありませんが、洋服におけるいちばんフォーマルな服装です。その名の通り、昼間に着用する装いだからこそ、お通夜では略礼服と呼ばれる黒いスーツを着ます。ただし、弔問者ではなく喪主が着る服です。

一方、略礼服と呼ばれる黒いスーツが準礼装で、これこそ葬式・告別式に参加するときの定番スタイルです。一般的な黒いビジネススーツとは、同じ黒でも糸の色が異なります。その印象は黒いビジネススーツより漆黒です。

また、お通夜では許される略礼装は、地味なダークスーツでいわゆる平服です。ただし、告別式のときには避けたほうがよいでしょう。お通夜は予期せぬ突然のタイミングだからこそ、平服でも構わないという暗黙のルールが許容されるからです。

このように葬儀の服装といってもお通夜・告別式というタイミングや立場によって変わります。

男性が葬儀で着る和装の格式

洋装と同じく和装にも格式があります。ここで重要なことはいずれにせよ、「弔問側が遺族側より格式高い服装では不自然」だということです。男性の正式礼装(和装)では、黒い紋付きの羽織と袴を合わせた紋付き羽織袴です。家紋は5カ所に入れます。また、足元は白い足袋に雪駄を合わせます。喪主や遺族側でしたらあり得ますが、弔問側が着る和服ではありません。

弔問者が和装をする場合、略礼装に位置する恰好が基本になります。地味な無地の着物に羽織を合わせます。袴である必要もありません。羽織は紋がないもので構いません。このとき、色は黒・紺・グレーなど地味色を選びましょう。

男性の喪服「ブラックスーツ」の基本スタイル

略礼服と呼ばれる黒いスーツがいわゆる喪服ですが、一般的なシングルに加え、ボタンが並列に並んだダブルがあります。スラックス裾の仕上げは折り返しのダブルはNGでシングルの一択です。

ちなみに黒いビジネススーツを喪服と混同するケースもありますが、これは別物です。というのも、糸の種類が違います。黒いスーツの場合、同じ黒でも光を反射し光沢がありますが、略礼服の黒は光を吸収するような漆黒です。黒いビジネススーツはお通夜のとき、平服として着る分には許容されています。

葬儀での男性の服装・持ち物マナーの注意点

ワイシャツは白を選びます。このとき、ボタンダウンや織り柄が強いものは避けたいところです。喪に服すと考えるならば、大人しくベーシックな白シャツを選びましょう。ネクタイを締めることを前提とするため、襟の開きが90度のレギュラーカラーが好ましいところです。

  • 服装だけでなく持ち物にも注意

    服装だけでなく持ち物にも注意

葬式のネクタイは黒を選びます。また、ネクタイピンはNG。光り物は故人をしのぶ上で邪魔になります。また、ネクタイの結び目の下にディンプルと呼ばれるくぼみをつくることも葬式においては避けましょう。また、ジャケット胸元のポケットチーフもこのときばかりは不要です。差別化するというより、喪に服することがテーマだからです。

バッグは黒が好ましいです、ただし、革製品は殺生を連想するためNGです。ショルダーバッグなどカジュアルなものは肩紐を使わず、手で持ちましょう。

また、場所柄ハンカチを使うこともあることでしょう。涙をぬぐうためのハンカチですが、ベーシックな白で柄がないものを選びましょう。数珠に関してはマストアイテムではありませんが、持参する場合は自身の宗派のもので構いません。数珠は宗派によって種類が異なります。

雨・雪の日もあります。こんなときは黒・紺などの地味な傘を選びたいところです。ビニール傘は便利ですが、可能な限り避けたいですね。アクセサリーは結婚指輪以外つけません。時計もベーシックなものはOKですが、派手なものは避けましょう。また、ネクタイピンやカフスも光り物は避けます。

足元は靴と靴下に気を付けます。どちらも黒が基本ですが、エナメルなどの光沢あるものやバックルが目立つものは避けましょう。王道ですが、紐タイプのストレートチップやプレーントゥであれば問題ありません。靴下も柄などなく無地を選びましょう。

コートはフォーマルなチェスターコートやステンカラーコートであっても黒が理想的です。カラフルな色は避けますし、殺生をイメージする革系のコートは避けましょう。焼香の邪魔にならないよう香水など避けたいところ。また、携帯の音などは気まずいですし、マナーモードの確認を忘れないよう注意しましょう。

いろいろと服装マナーが求められる葬式ですが、基本は「喪に服する」ということと「故人に対する哀悼の意をささげる」という2つの視点から服装を選べば以上の要件に収まるはずです。

著者プロフィール: 森井良行(もりい・よしゆき)

エレガントカジュアル 代表取締役
20代後半から40代の男性のファッションを「エレガントカジュアル」でワンランクアップさせる「服のコンサルタント」。 街のセレクトショップを歩き、顧客に試着を繰り返してもらいながら、その人に最も似合う服を探していく独自の「買い物同行」は9割以上の高い満足度を誇る。著書『毎朝、迷わない! ユニクロ&ツープライススーツの上手な使い方』 (WAVE出版)