鈴木このみ

鈴木このみ。1996年11月5日生まれ、大阪府出身。全日本アニソングランプリで優勝、畑亜貴リリックプロデュース「CHOIR JAIL」で15歳でデビュー。以降、数多くのTVアニメ主題歌を担当している
撮影:稲澤朝博

現在放送中のTVアニメ『この世の果てで恋を唄う少女YU-NO』のEDテーマに起用されている、鈴木このみのニューシングル「真理の鏡、剣乃ように」。

今回は、パワーとクールさを兼ね備えたこのデジタルロックや作品自体への向き合い方をはじめ、リリース直後に始まる5thツアーに向けたカップリング曲「Curiosity」も含めたシングルへの想いを語ってもらった。

■なんと自身と同い年! 原作が“伝説のゲーム”と呼ばれるゆえんを体感

――『この世の果てで恋を唄う少女YU-NO』EDを担当することが決まったとき、まずどう思われましたか?

最初、「これは1996年生まれの、“伝説のゲーム”って言われてたんだよ」って教えられまして。22年も愛している方がいるわけですから、100%アニメに沿うものをお届けしなければ……という意味でのプレッシャーは、すごく大きかったです。でも、1996年発売ということで自分と生まれ年が同じなので、そこはちょっと縁も感じましたね。

――作品自体については、最初どんな印象を持たれたのでしょう?

女の子のキャラクターが多いので、はじめは「男性向けのハーレムモノかな? 」って思ったんですよ。でも、実際にゲームをプレイしていくと全然違っていて。謎解きの部分が多くて男女問わず誰でも楽しめるようなゲームですし、キャラクターによってはどのルートもハッピーエンドにならないキャラクターもいるんです。

しかも、そのキャラクターのルートとは別ルートで本音を聞けたりという絡み方も面白くて、「“伝説のゲーム”って言われるのも、すごくわかる!」って思いました。最初は作品を理解するために始めたんですけど、やっていくと普通に面白くて、今ではいろんな人に「おすすめです!」って言ってます。

――それがアニメで表現されているのをご覧になって、どう思われましたか?

本当に、すごくていねいに描かれているように感じました。ゲームだと、シーンごとの細かい表情まではわからないじゃないですか? でもそれがアニメになって細かく動くことで、「あ、このシーンでは実は涙を流してたんだ」みたいな新しい発見もあったんですよ。あと、自分の好きなキャラクターもいるので、そのキャラがスポットライトを浴びるのはいつなんだろう? っていうドキドキもあります(笑)。

■数年来のボイトレでの取り組みが、ひとつ結実した楽曲に

――そのEDを飾るのが、「真理の鏡、剣乃ように」です。楽曲自体からは、最初受け取ったときどんな印象を持たれました?

(作詞・作曲の)志倉千代丸さん節の古き良きアニソンといいますか、一回聴くだけで誰でも覚えられるような“ザ・王道のアニソン”だなっていう印象を受けました。それこそ最近のアニソンって、結構転調がいっぱいあったり変わったメロディが多かったりといろんなジャンルが増えていると思うんですけど、そんななかで古き良きアニソンに立ち帰ってた曲だと思うんですよね。

――しかもこの作品だからこそ、そういうところに立ち帰ることがよりハマりますよね。

そうですね。この作品があるからこそ、アニソンの原点に立ち帰れるような作品の時代感を取り入れた楽曲をいただけたと思っているので感謝もしていますし、作品ファンの方にもすごく楽しんでもらえるんじゃないかなと思っています。

――では歌うときにも、作品と寄り添う部分を特に大事に?

はい。でもサビにすごく疾走感とパワーがある曲なのに、作品のカラー的にはちょっとミステリアスな部分も残さなくてはいけなくて。レコーディングでは、そのバランスを取ることにすごく苦戦しました。

――パワーで押し切るだけの曲ではないですもんね。

そうなんです。自分的にはキーの低めなAメロをはじめ、細かい技術がすごく必要な曲で。そういうところで作品のミステリアスな部分も思い切り出しつつ、サビではいつもの鈴木このみのカラーも出して……という、ちょうどいいバランスにできたんじゃないかな、と思います。

――たしかに。サビではパワーを感じながら、A・Bメロでは歌声から厚みを感じて。だから強すぎないけどサウンドの強さにも負けていないように感じたんですよ。

ありがとうございます。声質的にも、デビューからずっとお世話になっているエンジニアの方に「デビューと比べて倍音が増えてるんじゃない?」という意見をいただいたんですよ。たしかに上京してから2~3年ぐらいはずっと低音の特訓に取り組んでいたので、その成果がやっと出てきたのかもしれません。こういう曲に向き合うことで、自分の楽曲の幅も今後もっともっと増やしていけるんじゃないかな、と思っています。

――しかも、志倉さんの楽曲ってそもそもシンプルに難しいですから。

そうなんです! 今回サビの部分は高いので、低音を特訓していることもあって「キーを半音下げる?」みたいな話も出たんですよ。でもそうすると、ちょっと雰囲気が変わって作品から遠ざかってしまうように感じたので、「私が曲についていくしかない!」とそのままにしたんです。それをライブで何度か歌っていたら、身体が自然と慣れていくというか、どんどん喉が覚えてくる感じがして(笑)。だから、曲にビシバシ鍛えられている感じがするんですよね。

――メロディに加えて、歌詞も表現が難しいポイントだと思ったのですが。

歌詞は、最初に届いたときは結構ハテナが多かったです。それで、それぞれの言葉の持つ意味がまずすごく気になったので、そこからゲームをやったりアニメ側のスタッフさんに意味を尋ねたりしていきました。歌詞もアニメと同じく読んでいけば読んでいくほど深い内容になっていると思うので、アニメが進んでいくごとに「あ、ここはこういうことだったのか!」って感じられるような、フラグがすごくいっぱい立ってるような歌詞になっているんですよ。歌詞の核心まで喋るとアニメのネタバレになってしまうぐらい、すごく作品とリンクしたものになっていると思います。

――この曲とともに流れる、ED映像についてはご覧になっていかがですか?

特に、タイトルにもあるサビ最後の「剣乃ように」のフレーズの部分で文字をバンと出していただいたのが、すごくかっこいいなと思って。言葉もとても大事に捉えてくださっているのを感じて、そこがまず印象に残りましたね。

――鈴木さん自身も、その部分は歌っていて気持ちいいフレーズなのでしょうか?

そうですね。それに、「きっとここからライブでみんなが、わーって声出してくれるんだろうな」って想像できたポイントでもありますし。逆にライブで難しくなるのは、Aメロとかでいかに自分を抑えるかだと思うんですよ。なのでいい意味で冷静さを保ちつつ、でも情熱は忘れないというところが、ライブではポイントになってきそうだな……と思いながら、レコーディングしていました。

――そして今回この曲のMVが、サイバーなテイストのものになっています。

そうですね。近未来な感じにしてもらいたくて、今回はCG・レーザー・照明などの光を駆使して、2~3日ぐらい撮影にも時間をかけて挑みました。

――テーマはおっしゃるように、“近未来”?

そうですね。あと、冒頭で旗を挙げてるんですけど、あれは自分の意志の象徴ということで。歌詞に込められた意志を、ああいった形で表現しているんです。

ただ、CGとかレーザーってなかなか完成形が想像できないので、事前に打合せもしていろいろ説明もしてもらったんですけど、最初は「え、この曲で車が走るの?」みたいに想像がつかなく(笑)。だから撮影中も完成図を想像するのがすごく大変だったんですけど、完成版の映像を観て「こんなにかっこよく仕上がったんだ!」って、自分もすごく感動しました。

――ということは鈴木さんが完成形をご覧になったときの感想って、結構ファンの方と近い部分があるかもしれないですね。

本当にそうだと思います。しかも、夜の街がばーっと出てくる風景のシーンには小ネタがちょこちょこ仕込まれているので、細かいところまで観ていただけると「あぁ!」って楽しんでいただけるかもしれません(笑)。