ナイトクラブに設けたバスケットコートで、DJの音楽とMCが試合展開を盛り上げる3on3形式のバスケットボール・SOMECITY。東京リーグの平塚Connectionsに所属するCHIHIROは、日本ストリートボール界きっての名プレイヤーだが、昼は教師としての顔も持ち、女優・土屋太鳳が教え子だったことでも知られている。「SOMECITY 2018-2019 TOKYO 2nd PLAYOFF」で惜しくもBLACKTOPに敗れた日、CHIHIROは悔しさをにじませながらも、バスケと教師への熱い思いを語った。

  • CHIHIRO

    平塚Connections所属のCHIHIRO

■11年前「ストリートボールは邪道」の声

――BLACKTOPと9点差の敗戦。惜しいゲームでした。

今日は若手が中心でしたが、すごく頑張ってくれました。いいところまでいきましたが、積み上げてきたものの差が出たのかなと思います。

――あらためて、SOMECITYの魅力とは何でしょう?

もう11年やってますからね(笑)。なんだろう……11年前から「国内のバスケで一番アツい」と、みんな魂を入れてやってますね。お客さんもそれに熱狂してくれるので、「みんなで作る舞台」のような空間だと思います。

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――11年前と比べてSOMECITYを取り巻く環境は良くなっていますか?

すごく良くなっていると思います。11年前、こういうストリートボールは「邪道だ」のような声が多くて。否定派がすごく多かったんですけど、岡本飛竜選手のような有名な選手が出て一生懸命やってくれたことで、国内での受け止められ方が変わっていったような気がします。それから、「バスケに対する姿勢」という意味でも、国内のバスケに良い影響を与えられてる場所だと思います。

――11年の中で、どのくらいの時期に風向きが変わったのでしょうか。

岡本飛竜選手が大学1年か2年の時に、「ナイトカレッジ」というイベントに出た時から変わったのかなと。あとは、KYONOSUKE選手というF'SQUADのすごいボーラーがいるんですが、そういう若い選手が出てきて、流れが変わってきたと思います。

  • CHIHIRO

――客層も若いですよね。

そうですね。バスケをやっている若い子たちがたくさん観に来てくれています。バスケを取り巻く状況はすごく良いですね。僕が大学を出たての頃にBJリーグが始まりました。その後、JBLと統合されるタイミングでも、SOMECITYの見られ方が変わりました。バスケは本当に良い方向に進んでいると、僕のような末端の立場でも感じます。

――何よりもすごいのが、先生もやられてるんですよね。

中1の担任をしています(笑)。僕以外もみんな仕事をしているので、練習は週に1~2回ぐらい。複数のチームに所属している選手もいます。

――最近では、『中学聖日記』や『3年A組』などのドラマが放送され、教師という職業にもあらためて注目が集まっています。教師をやってよかったと感じる瞬間はありますか。

たくさんあります。生徒が応援しに来てくれたこともありましたし、日々の生活の中で子どもたちの成長を感じられる職業です。それから、卒業した後に会いに来てくれると本当にうれしいです。

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■生徒時代から変わらない土屋太鳳「何事にも一途」

――教え子である土屋太鳳さんもCHIHIROさんの試合を観戦しに来たそうですね。どんな生徒だったんですか?

運動バリバリの女の子でした(笑)。

――土屋さんのインスタには、「全部、この先生に指導していただきながら、そして、たまには中学生らしく反抗などさせていただきながら…」「引退までのいろいろな時間を見守っていただきました」と感謝の言葉がつづられていました。

懐かしいですね(笑)。彼女は当時から芸能活動をしていたので、部活に全部参加できないと相談されたこともありました。「参加できる時に一生懸命やればいいんじゃない?」とアドバイスしていたんですが、何事も一生懸命に取り組む子でした。

――ツーショット写真もアップされていましたが、久しぶりの再会だったんですよね?

そうですね。その少し前に彼女の舞台を観に行って、その時が久しぶりの再会だったんですが、その後にSOMECITYに来てくれたので本当にビックリしました。本当にありがたかったです。

CHIHIRO

――当時と比べていかがですか?

あの子は本当に昔から変わりません。とにかく正直で、誠実。そして、何事にも一途。素直に応援できます。三きょうだい全員見ていますが、みんないい子です。土屋だけじゃなく、教え子が頑張っていることを知れるのはすごくうれしいですね。

――選手として今、思い描いていることは。

SOMECITYでもう一度優勝することが目標です。僕としては、SOMECITYがどのような方向になろうとも、とにかく勝つこと、優勝することを第一に考えています。過去には2連覇したこともありましたが、その頃のメンバーはあまり残っていません。若手がたくさん入ってくれて、そのおかげで僕もまだ立っていられるので、みんなともう一度あの喜びを分かち合いたいと思います。

――でも、若手には負けられないという思いも(笑)。

そうですね。相手チームには、教え子と同い歳ぐらいの選手もいるので(笑)。技で「魅せる」ということはもちろんですが、全力でやってナンボだと思うので。ある意味余裕がないのかもしれませんが、そういう僕たちのスタイルを応援してくれる方たくさんいるので。それには応えたいと思っていますが、今日は負けてしまいました……(笑)。

――とても惜しい試合でした。バスケは一生やり続けたいですか?

SOMECITYのおかげで35歳になる今でもバスケを続けることができています。お金をもらっているわけではないのに、熱中して打ち込んでバスケをできているのは、本当にSOMECITYのおかげです。おじさんになってもバスケを続けたいと思うので、引退は当分ないのかなと思います。

■プロフィール
CHIHIRO
本名、池田千尋。身長181センチ。第1回FIBA ASIA 3x3男子バスケットボール選手権大会 3x3男子日本代表。日本ストリートボール界No.1スラッシャー。切れ味鋭いドライブは、「サムライソード」と形容されている。