• 河毛俊作監督

――河毛監督の作品は『ギフト』で主題歌にブライアン・フェリーを使ったり、『きらきらひかる』ではB・J・トーマスを挿入歌に使ったりと、洋楽を多用されていますが、監督にとってそれはどういった意図があるのでしょうか?

僕はJ-POPじゃなくて圧倒的に洋楽の世代なんですね、そこで育ってきて、音楽があまりにも好きだから、逆に音楽を仕事にしたくなかったていうのがあった中で、音楽を別のやり方で使える仕事の方が面白いなって思って、ドラマを作るようになったんです。一番大きな影響を受けたのは『アメリカン・グラフィティ』(73年公開の米映画)ですね。映画に合わせて作曲された音楽ではなく、普通の曲がセリフをしゃべってるときに流れるっていう感じがカッコいいなと思って、「あ、こういう音楽の使い方なんだ」って。そういうことをテレビでもやってみたかったんですね。

――木村拓哉さん主演の時代劇『忠臣蔵1/47』(01年)で、エンディングテーマがエディット・ピアフだったときは、監督のセンスがすごいなと感動しました。

あれは僕もすごく気に入っています。「あの話を最後に包む音楽は何なんだろう?」って考えたときに、「それは激しいものとかではなく、こういうことじゃねーの?」って思って、そうしたんですよ。

――今回の『砂の器』でも、洋楽を効果的に使っているんですか?

それはまだ秘密ですよ(笑)。放送を楽しみにしていてください。

  • 高嶋政伸 (C)フジテレビ

■東山が感心した“ドライ”な演出

――河毛監督の作品は、どんなに感動的なお話でも“お涙頂戴”に持って行かない、ドライな演出だなという印象があります。それは意識されているのでしょうか?

それは僕の体質ですね。おっしゃったように、僕はどこかドライなほうがより悲しいと思うたちなので。だから、テレビの世界ではつらい思いをしました(笑)。テレビって基本お涙頂戴で、それを良しとするプロデューサーも多いので。そこで僕は戦ってきたところがあるから、揉めたりもしたよね(笑)。簡単に言えば、僕はカッコいいものが好きなんですよ。そこ察しろよっていうところで止めておく。作り手側が先に涙腺を崩壊してるような作り方は、やっぱり好みではないっていうか、そこはやっぱり僕の体質ですね。

フジテレビで言えば、倉本聰さんの『北の国から』って、どちらかと言えばウエットですよね。僕の演出家の生い立ちの中で、杉田成道さん(『北の国から』などを手掛けた監督)っていう人が上にいて、この人と同じことやってたら勝てない、全く違うスタイルでいかないと生き残れないだろうなっていうのはあった。絶対そっちにはいかないという思いが、ディレクターとしてあったんです。

――「和賀を見つめる視線をあえて外してみよう」という演出について、東山さんがすごく面白かったとおっしゃっていました。そこにも、監督のドライな演出の秘密があったりするのでしょうか?

そうですね、普通、絶対見てしゃべるところなのに、見ないって演出をつけると特別な意味を持つでしょ? 「おまえ殺したろ」って目を見てしゃべるより、逸らして言う方が圧が強くなるんだよね。それと、今西というキャラクターは、絶対大事なことは目を見ないで言うはずだと思って。芝居って距離感と目線の当て方で全部変わってくるから、演出家はそれだけを日々ずっと考えているようなものだよね。2人の距離感を1メートルでいくか、50センチでいくかとか。「大事なことは見ないで」というのは1つのやり方だし、そのほうがオシャレでしょ?(笑)