女優の菊池桃子と俳優の勝村政信が、フジテレビのドキュメンタリードラマ『独占取材 北朝鮮拉致 前略 めぐみちゃんへ~横田夫妻、最後の戦い~』(30日15:30~17:30)で、拉致被害者・横田めぐみさんの両親である横田早紀江さん・滋さん夫妻を演じる。

  • 菊池桃子(左)と勝村政信=フジテレビ提供

この番組は、フジテレビに残された2,000本以上に及ぶ横田夫妻のVTR、さらに新たな取材を元にドキュメンタリードラマでふたりの戦いを初めて描くもの。早紀江さんの20代から現在までを演じきった菊池は「実は強いわけではない“普通のお母さん”である早紀江さんをしっかり伝えたい」と意気込みを語る。

去年4月から入院生活が続き、テレビでその姿を見なくなった横田滋さんは現在86歳。入院直前まで番組のカメラはその姿を追い続けていた。集会でなかなか言葉が出ずに詰まってしまう場面、会見で絞り出すようにめぐみさんの名を呼ぶ場面、靴の脱ぎ履きも含め日常生活の全てを早紀江さんがサポートする場面など、いつも笑顔を絶やさず精力的に活動してきた滋さんに忍び寄る「老い」を取材。滋さんは今も、めぐみさんから拉致の前日にプレゼントされたくしや、めぐみさんの写真を病室に置いて、めぐみさんの帰りを待っているという。

1997年、大阪・堺には、拉致問題解決への署名活動を行う、若き横田夫妻の姿があった。社会の関心はまだ薄く、素通りされ続け、心ない人に配っていたチラシを叩き落とされる。しかし、それを再び拾い、声を上げ続けた2人。政府の対応が生ぬるいと首相官邸前で熱波の中、体力の限界まで座り込みを続けたこともある。2002年に拉致被害者が帰国した際も、ニュースで何度も報じられた映像とは別に、横田夫妻がどのように家族らと接してきたのか、素材をあらゆる角度から見つめ、ふたりの行動をひも解いていく。

北朝鮮でめぐみさんと8カ月暮らした曽我ひとみさんは、帰国直後、横田夫妻に多くを語らなかったが、何度か面会を続けるうちに少しずつ彼女の様子を明かしてくれたという。今回、曽我さんは番組の取材に応じ、めぐみさんとの日々について細かく教えてくれた。監視に聞かれないよう小さな声で「もみじ」や「ふるさと」を一緒に歌ったこと、めぐみさんはとても勉強熱心でひとみさんに多くのことを教えてくれたこと、日本人拉致に深く関わった工作員との生活など、貴重なエピソードが明らかになる。

蓮池薫さんも単独インタビューに応じ、めぐみさんについて語る。蓮池さん一家がめぐみさん一家と近所に暮らした時期について「軟禁状態で生きるのはつらかったと思う」とコメント。そして夫と娘と散歩するめぐみさんが見せた意外な表情が、今でも忘れられないという。2人の拉致被害者の貴重な証言から、めぐみさんの生活が明らかになる。

そして、早紀江さんのめぐみさんに宛てた手紙を軸に、夫婦の戦いを実写と渾身のドキュメンタリードラマ化。めぐみさんは写真からは想像できないほど、素顔は明るくひょうきんでいつも家族の中心的存在。温厚な滋さんとそんな夫を支える早紀江さんのイメージだが、実はめぐみさんが拉致被害者と知らされた直後、めぐみさんの顔と名前を明らかにして戦っていくことに、2人は全く違う意見を持って戸惑っていた。さらに、政府から度々伝えられる残酷な知らせに対し、涙しながらも毅然(きぜん)と向き合ってきたことなど、菊池桃子と勝村政信が40年を超える夫婦の本当の戦いを演じきる。

菊池は、今回のオファーに「正直、難しいなと思いました。報道番組を通して拉致事件のことは何となく知っていましたが、詳しいわけではなかったですし、多くの人が知っている人物を演じるのが違和感なくできるのか不安でした。でも、台本を読んだとき、『自分の子供が突然いなくなったらどうしますか?』というシンプルな親心がテーマの中心にあったので、それだったらできるかな、と思いました」と率直な心境を吐露。

実際に演じてみて、「早紀江さんは、実際は強いわけではなくて、普通のお母さんなんだ、と。そんな普通のお母さんがあそこまで人々に強い印象を与えるほど頑張らなくてはならないのか、という意味を皆さんに考えていただくきっかけになればと思います。皆さんの知っている早紀江さんのイメージを見せたいなと思いつつも、家庭にいるシーンでは皆さんが知らないような普通のお母さんでいるところをしっかりお見せしたいです」と語っている。

一方の勝村は「ドラマ化されるのはもちろんですが、僕で大丈夫なのか、と。拉致事件は未解決ですし、横田さんご夫妻を日本中の人が知っていますから。しかし、ドキュメンタリードラマは何度もお世話になっておりまして、作品ひとつひとつに縁を感じています。なので、ぜひやらせていただきたいと思いました」とのこと。

そして、「滋さんたちが人生をかけて戦わなければいけない理不尽さを感じていました。この作品で、滋さんの明るく知的な存在が、本当に皆さんを引っ張っていったということがよくわかりました。もちろん拉致被害者の家族皆さんが同じ思いをされているのですが、滋さんは際立って強い方だと感じました」と、演じての思いを述べた。

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