所属する39人の棋士がそれぞれ10局を指し上位2席の昇級枠を争う第77期順位戦C級1組最終局全19局が3月5日、東西の将棋会館で行われ、8勝1敗で並ぶ近藤誠也五段、杉本昌隆八段、船江恒平六段、藤井聡太七段(並びは今期順位の順)はいずれも勝利を収め、リーグ成績を9勝1敗としました。結果、昇級者は順位上位の近藤五段(※昇級により六段に昇段)、杉本八段に決定。船江六段、藤井七段は順位の差に泣きました。

藤井七段を破った近藤五段、師匠の杉本八段が昇級

杉本八段(右)との師弟同時昇級はならず! 写真は2018年6月に開催された藤井聡太七段昇段祝賀会より

藤井七段は早い昇級を重ねれば最年少名人(※これまでの記録は谷川浩司九段の21歳2カ月)の可能性がありますが、今期においてはいったん足踏みの形となりました。結果的にこれが藤井七段の棋歴にどれくらい響くのか? それは未来のことですので定かではありませんが、参考になる資料を作りましたのでご覧ください。順位戦が現行の制度になった以降にプロ入りした永世名人、および現役タイトルホルダー(※A級経験者)のデビュー後10期までの順位戦在籍クラスです。

順位戦で勝ち抜きA級昇級→A級優勝→名人獲得→通算5期獲得が条件の永世名人は、やはり棋士全体の中ではずばぬけて早いペースで昇級していますが、それでもそれなりの足踏みをしていることがわかります。あの羽生九段にして、C級2組、C級1組、B級2組を抜けるのにそれぞれ2期を要しているのです。ちなみに、長い歴史の中でデビュー期からノンストップでA級まで駆け上がったのは加藤一二三九段と、表にある中原十六世名人の2人のみとなっています。今をときめく現役タイトルホルダーにしても足踏みがあるのは同じ。広瀬竜王はC級1組を抜けるのに4期、佐藤名人はC級2組を抜けるのに4期を要しています。

  • 永世名人、タイトル保持者のデビュー後10期の順位戦在籍クラス一覧

藤井七段は今期は惜しかったですが、「師弟同時昇級なるか」というドラマの中にいて、ファンはそれに熱狂しました。そういう意味では、今風に言えばやはり何かを「持っている」ことに間違いはなさそうです。偉大な先輩棋士も経験した足踏みを土台に、これからさらにファンが喜ぶ活躍を見せてくれることでしょう。