神戸市交通局は市営地下鉄西神・山手線の新型車両6000形の営業運転を2月16日から開始すると発表。2月8日の報道向け公開にて、デビュー記念のヘッドマークを掲げた6000形(第1編成)が披露された。2月9・10日に市民向け試乗会も開催された。

  • デビュー記念のヘッドマークを掲げた新型車両6000形。2月16日から営業運転を開始する

西神・山手線は新神戸~西神中央間(22.7km)を結び、新神戸駅から北神急行電鉄と相互直通運転を行う。現行の車両は1977(昭和52)年の地下鉄開業時から活躍している1000形、北神急行電鉄との相互直通運転を開始した1988(昭和63)年に投入された2000形、1993(平成5)年から投入された3000形の3形式。新型車両6000形はこれら既存車両の置換えとして投入され、2022年度までの5年間で全28編成を順次更新する計画となっている。

神戸市に拠点を置く川崎重工が製造を手がけ、デザイン監修は「KEN OKUYAMA DESIGN」が担当。「新型車両デザイン総選挙」で決定した外観デザインを採用し、洗練された中にもあたたかみを感じさせ、前面から側面に回り込むフォルムで愛嬌のあるデザインとなった。車体色は鮮やかな緑色とし、車両番号の文字は神戸市電時代から続く伝統あるレタリングを引き継いでいる。神戸山の手の顔となる“アイコン”を作ることをデザインテーマに、シンボルとなるシルエットで親しみやすい色彩の車両をめざしたという。

この外観デザインに関して、東京メトロ千代田線の車両16000系と似ているとのコメントがSNS等で見られる。両車両とも川崎重工と「KEN OKUYAMA DESIGN」が1次車のデザインに携っており、アルミ合金製の車体に緑系のカラーリングを施した点も共通している。神戸市交通局もそのことを意識してか、新型車両6000形の搬入時の様子などを紹介する映像の中で「どこかの16000系と似てない?」という「市民の声」を取り上げていた。

  • 東京メトロ千代田線16000系と神戸市営地下鉄西神・山手線6000形の外観。なお、東京メトロ16000系は川崎重工の他に日立製作所が製造した編成もあるとのこと

実際に神戸市交通局6000形を見ると、東京メトロ16000系にそっくりというほどの印象は受けない。東京メトロ16000系では緑系の色を複数用い、車体前面は凹凸のある形状で、窓下を緑系の配色としつつ銀色の部分も残し、車体側面のラインは側面上部と窓下にある。一方、神戸市交通局6000系は緑色を1色のみ用い、車体前面は窓下を一面緑の配色とし、車体側面のラインは窓下に加え、前面から側面上部・下部にもラインが続くデザインとなっている。東京メトロ16000系は1両あたり片側4ドアだが、神戸市交通局6000形は片側3ドアで大型窓を採用。これも両車両の印象を異なるものにしている。

■車内の快適性向上、バリアフリー対応も

新型車両6000形の編成合計定員は808名(編成座席定員272名)。先頭車の1・6号車は定員124名(座席40名)、中間車の2~5号車は定員140名(座席48名)。「快適性向上」「バリアフリー対応」「安全性向上」「省エネ向上」の4つをコンセプトとしており、車内は上質な空間をめざし、落ち着きのあるカラーリングで、丸みを帯びたシンプルな形状を多用している。大型の窓に加え、車両間の仕切扉を全面ガラスとすることで、客室内を明るく広く感じられるようにした。一般座席・優先座席ともに緑系の配色とし、座席表皮に千鳥柄を採用。座席幅を拡大し、窪み付きシートで快適性向上を図っている。

乗客同士の干渉を避けるため、座席端部に大型袖仕切りを設置。四角い穴のある木目調デザインが特徴となっている。ドア間の座席に中仕切りとスタンションポールを設置しており、9人掛けの座席を3席ずつ分けるとともに、座席から立ち上がる際の補助としての役割も果たす。なお、6000形では西神・山手線の既存車両で見られたアルミ鎧戸は採用されず、大型窓にはフリーストップ式のカーテンが設置されている。

  • 6000形の車内の様子。座席は緑系の配色で落ち着いた雰囲気に

  • 仕切扉は全面ガラスで見通しを良くし、衝突防止の柄も入れた

  • 吊り手は三角形の形状に。客室内はLEDの間接照明となった

吊り手は首都圏の電車でも見られる三角形の形状となった。車端部の優先座席は、一般座席と識別しやすいように吊り手をオレンジとし、シートは明度差を持たせた緑系の配色としている。バリアフリー対応として、車いす・ベビーカー利用者らに向けた優先スペースも各車両に設置。窓付近の2段手すりはこどもたちがつかみやすい高さとし、上下の手すりの奥行きに違いを持たせることで、少し腰掛けられるように工夫したという。

車両の床面高さを下げ、ホームとの段差を緩和することでスムーズな乗降も可能としている。乗降口では、戸挟み発生時にドアを閉める力を弱くする減圧機能付きの戸閉装置を採用。引込み防止や乗降時の注意を促すため、扉の戸袋付近と床にイエローラインを配した。ドア開閉時にチャイムとともに点滅し、開く扉位置とタイミングを知らせる扉開閉予告灯も設置。その他、安全対策として非常通報装置や消火器を備えている。

ドア上の車内案内表示器は1両あたり3カ所の千鳥配置で、LCD画面を2画面ずつ設置している。左側の画面はおもに広告・インフォメーション等の映像を流し、報道向け公開や市民向け試乗会では6000形を紹介する映像も放映されたという。行先・次駅案内や乗換案内、停車駅情報などはおもに右側の画面に表示される。案内表示は日本語・英語・中国語(簡体字)・韓国語の4言語に対応。車内案内表示器のないドア上には広告を掲出するスペースを設けるとともに、点灯文字で扉開方向案内を表示できるようにしている。

省エネ向上のため、室内灯や車外の表示器、前照灯・尾灯など各種照明類をLED化。客室内は間接照明とし、目に刺激の少ないやわらかな光に。運転席はダークグレーで統一し、客室との区別化を図った。緊急時に安全に車外へ脱出できるように、手すり付きの自重伸長型非常はしごを備えている。

■新型車両6000形の主要諸元は

新型車両6000形は西神中央方先頭車の1号車が6100型(Tc1)、2号車が6200型(M1)、3号車が6300型(M2)、4号車が6400型(T)、5号車が6500型(M3)、新神戸方先頭車の6号車が6600型(Tc2)。車体寸法は全長18,570mm(先頭車)・18,500mm(中間車)、全幅2,780mm、全高4,055mm。重量は先頭車の1・6号車が29.2~29.5トン、中間車のうち電動車の2・3・5号車が32.0~34.1トン、付随車の4号車が25.6トン。最高速度100km/h、最大加速度3.3km/h/s、減速度3.5km/h/s(常用)・4.5km/h/s(非常)とされている。

主電動機は効率的な三相かご形誘導電動機(170kW×4台/両)として省エネ性を追求。全閉内扇形として低騒音化も図っている。制御装置はSiC素子適用のVVVFインバータ方式で回生ブレーキ付き。1台の制御装置で誘導電動機4台を一括制御する1C4Mの駆動システムとし、低損失なパワーデバイスを採用することで装置の小型・軽量化を図る。

その他、主要諸元表によれば、台車は「ボルスタ付軸はり式空気ばね台車」「軌間 : 1,435mm」「台車固定軸距 : 2,100mm」「車輪径 : 860mm」「ダイレクトマウント式」、駆動装置は「歯車型軸継手平行カルダン駆動方式」「歯車比 100/15=6.67」、補助電源装置は「静止型インバータ方式 150kVA三相440V SiC素子適用」、空気圧縮機は「スクロールコンプレッサ 実吐出量1,360NL/min」、蓄電池は「アルカリ蓄電池 80Ah(1HR)」、ブレーキ装置は「ATC/ATO装置連動応荷重装置付電気指令式電磁直通空気ブレーキ装置(遅れ込め制御)」、ATC装置は「高周波軌道回路連続誘導受信方式(車内信号方式)」、ATO装置は「車上演算方式(トランスポンダ方式)」、列車無線装置は「誘導無線方式」とのこと。

  • 試乗会ではヘッドマークを掲げた6000形の第1編成が西神中央駅から新神戸駅まで走行。同じ日に第2編成も試運転を行っていた

2月9・10日の市民向け試乗会は両日とも午前・午後の2回ずつ行われ、デビュー記念のヘッドマークを掲げた6000形の第1編成(6129~6629)が西神中央駅から新神戸駅まで走行したという。6000形の第2編成(6130~6630)も試運転を行っていた。新型車両6000形は2月16日、西神中央駅10時7分発の列車(谷上行)から営業運転を開始する。