付き人になって良かったと思うことを聞くと、「一流の方々との出会いですね」と回答。「大御所の俳優さんや、プロデューサーさんなどスタッフさんまで、いろいろな方のお話を聞くことができました。芝居のことなど分からないことがあれば、積極的に調べることも増え、とても勉強になりました。高橋英樹さんや杉良太郎さんなどもそうですね。お話を聞くことができて本当に刺激になりました」と、役者志望だった南雲氏にとって、大きな財産になった。

もちろん、海外ロケも同行する。「私が27歳のときに初めてイタリアに一緒に行ったのですが、それまで休みがほぼなかったんですね。そんな時、船越さんが長いロケに行くって聞いて『海外だし私は行かないな、やった!休める』と思ったのですが、船越さんから『パスポートあるか?行くぞ!』って(笑)」と“強制連行”。

その旅は、「イタリアのポンペイだったのですが、行って人生観変わったというか…。日本人に家があるかないかの時代から、水道管や劇場や居酒屋さんがあった場所、とか。大変な刺激になりました」といい、「船越さんが海外に取材に行くときは、旅行では入れない場所にも入れたりしてすべてが面白かったです。プライベートな旅も含めて、ここまで海外に行く人生になるとは思っていませんでした」と、貴重な経験が得られたそうだ。

  • 撮影を見守る南雲氏

長い間見守ってきた南雲氏だからこそ知る船越の性格は「ズボンのシワを気にします(笑)。私服のズボンは、ジーンズでもアイロンをかけることが多いです。身だしなみは本当に気を使いますね。船越さんのお父さんもすごく厳しかったので」とのこと。また、「仕事で向き合う人、物事への勉強は必ずしています。スタジオに来るゲストについては時間をかけて調べたり、その人の作品を見たり。朝早く起きてやることもありますよ。すごく勉強家です。本当にすごいなと思います」と、尊敬の念を禁じ得ない。

劇団を辞め、付き人に専念することになった南雲氏だが、実は船越の出演作に“弟子”として、毎回“師匠”と同じシーン・シチュエーションで役をもらって出演している。役者・南雲勝郎として、「100作以上出させてもらっています。本来は独立できればよかったのでしょうけれど、どこか自分には難しい部分があって、このようなスタイルになりました」と言うが、「役者になるときも何か自分を変えるというよりは、自然にやらせていただいています」というスタンス。しかし、「自分では意識していないのですが、周りから『船越さんに言い回しが似ていたね』と言われることも」あるという。

■船越さんか私が死ぬまで続ける

役者を目指して上京したが、「付き人として30歳を迎える頃、なんとなくそのまま続けているうちに、自分も役者として独立っていうことよりも、今のこの体制の方がやりやすいのかなという思いが出てきました」という南雲氏。「船越さんからも『30歳くらいに身の振り方を考えてみては?』とは言われていたのですが、いざ30になっても、そのままの生活を続けることになりましたからね(笑)」と現在に至る。

これだけ長い期間、公私を超えた付き人でいられるのは、「分かりやすい『船越様~』みたいな感じではなく、私も『それは違います』と、正直に言うようにしていますし、そういうところが信頼をしてくれている部分ではないかな」と分析。「船越さんとは、家族以上の関係、絆があります。肉親ではなく、すごく表現しにくいのですが特別な存在ですよね。変な言い方ですが、『南雲克弘でいるための人』かな、と。決して自分が犠牲になっていると思っているわけではなく、お互いが良くなるようにやっていることだと思って続けている仕事なんですよね。それが今までやってこられた理由なのかもしれません」と、特別な関係を築いてきた。

南雲氏について、船越は「カツは温厚、絶対に激昂しない。そのようなシーンを見たことがない。自分が熱くなっても冷静沈着。そして大変な勉強家で何でも知っている。今では自分の金庫番としても頼りにしている。彼がいなかったら自分は何もできない」と欠かせない存在であることを明かしたが、この関係は、いつまで続くのか。南雲氏に聞いてみると、「この仕事は船越さんか私が死ぬまでは続けるのではないでしょうか。船越さんが100歳、私が95歳くらいがいいですね。ちょうど2人ともボケてきて(笑)」と、生涯パートナーであり続けることを誓った。

そんな南雲氏は、きょう4日に放送される『トレース~科捜研の男~』第5話にも、“一瞬”出演。どのシーンに登場するのか、目を凝らして探してみては?

  • 新木優子の右背後にいるのが南雲氏=『トレース~科捜研の男~』1月28日放送の第4話より (C)フジテレビ