横浜市・川崎市は23日に共同記者会見を行い、横浜市高速鉄道3号線の延伸(あざみ野~新百合ヶ丘間)を事業化すると発表した。横浜市交通局が事業主体となり、市営地下鉄ブルーラインをあざみ野駅(横浜市青葉区)から新百合ヶ丘駅南口付近(川崎市麻生区)まで延伸。2030年開業をめざす。

  • 横浜市営地下鉄ブルーラインがあざみ野駅から新百合ヶ丘駅南口付近まで延伸される(写真:マイナビニュース)

    横浜市営地下鉄ブルーラインがあざみ野駅から新百合ヶ丘駅南口付近まで延伸される

両市は横浜市高速鉄道3号線延伸の事業化に向けて協調し、事業計画について合意形成を進めてきたという。横浜市の林文子市長、川崎市の福田紀彦市長が共同記者会見に出席し、あざみ野~新百合ヶ丘間延伸について、「今年度内の事業化判断に向け、両市で協議・調整を進めてきました。本事業の整備効果、延伸区域の費用対効果および採算性が認められることから、事業化することを判断しました」と発表。相互に連携・協力し、早期開業をめざすことを目的に、両市長による覚書の交換が行われた。

■バスと連携で他地区への波及効果も期待

あざみ野~新百合ヶ丘間では新駅4駅(既設のあざみ野駅を除く)を設置する予定。うち3駅は「嶮山付近」「すすき野付近」と「新百合ヶ丘駅南口付近」を駅予定エリアとしており、「すすき野付近」~「新百合ヶ丘駅南口付近」間の概略ルートとして「東側ルート」「中央ルート」「西側ルート」の3案が示されている。3案とも費用対効果や事業採算性が認められた実現可能な案であり、中でも「中央ルート」は所要時間や輸送人員などにおいて最も高い効果の見込める案となっている。

  • あざみ野~新百合ヶ丘間延伸の概略ルート・駅位置図

ただし、川崎市側のまちづくりや地域交通に関する視点から検討を行い、総合的に評価した結果、両市とも「ヨネッティー王禅寺付近」に中間駅を設置する「東側ルート」を有力ルート案と考えているという。多方面に向かうバス路線が整っているため、中間駅を設置しても既存バス路線との重複による影響が比較的小さいと考えられること、他案と比べて既存の駅から中間駅までの直線距離が離れており(新百合ヶ丘駅から約1.9km)、中間駅の周辺まちづくりの効果だけでなく、バス路線等との連携による他地区へのアクセス性・利便性向上といった波及効果も期待できることなどを理由に挙げていた。

「東側ルート」を採用した場合、あざみ野~新百合ヶ丘間の整備延長は6.5km、概算事業費は1,720億円となり、同区間の所要時間約10分、1日あたりの輸送人員7.9万人。費用便益比(B/C)は「1.53」、累積損益欠損解消年は「28年」、累積資金不足解消年は「34年」とされている。なお、現時点の有力ルート案は「東側ルート」だが、検討を重ねる中でルート等が変更される場合もあるとのこと。ルートについては市民へ情報提供も行い、市民の意見も聞きつつ、2019年度中をめどに1案を選定する予定となっている。

■横浜市北部・川崎市北部から東京都心の新ルートに

あざみ野~新百合ヶ丘間延伸の整備効果として、横浜・新横浜都心および港北ニュータウンから新百合ヶ丘方面を結ぶ広域的な鉄道ネットワークが形成されるとともに、川崎市北部・多摩地区から東海道新幹線と接続する新横浜駅へのアクセス機能強化、新駅設置による周辺まちづくりの活性化と交通結節機能強化などが期待されている。

移動時間も短縮され、新百合ヶ丘駅~あざみ野間は現行の路線バス利用で約30分に対し、ブルーライン延伸後は約10分(約20分短縮)。新百合ヶ丘~新横浜間は小田急線・JR横浜線経由で約35分に対し、ブルーライン延伸後は乗換えなし、約27分(約8分短縮)で結ばれるという。

  • 共同記者会見に出席した横浜市の林文子市長(写真左)、川崎市の福田紀彦市長(同右)。両市が相互に協力し、早期開業をめざすことを目的として、覚書の交換も行われた

共同記者会見にて、横浜市の林市長はあざみ野~新百合ヶ丘間延伸の事業化を受け、「横浜市北部をはじめ、住民の方々から強い期待が寄せられています。市北部の交通が充実するだけでなく、新百合ヶ丘駅から小田急線にアクセスすることで、新宿など東京都心への新たなルートが誕生します」と説明。あざみ野駅で接続する東急田園都市線にも触れ、「田園都市線の混雑が大変な状況だけに、(ブルーラインから)小田急線を使って新宿方面に通勤する方もいると思いますし、より便利になるのでは」と話した。

川崎市の福田市長は、あざみ野~新百合ヶ丘間延伸について「議会や市民の関心も高く、川崎市にとってもメリットとなるように、横浜市と連携し、検討してきたところです」と説明。新百合ヶ丘駅から新横浜・横浜方面へ直結することで、「広域拠点である新百合ヶ丘駅周辺地区において、質の高い魅力あるまちづくりにも寄与するものと考えています」「川崎市北部のみならず、首都圏の鉄道ネットワークも大きく動き出すことになります。広域な鉄道網の整備という点でも、非常に意義あるものだと思います」と述べた。

両市は今後、国や関係者との協議・調整を進めるとともに、鉄道事業法や都市計画、環境影響評価などの手続きを経て、早期の事業着手をめざす。延伸区間であるあざみ野~新百合ヶ丘間は2030年(交通政策審議会答申の目標年次)開業を目標としている。