あなたは「chay」というシンガーソングライターに、どのようなイメージを抱いているだろうか。2012年にロッテ・ガーナミルクチョコレートのCMソングに起用された「はじめての気持ち」でメジャーデビューを飾り、2013年から2014年に出演したフジテレビ系リアリティ番組『テラスハウス』で一気に知名度を上げた。2015年には月9ドラマ『デート~恋とはどんなものかしら~』の主題歌「あなたに恋をしてみました」が50万ダウンロードを突破するヒット。「彗星のごとく」現れ、「順風満帆」で歩んできたようにも思われるが、デビュー前から振り返っていくと彼女の苦労人としての姿が浮かび上がる。
幼少の頃から「歌手になる」と言い続け、大学では周囲に目をくれることなく、音楽塾でのスパルタ授業とギターの練習に没頭した。誰かに歌声を届けたい。その一心で臨んだ路上ライブでは誰も立ち止まってくれず、悔し涙を流しながら帰ることもあった。念願のライブでは、観客が母親一人だったことも。それでも、chayは歌手になること、歌手で居続けることを諦めなかった。その原動力とは一体何なのか。そして、見つめる先にあるものとは。“あなたの知らない”chayに迫る。
MVで「したたかな女性」熱演
――12月5日にリリースされた新曲「あなたの知らない私たち」は、木村佳乃さん主演ドラマ『あなたには渡さない』(テレビ朝日系 毎週土曜23:15~ 12月22日最終回)の主題歌に採用されています。ドラマ観ていますが……かなり過激な内容ですね(笑)。
本当にすごいですよね。毎回観るたびに、驚きの展開です(笑)。主題歌のお話があった時、スタッフさんから「誰かと歌いませんか?」というご提案があって。過去にはRIP SLYMEさんの「JUMP with chay」という曲でご一緒させて頂いたことはありましたが、自分のシングルでどなたかとご一緒することは初めてです。そういう考えはそもそもなかったのですが、デビュー5周年を終えて6周年を迎える中で、「新しいことに挑戦したい」という意欲と、音楽の幅や視野を広げる良いきっかけになればと思いました。
――数あるアーティストの中から選ぶのも大変そうですね。Crystal Kayさんはどのような経緯で決まったのでしょうか。
Crystal Kayさんのことはずっと大好きで、フェスやイベント、歌番組でお会いするたびに「何かでご一緒したい」と思っていて、ダメ元でお願いしたところ引き受けてくださいました。今回のドラマの内容は、私が今まで書いてきたピュアなラブソングとは真逆の世界観だったので、大人の魅力を兼ね備えた方で、女性二人で愛憎劇を表現できる方を……ということでCrystal Kayさんしかいないと。
――ご本人はどのような反応でしたか?
ジャケット撮影、レコーディング、PV撮影と怒涛の流れだったので、取材の機会にたくさんお話させていただいて、お互いお酒好きだということも分かったので、連絡先を交換して今度飲みに行く約束をしました(笑)。LINEやインスタでもやりとりさせていただいています。
――PVではダンスにも初挑戦されたそうですね。
踊りが苦手なので抵抗はあったのですが(笑)。撮影当日に振り付けをしていただいたので、覚えて踊っての繰り返し。もちろん、Crystal Kayさんはお上手ですから、迷惑をかけないように必死で……途中泣きそうになるくらいピンチでした。そんな中で、自然とそれぞれ演じる女性像が浮かび上がってきて。Crystal Kayさんは「意思堅固な強い女性」、私は「したたかな女性」をイメージして。キャラクターが違う女性同士の“バトル”が表現されています。
――確かに近寄りがたい雰囲気もありました(笑)。レコーディングはどのような流れで?
同じ日の収録で、レコーディングの前には隣りで一緒に歌いました。すごく夢のような時間で、本当に幸せでした。コラボレーションが初めてというのもあって、実際に歌声を重ねてみないとどういう化学反応が起きるのか分かりません。でも、レコーディングで実際に重ね合わせてみた時、相性の良さを感じることができて、Crystal Kayさんにお願いしてよかったと心の底から思いました。「本当に良い曲ができたね」と言ってくださって、うれしかったです。12月25日のクリスマスライブが初披露になります。フリもありますし……どうしましょう(笑)。息つく暇がないくらいハードな歌で、その上動きまでハード。でも、がんばります!
支えとなる曲を作りたい
――楽しみです! chayさんは常々、「アップデート」を意識されていますよね。今回のコラボはかなり重要な位置づけになりそうですね。
そうですね。今年で28歳になったのですが、こういう大人な雰囲気の楽曲に興味がありました。もちろん、歌詞やドラマのような体験はしたことありませんが(笑)。いろんな方のお力をお借りしながら、視野を広げるきっかけをいただいたと実感しています。
――創作は時代や年齢、経験などによって変化していくと思います。楽曲作りにおける変化はありましたか?
確かに変化しています。自分で書く時は、今しか書けないこと、その時その時に感じたことを大事にしていて。例えば「nineteen」という曲は、18歳でも20歳でもなく、19歳の当時だったからこそ書けた歌。年齢を重ねていくと感じることも環境もどんどん変わっていくので、その瞬間を切り取っていきたい。同世代のファンの方が多いのですが、一緒に歩んでいるような気がして、デビュー当時に学生だった方が就職、結婚して、お子さんと一緒に来てくださると「歩み」だけじゃなくて、ともに成長しているような感覚になります。その時々で、みなさんの支えとなる曲を作っていきたいです。