望んで二日酔いになりたい人はいないため、日ごろから飲む機会が多くなりがちな人が知りたいのは「いかにして二日酔いを防ぐか」だろう。以下に二日酔い予防のポイントをまとめたので参考にしてほしい。

(1)毎日の食事におけるアミノ酸&ビタミン摂取

「もともとの肝臓の状態をよくしておくため、週2~3日は休肝日を設けて肝細胞の修復および機能改善に努めましょう。併せてアミノ酸やビタミンを毎日の食事から適量かつ積極的に摂ることが大切です」

(2)飲みの場では積極的に水分補給

「二日酔いには脱水も関与してきます。肝血流や肝代謝をよくするために水分は重要ですので、しっかりと水分摂取をしておきましょう。飲酒時にも水分摂取を積極的に行うようにしましょう」

(3)飲酒前の固形物摂取

「胃粘膜障害を予防するために胃薬を事前に飲むという手段もあります。また、空腹時にアルコール摂取すると胃粘膜障害を起こしやすいため、飲酒前に胃の中に何か入れておくのもいいですね。ただし、塩分や油分が豊富ですと胃粘膜や胃の活動に負担をかけるのであまりおすすめしないです」

もちろん、この(1)~(3)の予防策は「適切なアルコール量」を飲んでいることを前提として記している。人によってアルコール分解能力は異なるが、飲酒量が増えるほど二日酔いのリスクが高まるのは自明の理。「アルコール摂取量のコントロール」こそが最大の二日酔い予防法だと心にとめておこう。

二日酔い時におすすめの飲食物とは

会社員ならば上司や会社への不満とともについ深酒をしてしまう日もあるだろう。また、元々アルコールに極端に弱い体質の人も付き合いでお酒を飲む機会もあるかもしれない。これらのケースでは、上記の(1)~(3)の予防をしっかりとしていたとしても、二日酔いになってしまうことも十分に考えられる。

そのような際は、どれだけ早く二日酔いに伴う諸症状を緩和できるかが重要になってくる。小林医師は、まず着手してほしい対処法として「水分補給」をあげた。

「二日酔いになってしまった際には、まずは脱水の改善を図ることがメインになります。水だけでなく、電解質の補正となる経口補水液やスポーツドリンクが有効ですね。ただし、スポーツドリンクは糖分が多い製品もあり、糖尿病などの基礎疾患がある人は注意が必要です。しかしながら、アルコール摂取後には糖分も欠乏しているため、糖分の摂取も重要になってきます。ご自身の身体の状態に合わせて対応してください」

水分を体に取りこんだら、次は食事で栄養面をカバーしよう。二日酔い時は胃腸の消化機能が低下している可能性があるため、ゼリーやおかゆなどの消化しやすいものがおすすめだという。そのうえで、これらの一品ものの食事では欠乏しがちなビタミンと、肝臓保護の観点からアミノ酸を摂取するとよいとのこと。

「アミノ酸についてはアルギニンやアラニン、グルタミン、オルニチンが肝臓の機能を良くすると言われています。特にアラニンとグルタミンの2つはアルコール代謝時に特に重要なので、それが含まれているサプリメントやドリンクを摂取するのもいいですね」

アルギニンが多く含まれているのは湯葉やかつお節、豆腐、大豆、ごま、えびなどで、アラニンは肉(豚肉、鶏胸肉)や魚(いわし、さば、かつおなど)に多く含まれているという。グルタミンは肉や魚、卵、大豆などに含まれているが熱に弱いため、生での摂取が好ましい。オルニチンはしじみやひらめ、まぐろ、チーズ、えのきに多く含有されている。

「アラニンとオルニチンを一緒に摂取できるのは牡蠣やあさり、しじみなどです。二日酔い時にどんなものを身体が欲するかということですが、しじみ汁は昔から有名ではありますね」

そしてビタミンについては、ビタミンB1およびビタミンCがアルコール代謝には大切とされている。ビタミンB1は豚肉やうなぎ、玄米に、ビタミンCは果物と野菜に多く含まれている。お酒を飲んだ日の翌日には、これらの食材を意識的に食べるとよいだろう。

可能ならば連日の飲酒は避けるように

年末年始はどうしても飲み会が増えがちだが、小林医師は「肝機能改善を進めるため、肝血流が多くなるように休養を取ることも大切です。無理はせず、連日のアルコール摂取は控えた方がいいでしょう」とアドバイスを送る。

忘年会が連日続くようなケースも出てくだろうが、そのような際は「一回あたりの飲酒量をセーブする」「二次会には参加しない」などの工夫を凝らし、肝臓にかける負担を極力抑えながらお酒と付き合うことが重要。そして、何も予定がない日は「宅飲み」や「チョイ飲み」をすることなく、しっかりと休肝を心がけるようにしよう。

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取材協力: 小林奈々(コバヤシ・ナナ)

消化器科、消化器外科、外科医 クリニックでは専門である消化器疾患、痔を含め全般的な内科疾患の診療に従事。週2回の病院勤務では消化器疾患の手術を行いながら、消化器疾患中心の外来診療に携わっております。 このほか予防医学、早期発見早期治療の重要さを伝えるべく講演や新聞、雑誌などへのコラム掲載を行っております。患者さんを第一に考え、患者さんの目線にたちながら、常に笑顔で、女性外科医だから行える気くばりと柔らかさのある診療を行うべく日夜励んでおります。 En女医会所属。さくら総合病院、自由が丘メディカルプラザ勤務。

En女医会とは
En女医会は150人以上の女性医師(医科・歯科)が参加している会。さまざまな形でボランティア活動を行うことによって、女性の意識の向上と社会貢献の実現を目指している。会員が持つ医療知識や経験を活かして商品開発を行い、利益の一部を社会貢献に使用。また、健康や美容についてより良い情報を発信し、医療分野での啓発活動を積極的に行う。