俳優の高橋一生が主演するカンテレ・フジテレビ系ドラマ『僕らは奇跡でできている』(毎週火曜21:00~)の脚本を手がける橋部敦子氏がこのほど、都内のスタジオで取材に応じ、執筆にあたっての心境を打ち明けた。

  • 高橋一生(左)と榮倉奈々=『僕らは奇跡でできている』12月4日放送の第9話より(カンテレ提供)

一生さんにやっていただけるから大丈夫

このドラマの主人公・相河一輝(高橋)は、動物行動学を教える大学講師。自分の好きなことになると、他のことには目もくれず没頭する性格で、時に周囲を困らせることもあるというキャラクターだが、そんな彼が周囲に変化をもたらしていく姿を描いていく。

11月19日に行われたドラマ発のライブイベント『僕らはドラマと音楽と奇跡でできている体感ライブ』の開演前、高橋は今回の役柄について「僕と限りなく近くて、台本で自分の分析されているみたい」と話していたが、橋部氏は「意図的に一生さんに寄せたわけではないんです」という。

ただ、「一生さんのことは画面を通してしか存じ上げてないですし、今回もちゃんとお話させていただいたのは1回だけで、どんな方かは分からないんです」と前置きした上で、「雑誌のインタビューの印象などでの私の本当に勝手なイメージで、ものすごく抽象的な言い方なんですけど、一輝も一生さんも“地球人のふりをした宇宙人”なんですよ(笑)」と共通点を表現。その理由は「俯瞰(ふかん)したものの見方もできるし、ものすごく興味があることにのめり込むような視点も持ってらっしゃる」からだといい、「そういうところが一輝と通じるんじゃないかなと思いました」と話す。

橋部敦子氏

一輝という役は「かなり難しい役だと思うんです」というが、そうした共通点があるだけに、「一生さんにやっていただけるから、このキャラクターは大丈夫だと思ったのは確かです」と、信頼を寄せてセリフをつむいでいったそうだ。

この「一輝」という名前の由来は「どんなに真っ暗闇でも、必ず小さな光はどこかにあって、それを拡大して自分の世界を作るというイメージ」とのこと。榮倉奈々が演じる、一輝に徐々に心を動かされていく「育実」については、「このドラマの中で、変化を一番分かりやすく見せてくれる役割。自分を育むという意図で名前をつけました」と明かしてくれた。

熊野事務長にどうしても言わせたかったひと言

今回の作品は、橋部氏と豊福陽子プロデューサーが初対面した際、意気投合したことが企画の発端だ。橋部氏は「『社会で一見調和を乱すような存在だけれども、ある見方によってその人自身が内なる調和の一番取れている人というような見え方がする話を作りたい』と言われたとき、『それそれそれ!』ってなったことを覚えてます(笑)」と回想。ほとんどのドラマは、企画が固まった段階で脚本のオファーが来るそうだが、「側じゃなくて、本当に“タネ”の部分で共鳴し合えたというのは、本当に感動しました」と振り返る。

それでも、「実際にどういうものになるのか、最初は全く分からなかったので、(脚本を書き)始めた頃も冒険していると思ってたんですけど、今になってチャレンジしたことの大きさをより感じています」と再確認。その上で、「でき上がったものを見て、本当に細部まで思いを込めて作ってらっしゃるのが伝わってきたので、役者さんが表現できる場をスタッフの皆さんが作ってくれて、視聴者の皆さんに届くものができたというのを実感しています」と手応えを話した。

そんな今作も、4日放送の第9話、11日放送の第10話で最終回となるが、「見ていただければ、必ず何かを受け取っていただける最終回になっています」と予告。さらに、「実は最終回に熊野事務長(阿南健治)にどうしても言わせたいひと言があって、そのひと言のために、1話からさんざん振ってきたので、すごい楽しみなんです。『最後のあのひと言を書くがために、私はこれを今やってるんだ』というワクワク感がすごくありました!」と興奮気味に語り、意外な人物のセリフに相当な思いを込めていたことを明かしてくれた。

  • 熊野事務長役の阿南健治(左)と樫野木准教授役の要潤

次回の第9話は、進路相談という名目で一輝と2人きりになった琴音(矢作穂香)が、ついに「つきあってほしい」と告白。当然、一輝はその申し出を断るが、ムキになった琴音は、育実のことが好きなのではないかと一輝を問い詰めるが、思いもよらない琴音の問いかけに、うまく答えることができない。そして、初めて育実に対する自分の気持ちを考えるものの、結局答えの出ない一輝は、育実に相談。すると育実は、急に一輝を意識し始めて…。