京成電鉄は23日、旧博物館動物園駅でのアートイベント開催にあたり、駅舎内部の一部を公開した。アートイベントは2019年2月24日まで週末3日間(金・土・日)開催され、上野をテーマとした展示などを実施する。

  • 旧博物館動物園駅の駅舎。11月23日から駅舎内部が一般公開された

旧博物館動物園駅は1933(昭和8)年12月に開業し、東京国立博物館や上野動物園の最寄り駅として利用されてきたが、利用者減少などにより1997(平成9)年に営業休止、2004年に廃止となった。その後も駅舎・ホームは当時の姿で残され、駅舎内外における西洋風の荘厳な意匠が特徴で、鉄道施設では初という「東京都選定歴史的建造物」に選定されている。今年7月以降、駅舎の改修工事が行われ、東京藝術大学美術学長の日比野克彦氏がデザインを手がけた駅舎出入口扉を新設した。

今回のアートイベントは京成電鉄と東京藝術大学が協働し、歴史的建造物を活用したインスタレーション作品を展示。演出を担当する羊屋白玉氏が、上野でのリサーチをもとにオリジナルストーリー「アナウサギを追いかけて」を書き下ろし、舞台美術を手がけるサカタアキコ氏が空間を構成した。

出入口扉から駅舎内部へ入ると、まず目に入るのが地下へ潜る巨大なアナウサギのオブジェ。旧博物館動物園駅の周辺は上野の山にあったため、地下3.3m付近を掘って建設されており、アナウサギも地中に穴を掘って営巣するという共通点を持つ。駅舎内部の階段では、駅の歴史に関するスライド上映が行われ、営業休止前に撮影されたホーム・駅舎の写真も見ることができる。階段の壁などに落書きやメッセージも見られるが、これらは駅が営業していた当時の様子を伝える意図もあり、あえて一部を残したものだという。

  • 駅舎内部では巨大なアナウサギのオブジェが出迎える

  • 階段では駅の歴史をスライド上映。壁に落書きやメッセージが残されている

駅舎内では昔の京成電鉄のCMソング「グングン京成」をもとにした音楽が所々に配置されたきのこのスピーカーから流れ、かつての出札口付近では「きのこの絵本」の展示も。その先には、国立科学博物館の研究員である森健人氏が手がけた動物の骨格標本3Dプリントレプリカが複数置かれてあり、実際に触ることも可能だった。上野動物園で飼育されたジャイアントパンダ「ホアンホアン」(1997年死去)の頭蓋骨模型も展示されている。

ホームへ降りる階段の手前にガラス扉が設置され、今回の一般公開ではここから先への入場は不可とされている。ただし、ガラス扉からきっぷうりばや改札口周辺の様子が見え、京成本線を走る列車の走行音も聞ける。扉付近には白ペンが置かれ、来場者はガラス部分にメッセージを書くことができる。

  • ジャイアントパンダ「ホアンホアン」の頭蓋骨模型も展示。周囲の骨格標本3Dプリンタレプリカの中に「ホアンホアン」のレプリカも

  • メッセージも書けるガラス扉。その向こうにきっぷうりばや改札口も見える

旧博物館動物園駅の駅舎内部を一般公開するアートイベントは2月24日まで毎週金・土・日曜日(12月28~30日は除く)に開催され、各日とも開場時間は11~16時、最終入場は15時30分までとなる。入場無料だが通常時は定員制、混雑時は入替制となる。目の見えない・見えにくい人向けの「触れる鑑賞ツアー」がすべての公開日において実施されるほか、車いす利用者向けの鑑賞案内も毎週金曜日13時から行われるとのこと。

なお、11月24日には関連イベントとして、上野公園野外ステージにて「旧博物館動物園駅の公開トーク」を開催。日比野克彦氏が司会を務め、羊屋白玉氏、サカタアキコ氏、森健人氏らが登壇予定となっている。

  • 旧博物館動物園駅の駅舎内部と外観。新設された出入口扉は上野エリアの9つの文化・芸術施設をモチーフに、日比野克彦氏がデザインを手がけた