2019年4月から放送が開始される、TVアニメ『さらざんまい』のスペシャルステージが11月4日、「アニメイトガールズフェスティバル2018」内で行われた。『さらざんまい』は、『少女革命ウテナ』や『輪るピングドラム』、『ユリ熊嵐』などのヒット作を手がけてきた幾原邦彦監督による新作アニメ。謎に包まれた幾原監督の最新作は、放映開始5ヶ月前にもかかわらず注目度が高く、多くのファンが池袋サンシャインシティの噴水広場に詰めかけた。

  • 『さらざんまい』スペシャルステージ

この日登壇したのは、幾原監督、そして作品に登場するキャラクター、ケッピを演じる諏訪部順一だ。

諏訪部は、すでに『ユリ熊嵐』で幾原作品への出演経験がある。他の作品の現場との違いは、幾原監督自らがアフレコの前説からディレクションまでを行うところだそう。幾原作品はあまりに個性的なため、脚本を読むだけでは理解しきれないところもあり、そうした部分を監督に直接聞きながら作り上げていくと、「幾原ワールド」のアフレコ現場を語った。そんな幾原が、ケッピに諏訪部をキャスティングしたのは、脚本の執筆段階からケッピが諏訪部の声で喋っていたからだそう。

  • ケッピ(CV 諏訪部順一)

ここでプロモーションビデオが上映され、初めて作品のイントロダクションが公開された。

舞台は浅草。中学2年生の矢逆一稀、久慈悠、陣内燕太の3人はある日、謎のカッパ型生命体「ケッピ」に出会い、無理やり尻子玉を奪われカッパに変身させられてしまう。「元の姿に戻りたければ"ある方法"でつながり、ゾンビの尻子玉を持ってこい」ケッピにそう告げられる3人。少年たちはつながりあい、ゾンビの尻子玉を奪うことができるのか!? 同じ頃、新星玲央と阿久津真武が勤務する交番でも何かが起ころうとしていた。

幾原曰く「尻子玉は作品のひとつの重要なモチーフ」。今まで誰も経験してことがなかった「尻子玉を抜かれた時の痛み」も作中で表現されているとのこと。

また、浅草を舞台に選んだ理由について聞かれると幾原は、実はカッパのアイデアが先にあったと明かす。「浅草の風景を見ていたら、カッパがいるんじゃないかと思えてきて。昔からの風景とモダンな風景が混在していて、隅田川が流れているところに命を感じるんです。そこで少年たちがつながりあう作品をやってみたかった」と語った。

諏訪部にとっても浅草は子どもの頃から何度も足を運んだなじみ深い街だったそうだ。先ほどのプロモーションビデオの背景に映った浅草の街並みも「見たことある風景ばっかりなので、場所の設定だけでもときめきますね」とのこと。

女性キャラクターが多い作品で知られる幾原だが、実は「男の子が出る作品をずっと作りたいと思っていた」とのことで、本作の主要キャラクターはすべて男性。ここで、主要キャラクターを演じるキャスト達からのコメントVTRが上映された。

登場したのは、矢逆一稀(やさか かずき)を演じる村瀬歩、久慈悠(くじとおい)を演じる内山昂輝、陣内燕太(じんないえんた)を演じる堀江瞬。

  • 矢逆一稀(CV 村瀬歩)

  • 久慈悠(CV 内山昂輝)

  • 陣内燕太 (CV 堀江瞬)

監督の話で印象的だったことを聞かれると、3人は口を揃えて「監督はこだわりが強い」と話す。「監督は尻子玉を抜かれる時の成分を気にする」と村瀬。演技のディレクションで、苦しい何パーセント、気持ちいい何パーセントと表現する感情の混ぜ方に細かく指示があったそう。煮詰まってくると、監督自らが実演してくれるという。

作品について村瀬は、「簡単につながれるんだけど、実際につながれているのか考えさせる作品」と話した。内山は「見ている方達も楽しみだと思いますが、僕らこそ、どんな作品に仕上がるのか今からとっても楽しみにしている」と、作品への強い期待を滲ませる。「僕自身、普段から"つながり"を意識することがなくツイッターばかりやっているんですけど……」と話し始めたのは堀江。「そういう人ほど見て欲しいです。普段見落としてしまうつながりを意識できると思います」とファンへメッセージを送った。

"つながり"は作品の大きなテーマになっており、幾原監督も「つながりが僕たちの人生の中で何を意味しているのか、それを僕らはどうしたいのかが、作品の中で語られる」と話す。「現代、つながりたい欲求と、うっとうしいという気持ちが混在しているじゃないですか。そのままつながってたら僕たちはどこにいくのか、失ってしまったらどうなるのか、つながりは必要なのかどうか。そういうのを描けたらなと」と、作品の核に触れた。

作品の大きなテーマである"つながり"のモチーフとして尻子玉があるという。幾原曰く「尻子玉を抜かれたら、糸を引くんですよ」。諏訪部も、尻子玉が抜かれるシーンについて「いい感じのシズル感があって、テレビで放送して大丈夫かなと思いました」と話し、猛烈に作品への想像をかき立てる。さらに幾原は「今までいろんな妖怪が描かれてきたけど、それらは子供騙しですよ。これが本当の、大人向けの妖怪モノです!」と大きく自信をのぞかせた。

本作は、放送前の2019年1月から幾原監督と諏訪部がパーソナリティを務めるラジオ番組『ぷれざんまい』がスタートする。本イベントでもアクセル全開でトークする幾原に、諏訪部は「僕がブレーキ踏まなきゃいけないことになるような気がしてますけど、楽しくやっていけたらなと思います」と意気込みを話した。

また、イベント当日より、作中の重要人物となる警官の新星玲央と阿久津真武による、浅草勤務日誌twitterが開設されるという。

  • 新星玲央(CV 宮野真守)

  • 阿久津真武(CV 細谷佳正)

イベントも終盤だが、まだまだ作品については語りきれない様子。幾原は「今まで誰も見たことがない諏訪部順一が見られますよ!」と豪語する。最初に「今回はNGなしで」、「限界を突破して」と話したそうで、諏訪部も監督の大きな期待に燃えたそうだ。

最後に一言ずつ、ファンにメッセージを送る。諏訪部は「この作品は元号をまたぐことになります。2つの時代を行き来する、新時代の橋渡しとなるような、新しくも懐かしい作品になると思いますので……さらざんまい!」と、某寿司店を彷彿とさせる「さらざんまいポーズ」を開発し、会場の笑いを誘った。

幾原は「スタッフが現在、鋭意製作中です。つながるってことはどういうことなのか、どこに行こうとしてるのかをみなさんと共有したいと思います。『さらざんまい』、どうぞよろしくお願いします」と話し、ステージを後にした。公開された情報から、さらに謎が深まるばかりの『さらざんまい』。2019年の4月が待ちきれない!

(C)イクニラッパー/シリコマンダーズ