3. 高プロって何??

高度プロフェッショナル制度いわゆる"高プロ"とはどういったものかを説明します。簡単に説明すると、ある一定の要件を満たした労働者については、労働時間、休憩、休日、深夜割増賃金に関する規定を適用除外とする制度です。

ポイントは何と言っても"深夜割増賃金"さえも適用除外にするということです。つまり、一般的に労働基準法第41条2号の"管理監督者"と言われる方ですら"深夜割増賃金"は適用除外とされていないことを考えると、その意味はご理解頂けるでしょう。まだまだ世の中には"名ばかり管理職問題"がくすぶっているにもかかわらず、その上を行く適用除外者を制度化したことから「残業代0法案」「高プロ反対」なんて声が多数あがったのです。

(1)高プロは誰もがなれる制度ではない

高プロはその名の通り"高度なプロフェッショナル"のみに許される制度です。つまり、誰もが希望すれば、もしくは、会社が指名すれば対象となるわけではありません。まずその業務に従事するにあたり、高度の専門知識を必要とし、従事した時間と得られる成果との関係性が低い業務に限られるのです。

具体的に想定されている業務は、(1)金融商品の開発、(2)金融商品のディーリング、(3)アナリスト、(4)コンサルタント、(5)研究開発、といったところです。ただ、現状の想定はあまりにもザックリとしすぎているので、今後、省令により規定されていくことが予想されます。

(2)高プロの年収

高プロの対象となるには、業務の専門性だけではなく、それに見合った処遇も必要とされます。それは「年収が厚生労働省の統計において算定された額の3倍を上回る程度で省令で定めた額以上であること」とされています。具体的には年収1,075万円を参考にあらためて検討され、省令で規定することになります。

(3)高プロは働かせ放題なのか?

高プロの要件には年収の他、会社には健康管理措置も求められます。まずは必ず年間104日の休日確保をしなければなりません。とりあえず「週休2日は確保せよ」ということです。

次に、この104日の休日に加えて(1)勤務間インターバル措置、(2)1月または3月の在社時間等の上限措置、(3)2週間連続の休暇確保措置、(4)臨時の健康診断、のいずれか一つを選択することになります。(1)(3)あたりを選択していれば長時間労働の抑制になるのですが、(2)(4)を選択されると、あまり労働時間抑制の効果は得られないのではないかという不安は解消されません。

高プロの対象とするには本人の同意が必要です。会社から「君も高プロにならないかい」と持ちかけられた際は、うかつに同意せず、報酬ばかり気にするのではなく、健康管理措置は何を採用しているのか等も参考にして検討するとよいでしょう。

4. 働き方はどう変わる?

「残業時間の上限規制」「年休の取得義務化」「高プロ制度の新設」を中心とした働き方改革関連法で実際の働き方はどう変わるのでしょうか?

まず、残業時間の上限規制が法制化されたことにより、「労働時間で成果を生み出す」ことはできなくなってきます。

"ジタハラ(時短ハラスメント)"なんて言葉を良く耳にするようになりましたが、これは単純に"上司によるハラスメント"で済む問題ではなく、会社は実際に時短をしないと法令違反に問われるため、より厳しく時間管理をするようになったから生まれた言葉なのです。

つまり、昔のように「終わるまで帰るな」といった残業命令もできなくなるし、「時間かけてのんびりやればいいや」といった自主的な残業もできなくなるのです。仕事ができていようがいまいが、確実に労働時間は減らさなければならないため、"限られた時間内での成果"を基準に自身の評価がされることになるということです。

特に中小企業では、今まで猶予されていた法定労働時間60時間を超える残業に対する割増賃金が2023年4月1日より施行される(125%から150%へ変更)ことや、年休の5日取得義務もあることから、より厳しく時短を求められることでしょう。

効率よく成果をあげることができなければ、評価もされないし、残業時間も限られるので、結果として働き方改革関連法が施行される前よりも給与が下がってしまうことも考えられます。しっかりと評価されるためにも、積極的に自分自身の働き方改革をしていく必要があるでしょう。

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著者プロフィール: 大槻智之(おおつき ともゆき)

特定社会保険労務士/大槻経営労務管理事務所代表社員 1972年4月東京生まれ。日本最大級の社労士事務所である大槻経営労務管理事務所代表社員。株式会社オオツキM 代表取締役。OTSUKI M SINGAPORE PTE,LTD. 代表取締役。社労士事務所「大槻経営労務管理事務所」は、現在日本国内外の企業500社を顧客に持つ。また人事担当者の交流会「オオツキMクラブ」を運営し、220社(社員総数18万人)にサービスを提供する。