東武鉄道は14日、日本鉄道保存協会が静態保存し、東武博物館が譲り受け、動態保存を目的とした復元に着手する蒸気機関車C11形の搬入作業などを報道関係者らに公開した。南栗橋SL検修庫にて復元作業を行い、復元予定日は2020年冬とされている。
今回搬入された蒸気機関車C11形は全長12m65cm、全高3m90cm、動輪直径は1m52cm、水・石炭など入れていない状態での重量は約55トンとのこと。1947(昭和22)年、江若鉄道(滋賀県)の発注により日本車輌製造が製造し、江若鉄道で客車を牽引した後、1957年から雄別炭礦鉄道(北海道)、1970年から釧路開発埠頭(北海道)にて貨物列車を牽引するなど活躍した。1975(昭和50)年の廃車後、40年以上にわたり北海道で静態保存されていた。
「SL復活運転プロジェクト」(SL事業)を展開する東武鉄道は、全国の鉄道会社から支援・協力の下、JR北海道から借り受けた蒸気機関車C11形207号機が牽引する「SL大樹」を東武鬼怒川線で運転開始。2017年8月のデビュー後、今年10月末の時点で累計乗車人員が12万人を突破するなど、日光・鬼怒川エリアの活性化に貢献する列車となっている。このSL事業の目的のひとつに「鉄道産業文化遺産の保存と活用」があり、同社はSL全般の技術力を磨き上げるべく、大手私鉄では初という蒸気機関車の復元に挑戦。C11形を新たに迎え入れ、動態保存用の蒸気機関車として復元することとなった。
C11形は11月8日、陸路(トレーラー)にて北海道江別市を出発。11月9日に苫小牧港に到着し、数日待機した後、11月12日に海路(フェリー)にて本州へ出発。翌13日に大洗港に到着し、同日深夜にSL検修庫のある南栗橋車両管区へ運ばれた。報道公開ではC11形がトレーラーによりSL検修庫前へ搬入された後、運搬用のカバーが取り外され、車体が姿を現した。C11形はクレーン2台で吊り上げられ、SL検修庫前の線路へ移された。
今回搬入されたC11形の重量は約55トンだが、運搬にあたり煙突や運転台などが取り外されたため、吊り上げられた際の重量は43トンだったという。煙突や運転台などは別途搬入され、SL検修庫内で公開された。
復元にあたり、20名のメンバーからなるプロジェクトチームが結成された。チームリーダーを務める須藤和男氏は、廃車から40年以上が経過し、埃を被り、汚れや傷みも目立つC11形を前に苦笑いを浮かべる場面もあったが、「これから復活に向けて、ひとつひとつ地道にやっていきたい」「このチームは自らすすんで来た人が多く、やる気は十分。多くの方々の手助けもいただきながら、技術・技能を学んでいきたい」と語った。今後は蒸気機関車を復元した経験のある鉄道会社OB(4名)の指導も仰ぎ、年明け以降をめどに復元作業に着手するとのことだった。
なお、今回搬入されたC11形のナンバープレートには「C11 1」と記されているが、報道公開の中で「当社が今後このSLを運行するときに『C11 1』という番号で走らせるとは決まっていないため、リリース上ではこの番号は案内していません」との説明もあった。