東京急行電鉄は10日、大井町線に導入する有料座席指定サービス「Q SEAT」の車両お披露目会・試乗会を実施した。車体ラッピングを施した座席指定サービス車両(ロング・クロスシート転換車両)が公開され、試乗会として長津田~中央林間間を走行した。

  • 「Q SEAT」車両を連結した6020系がお披露目された。先頭車に有料座席指定サービス開始をPRするヘッドマークを掲出している

大井町線では今年3月、急行用の新型車両6020系がデビュー。総合車両製作所のステンレス車両「sustina S24 シリーズ」を採用し、基本設計や主要機器などの仕様はJR東日本のE235系と共通化。車両デザイン等は田園都市線の新型車両2020系とほぼ共通の設計となっている。6020系は7両編成で2編成を製造。有料座席指定サービス「Q SEAT」の導入にともない、2編成とも3号車(デハ6320形)をロング・クロスシート転換車両に置き換える。それまで3号車だった車両は改造の上、2020系の3号車に組み入れられるという。

車両お披露目会では、「Q SEAT」として運用される車両(6321)を組み入れた6020系1編成(6121~6721)の外観・車内が公開された。「Q SEAT」車両には大井町線の路線カラーでもあるオレンジの車体ラッピングが施され、「Q SEAT」のロゴマークもデザイン。先頭車には有料座席指定サービスの導入をPRするヘッドマークも掲げられた。

  • 「Q SEAT」車両(6321)はオレンジの車体ラッピングが施され、ロゴマークも入った

  • ロングシート・クロスシートに転換可能な座席を備えた「Q SEAT」車両の車内。クロスシートの肘掛に座席回転レバーも

車内の座席数は計45席。ドア間の36席が横4列(2列+2列)のクロスシートに転換可能。車端部の9席がロングシートで、2号車側に車いす・ベビーカースペース(腰当付き)も設けられている。クロスシートの肘掛の後方に座席回転レバーが取り付けられ、座席の向きを変えることも可能。クロスシート時に利用できるカップホルダーに加え、ロングシート部も含む各座席に電源コンセントを配置している。車内Wi-Fiサービスも無料で利用可能。夜間の乗車時にあたたかみを感じられる電球色の室内LED照明も採用した。

車両お披露目会に続いて試乗会が行われ、「Q SEAT」車両を連結した6020系が田園都市線長津田~中央林間間を往復した。6020系では環境面を考慮して低騒音化が進められており、「Q SEAT」車両も電動車ながら車内の静粛性が保たれている。オレンジのラッピングを施した「Q SEAT」車両の外観は目立つようで、ホームから興味深そうに車両を眺める駅利用者の姿も。試乗会を終えて長津田検車区に戻った後、「Q SEAT」車両のクロスシートからロングシートへの転換シーンなどが公開された。

「Q SEAT」車両を連結した6020系は11月中旬からロングシートで通常の営業運転を開始。12月14日以降、平日夜の大井町発長津田行の急行5本において有料座席指定サービスを開始する。大井町駅の発車時刻は19時30分(191号)・20時30分(201号)・21時20分(211号)・22時27分(221号)・23時9分(231号)。この時間帯のおもな運用として、長津田駅到着後に回送列車となって途中の溝の口駅まで折り返し、溝の口駅から従来の急行(有料座席指定サービスなし)として大井町駅まで営業運転を行い、大井町駅から再び有料座席指定サービスを行う急行となって運行する予定との説明もあった。

有料座席指定サービスの導入にあたり、大井町駅・旗の台駅・大岡山駅・自由が丘駅は乗降可能駅、二子玉川駅・溝の口駅・鷺沼駅は降車専用駅、たまプラーザ駅・あざみ野駅・青葉台駅はフリー乗降駅とされ、有料座席指定サービス区間(大井町~たまプラーザ間)で3号車「Q SEAT」車両に乗車する際、運賃の他に指定料金400円(均一料金)が必要となる。なお、有料座席指定サービスを実施しない運行では、従来の急行と同様、「Q SEAT」車両も指定料金なしで誰でも利用できるとのことだった。

  • 「Q SEAT」車両(3号車)を連結した6020系の車内・外観など。隣に並ぶ2020系の3号車(2326)が、かつて6020系の3号車だったという