「イタメシ」と聞いたら、そりゃあ誰もがイタリアンレストランを想像する。ところが、2018年10月1日に五反田・目黒川近くにオープンしたITA MESHI」は、たんなる『イタメシ』にあらず。果たしてどういうことなのか? 早速お店に行ってみた。

  • 「ITA MESHI」はイタリアンと和食の融合エンターテイメントだった

    かなり風格を感じさせる和な暖簾がまぶしい

五反田駅を降りて、徒歩5分ほど。目黒川のほど近くに白くて大きな暖簾が下がった風格あるお店が。暖簾をくぐってみると、そこにはオシャレで洗練された空間が広がっていた。

「ITA MESHI」は、2年連続で「ビブグルマン」に選ばれたイタリアンシェフの岡崎さんと、和食の名店 「目黒 太」で料理長を務めた清水さんのお2人が腕をふるうイタリアン&和食のフュージョン料理が楽しめるお店。店名には「イタリアンと板前の技の融合」という意味が込められているそうだ。なるほど、それで入り口は和食屋さん風だけど中は洋風なわけだ。

ネーミングも味も秀逸な料理たち

料理は4,000円と6,000円のコースが用意されている(すべて税別)。さて、イタリアンと和食のフュージョン料理とはいったい? と思いつつカウンターに座ると、最初に出てきたメニューが「P.P.A.P」。

  • パイナップル、パクチー、甘えび、プロシュートで「P.P.A.P」。メニュー名ありきでちゃんと美味しいのがすごい

ん? 何それ。ピコ太郎にあやかった何かなのだろうか。見た目は透明なスプーンにハムが乗った洒落たワンスプーン料理だけど……食べてみて判明。パイナップル、パクチー、甘えび、プロシュート。それぞれの頭文字をアルファベットで合わせて「P.P.A.P」。

なるほど! 「もしかして面倒くさい店なのか!?」と一瞬警戒してしまったものの、一口でパクっと食べてみたら、何しろ美味しい。美味さは正義だ。

ペアリングで頼んだ「自家製モスコミュール」(税別830円)でグビッと喉を潤して、続いての「目黒川と桜」をいただいた。

  • 目黒川の名物である桜の枝を模してデザインされた敷物はこの店にしかない特注品

こちらは、目黒川のほとりに店を構えたということで、目黒川の名物である桜の枝を模して八寸(24cm)サイズでデザインされた特注の敷物の上に、お豆腐に見立てたパンナコッタ、目黒といえば秋刀魚ということで、下にマスカルポーネを置いた秋刀魚の切り身、そして秋の味覚、柿のモスタルダに鴨肉を合わせたものがのる。

パンナコッタといえばバブル期に大ブームになったデザートのイメージがあるけど、このパンナコッタは甘くない。でも食感は間違いなくパンナコッタだ。豆腐に見立てて作るあたりにイタリアンと和食の融合を感じることができる。

サプライズが詰まった品々に興味津々

次のメニューを見ると、お品書きには「酢豚」と書いてある。ここでいきなり中華!? と思いきや、やっぱり出てきた料理は普通の酢豚じゃなかった。どこからどう見ても、これまでの人生で酢豚だと信じてきた食べ物とは似ても似つかないこのビジュアル。

  • これが酢豚とは誰も気がつくまい……

どちらといえば、寿司。そう、肉寿司に見える。「バルサミコ酢で作った酢飯に、グアンチャーレという豚のほほ肉で作ったハムをのせています」とのこと。う~ん、頭が混乱中。もしかして、添えられてるガリに見えるこれもガリじゃないのか!? 「いや、それはガリです(笑)」。なんだ、そうなんだ。すっかりシェフの世界観に翻弄されつつ、いざ酢豚を食べてみると、脂が乗った豚肉が鮮烈な酢飯と合っていて旨い。これはまさにこの店ならではの「酢豚」だ。

お茶の心得があると思われたのかと慌ててしまったお椀の「縁+平和」は抹茶風に見えてグリーンピースのスープで(グリーンとピースをかけて緑と平和)、添え物の「交響食第一パン パパパパーン 笑って ハイチーズ!!」は炭に見立てたパンといった具合に、「ITA MESHI」さん、とにかく「見立てる」のが好き! しかもどれもネーミングだけじゃなく手のこんだ料理なので、楽しみながら食事ができてどんどんお酒も進んでしまいそうだ。

  • 結構なお点前で。とか言いたくなるのは当然のビジュアル。でも抹茶じゃないんだなあ

実際「本日のお刺身三点盛り」をいただきながら、ひやおろし 純米大吟醸「尾瀬の雪どけ」が進む進む。コースには、プラス3,000円で7杯のドリンクのペアリングが用意されているので、料理に合わせたお酒も堪能できるのが嬉しい。

  • お刺身に合う日本酒ひやおろし「尾瀬の雪どけ」

シメもスイーツも味は申し分なし

さて、料理の方はまだまだ続く。焼物「カルボナーラ米と自由自由」はカルボナーラ風リゾットと牛肉が一皿に盛られた一品。

  • 1番人気の「カルボナーラ米と自由自由」

チーズに隠された卵黄を崩して合わせ、肉に巻いて食べてみるとまったり濃厚なチーズのコクが赤身肉の旨味と一体になってたまらない。黒胡椒の粒を一緒に食べると、ピリッとよいアクセントになってなお美味しい。牛肉は山形の「雪降り和牛」のみを使用しているそうだ。これは結構、お腹にたまるぞ。

そんなジワジワと満腹に近づいてきたところで「ボディブロー」なる料理が。なんと、ダチョウのレバーだ。初めて食べたけど、少しコリっと歯応えがあって味が濃い! こちらはボクシングで呼ぶところのレバー(肝臓)打ちをもじっているようだ。シェフが全部メニュー名の由来を説明してくれるのが面白い。ネタばらしするときのシェフの顔がめちゃくちゃ嬉しそうで悔しい~!

  • ダチョウのレバーって食べたことある! ?

そして、ここに来て一番のお気に入りができた。それが、「元祖 フォアグラトマト」。魚介をトマトで煮込み、具をミンチにしてリゾットを作りフォアグラとともに加えたもの。トマトのまろやかな酸味とフォアグラのコクが好対照で、リゾットの香ばしさとマッチして口の中で楽しさ倍増。赤ワインを合わせていただけば、幸せな気分になること間違いなし。

  • 「元祖 フォアグラトマト」ぶっちゃけ一番お気に入り!

「元祖 フォアグラトマト」はお店の2番人気(1番人気は「カルボナーラ米と自由自由」とのこと)だそうだが、筆者的にはこの料理が一番好きだった。

シメのご飯ものは日替わりで2種類から選べるようになっており、「魯肉飯」をチョイス。何故ここで台湾料理が? と思ったら、ご飯の代わりにパスタで出来ていた。「ご飯でやると台湾料理になっちゃうので、パスタで辛うじてイタリアンにしました」とシェフ。そもそもの発想が他の料理人と違うなあ。食べてみたら、さすがに八角の香りがアジアンテイストを濃厚にしているものの、パスタもありだ。食の異文化交流がここに極まった感じで不思議な説得力のある味だった。

いや~、ボリュームたっぷりでお腹いっぱいです。ごちそうさまでした! あ、まだデザートが残っていた。最後にさっぱりといただきましょうか。ん? これ、卵焼きじゃないんですか? 頼んでないですけど……。

  • 結構甘めの卵焼きっていえばそのままわからないかもしれないけど、これ「プリン」です

「卵焼きに見立てた、プリンです」

プリンか~い! これ、どう見ても卵焼き。クオリティが高すぎてもはや冗談にしか聞こえないところがすごい。しかもこれまた美味。最後の最後まで、シェフが繰り広げる料理ショーの中で美味しい料理を食べながら楽しませてもらった1時間半だった。メニューは時期を見て変えていくそうなので、常連になっても飽きることなく通えそう。会社の仲間と気楽に足を運んでエンタメ感満載な料理の世界に浸ってみてはいかが?

●information
「ITA MESHI(イタメシ)」
東京都品川区西五反田2-25-4 1F
営業時間:16~24時(日曜は16~22時)
定休日:不定休