平成仮面ライダーシリーズ20作を記念した『仮面ライダージオウ』では、"王様になる"という稀有壮大な夢を持つ高校生・常磐ソウゴ(演:奥野壮)が、50年後の未来から来た仮面ライダーゲイツ/明光院ゲイツ(演:押田岳)、ツクヨミ(演:大幡しえり)と遭遇し、自分が未来において「最低最悪の魔王」オーマジオウになる運命だということを知らされた。ソウゴは謎の預言者ウォズ(演:渡邊圭祐)からジクウドライバーを受け取り、仮面ライダージオウに変身する。果たしてソウゴは未来の「魔王」になるのか、それとも運命に逆らい「最高最善の王」になるのか……。

『仮面ライダークウガ』(2000年)から『仮面ライダービルド』(2017年)まで、19の「平成仮面ライダー」が存在する"時代"を行き来するジオウの登場によって、歴代の平成仮面ライダーそれぞれに、いま改めて注目が集まっている。そして12月22日には、『平成仮面ライダー20作記念 仮面ライダー平成ジェネレーションズ FOREVER』と題されたスペシャルな映画の公開が控えている。ここからは、平成仮面ライダーシリーズ19作品を振り返る企画の第5回として、"運命"に抗い、苦悩しながら戦い続けた4人の仮面ライダーたちの凄絶な人間模様を描いた『仮面ライダー剣(ブレイド)』(2004年)をご紹介していこう。

『仮面ライダー剣』は、2004年1月25日から2005年1月23日まで、テレビ朝日系で全49話を放送した連続テレビドラマである。『仮面ライダークウガ』(2000年)、『仮面ライダーアギト』(2001年)、『仮面ライダー龍騎』(2002年)、『仮面ライダー555(ファイズ)』(2003年)と続いてきた平成仮面ライダーも5作目となり、『仮面ライダー剣』では過去の4作品を強く意識した、いわゆる「平成仮面ライダー」で好評だった要素、つまり「ストーリーに秘められた多くの"謎"」「立場の異なる複数の仮面ライダー」「人類を襲う"怪人"の背景にあるスケールの大きな設定」などを積極的に取り入れつつ、その上で数々の新機軸を盛り込んで製作が行なわれている。

本作では、仮面ライダーのデザインや、変身・戦闘に用いられるアイテムに「トランプカード」が採用され、非常にスタイリッシュなキャラクターが生み出された。仮面ライダーブレイドは「スペード」、仮面ライダーギャレンは「ダイヤ」、仮面ライダーカリスは「ハート」、仮面ライダーレンゲルは「クローバー」と、マスクにトランプマークの意匠があしらわれ、4人の仮面ライダーがそろったときの"バランスの良さ"が際立っている。

カードを戦闘に用いる仮面ライダーといえば、アドベントカードで武器を召喚する『仮面ライダー龍騎』の仮面ライダーたちが先に存在しているが、それとの差別化を図るべく、本作ならではのカードの使い方が考えられた。ブレイドの剣「ブレイラウザー」とギャレンの銃「ギャレンラウザー」には、マジシャンがトランプを扇型に広げる華麗な技(サム・ファン)を再現するべく、12枚の「ラウズカード」を扇型に展開することができるオープントレイを設定。ここから引き抜いたカードをラウザーに備わる「スラッシュリーダー」で読み込む(ラウズする)ことで必殺技が発動するなど、激しい戦闘時にも"華麗さ"を表現する工夫がなされた。

トランプというモチーフは、仮面ライダーが戦う"敵"の設定にも大きく関連づけられている。本作で人間を襲撃する"敵"として現れるのは、不死生物アンデッド。さまざまな生物の"始祖"であるアンデッドは、太古の昔より生き続ける存在であり、彼らの活動を止めるにはラウズカードに「封印」するしか方法がない。1万年前に行われたアンデッドの生き残りをかけたバトルファイトの末、52体のアンデッドは封印されたのだが、人類基盤史研究所「BOARD(ボード)」の活動が原因となって多くのアンデッドが封印から解放され、人類の脅威となった。高い知能を備えたアンデッドは人間に化身する場合もあり、その中にはタランチュラアンデッドのように戦いを好まない者も存在する。

アンデッドの総数はトランプと同じ53体(スペード、ダイヤ、ハート、クローバー各13枚+ジョーカー1枚=53枚)。本作の仮面ライダーのうちブレイドとギャレンは、これらのアンデッドをラウズカードに封印するためにBOARDが開発した「ライダーシステム」によって変身した姿なのである。

アンデッドを封印したラウズカードはそのまま各仮面ライダーたちの戦力となり、変身にも活用される。ブレイドはカブトムシ(ビートルアンデッド)、ギャレンはクワガタ(スタッグビートルアンデッド)、カリスはカマキリ(マンティスアンデッド)、レンゲルはクモ(スパイダーアンデッド)のカードで変身を行い、マスクにもそれぞれの生物の意匠があしらわれている。「敵の力を活用して戦うヒーロー」という図式は、第1作『仮面ライダー』(1971年)とも共通(仮面ライダーはもともと悪の組織ショッカーによって生み出された改造人間)する設定であり、時代の移り変わりによって設定やデザインが変化していても、本作が『仮面ライダー』の遺伝子を確かに受け継いでいることを示している。

アンデッドと戦う仮面ライダーは4人。BOARDに属する仮面ライダーで、人々を守りたいという思いの強い仮面ライダーブレイド/剣崎一真(演:椿隆之)、BOARDにおける剣崎の先輩にあたる真面目で実直な仮面ライダーギャレン/橘朔也(演:天野浩成)、ブレイドやギャレンとは別のシステムで変身する、謎めいた仮面ライダーカリス/相川始(演:森本亮治)、そして"強さ"を求める高校生・仮面ライダーレンゲル/上城睦月(演:北條隆博)である。

剣崎は"職業"として仮面ライダーになる道を選んだ男で、所属組織(BOARD)が壊滅してからも広瀬栞(演:江川有未)や白井虎太郎(演:竹材輝之助)の協力を得ながらアンデッドの存在をキャッチし、ブレイドに変身して戦いに臨む。橘は剣崎よりも戦闘経験の抱負な男だったが、潜在的な恐怖心を払拭することができず、それが身体の不調となって現れることがあった。また実直な性格ゆえに邪悪な意志を持った者の言葉に惑わされることも多く、肉体的、精神的にもボロボロになりながら戦い続けた。始は虎太郎の姉・遥香(演:山口香緒里)が経営する喫茶店「ハカランダ」に身を寄せ、遥香の娘・天音(演:梶原ひかり)からも慕われている心優しい男だが、"実は人間ではない"ことを隠している。そして、本来は仮面ライダーに対抗するために生み出されたレンゲルバックルを手にした睦月は、最強の仮面ライダーといわれるレンゲルに変身するが、精神が未熟なため、自身と融合しているスパイダーアンデッドの邪悪な意志に操られて、他の仮面ライダーを襲撃してしまうこともあった。

物語は、「アンデッドの封印を解いたのは何者か?」「カリスに変身する相川始の正体は?」「BOARD壊滅後もライダーシステムをサポートしていた元理事長・天王路博史(演:森次晃嗣)の目的とは?」といったさまざまな謎が随所にちりばめられ、その中でアンデッドから人々を守る仮面ライダーたちの激闘が展開されている。