2018年は地震や台風、酷暑、豪雨と日本各地で自然災害が相次いでいます。自然災害に遭った時、多くの人の頭を悩ませるのが「自宅の再建」です。

では自然災害の被災時には、住宅ローンを抱える人に向けてどのような制度があるのでしょうか。住宅ローンをすでに利用している人も、これから利用する人もおさえておきたいポイントをまとめました。

自然災害時の生活再建を助ける「債務整理」

豪雨に台風、地震、豪雪、土砂災害……。2018年は数多くの自然災害が日本列島を襲いました。こうなってくるとマイホーム購入のデメリットとして「自然災害で自宅が被害を被ったのに住宅ローンだけが残った」という悲劇を考える人もいるかもしれません。確かに、被災して住めなくなった住宅と新居の二重ローンを抱えての生活再建は容易ではありません。住宅ローンの返済期間は30年以上にもなるため、心配になるのは当たり前のことです。

2018年現在、こうした自然災害の影響で住宅ローンの返済が難しくなったときには、「自然災害による被災者の債務整理に関するガイドライン」にのっとり、住宅ローンの免除や減免を受けることができます。

この債務整理の特徴は大きく3つあります。1つは「登録支援専門家(※弁護士や公認会計士、税理士)」による手続きや支援が無料で受けられること。債務整理では、簡易裁判所とのやりとりが必要になりますが、この際に通常であれば発生する依頼費用が無料となるのです。

また、この債務整理は「破産」や「再生」とは異なるため、(2)財産の一部を手元に残すことができる、(3)個人信用情報として登録されずに新たな借入が可能になります。受け取った災害支援金や預貯金など、当面の生活に必要な財産を残しておけるだけでなく、何より二重ローンを抱えなくてよいので、生活再建に道筋が立てやすくなっているのです。

被災者自身がメインバンクに申請することからはじまる

この「自然災害による債務整理」を利用できるのは、「災害救助法」の適用を受けた被災者で、住宅ローンやリフォームローン、事業性ローンなどが支払えなくなった、または近い将来に支払いが難しくなることが確実な個人です。

今年の自然災害でいえば、「平成30年2月4日からの大雪による災害」「平成29年度豪雪」「平成30年大阪府北部を震源とする地震」「平成30年7月豪雨による災害」「平成30年8月30日からの大雨による災害」「平成30年北海道胆振東部地震」で被災した人が対象になります。

おぼえていてほしいのは、被災した人自身がメインバンクとなる金融機関に申し出るところから「債務整理」がスタートする点です。というのも、この制度の本格運用が開始されたのは2016年4月から。熊本地震の被災者はもちろん、2015年9月の関東・東北豪雨の被災者も適用されますが、金融機関も積極的に告知しているわけではないので、知らなかったために利用できなかった、受けられなかったという人も少なくありません。

災害時は当面の衣食住の手配や手続きに忙殺されます。慣れない生活で不安でストレスもたまることでしょう。そのときに情報を調べようと思っていても、現実的には難しいもの。住宅ローンを借り入れる前もそしてその後も、ぜひおぼえておいてください。

日本は国土の約7割が森林で、少ない平坦地と斜面を利用しながら、密集して暮らしています。こうした地形的な要因もあり、河川や海岸の近くであれば風水害、山間部であれば土砂災害、火山の噴火、平坦地でも液状化現象や大規模火災などなんらかの災害のリスクがあるといってもいいでしょう。

また、昨今の気候変動により、以前では考えられなかった場所で、短時間での豪雨や豪雪なども頻発しています。「ここは大丈夫」と考えるのではなく、その土地の特性を知り、備えることが重要になります。

最近では情報の整備が進み、ハザードマップが見られるようになりました。特に国土交通省の「重ねるハザードマップ」では、「洪水」や「津波」「土砂災害」などの種類の異なる災害のリスクを一度に知ることができます。マイホーム購入検討者はこうしたハザードマップを参考にしつつ、火災保険で備える、万一の際の制度の情報も集め、検討してみてはいかがでしょうか。

  • 回遊舎

嘉屋恭子

フリーライター。編集プロダクションなどを経て、2007年よりフリーランスで活動。 主に住まいや暮らしに関わる分野で取材・執筆を続ける。FP技能士2級取得