転職が一般的となり、社会人が自分のキャリアを考える機会が増えているようです。そこでマイナビニュースでは、元幼稚園教諭の就農者、50代で3回転職したシニア、とセカンドキャリアをテーマにした取材を行いました。

私達はどう考え、何をするべきか? ビジネスパーソンから学生・主婦・高齢者など、多くのキャリアモデルを調査し、企画の監修をつとめた神谷俊氏に話を聞きました。

  • 企業・地域で様々な人のキャリア調査を行う神谷俊氏

すべての人がセカンドキャリアを意識する

「人生100年時代といわれ、従来の老後のキャリアという意味から、セカンドキャリアは誰もが意識をする概念に変わりつつあります。つまり変化を想定し、『次』を意識した視点が求められています。反対に終身雇用や生涯同じ会社に勤務するといった、『安定』の考え方は薄まりつつあるのです」と神谷氏は言います。

――なぜすべての人がセカンドキャリアを意識した生き方を求められるようになってきたのでしょうか?

「さまざまな要因がありますが、主に4つの側面が挙げられると思います。キーワードは長寿命化、少子高齢化、情報化、そして機械化ですね」と話す神谷氏。以下、その考えを紹介します。

長寿命化と少子高齢化

平均寿命がどんどんのびてきて、人生が長くなっていることが、キャリアにさまざまな影響を及ぼしています。

ひとつの仕事をずっと続けていくわけにはいかなくなります。「人生100年時代」といわれていますが、この数十年を振り返っても平均寿命は急速な伸びをみせています。100年の人生が当たり前になる時代も到来しつつあるわけです。

100年ですから、例えば60歳で定年を迎えてもまだその先に40年間もあります。これまでの、数年間だけ働くといった認識では、当然ながら時間も体力も持て余してしまうでしょう。年齢に応じた興味や気力・体力で続けられる仕事を探さなければなりません。

またマネープランの話もあります。今までは65歳まで定年延長して働き、その後の人生20年くらいを見積もり、介護や終活費用などを考えたらよかった。しかし、人生が長くなることで、収入や支出について考え直す必要となるのです。

キャリアに与える影響という点では、両親や家族の介護という問題もあります。平均寿命が長くなれば、介護に従事する時間も長くなり得ます。例えば自分が働き盛りの中で両親や結婚していれば配偶者の両親の介護にも、エネルギーを割く必要が出てくるかもしれない。

いずれにしても、医療の発展により寿命が長くなることで、今までとは異なる人生戦略が求められ、選択肢も多様になっていくでしょう。

その中で自分の人生をどう組み立てるか。自分はどこまで働き、家族へどう貢献し、どのように自分の人生を充実させていくか。旧来のモデルにとらわれず、これらを一人ひとりが考える必要があります。

情報化

インターネットがインフラになる以前、情報の主な流れは一方通行で、センター(大手メディアなど)が配信した情報がローカル(個人)に届くという構造でした。センターが配信する情報がすべてで、そこから離れている人ほど「情報弱者」になっていくという構造でした。

しかしWEBメディアの活用が当たり前となり、センターもローカルも双方で情報発信されます。例えば、SNS情報をもとにニュースを提供されたり、SNS発言がバズって流行が生まれたりするなど、個人の発言が充分にパワーを持つ社会がやってきました。

これによって、労働市場の構造も劇的に変化しました。今まではハローワークに行ったり、求人情報雑誌を閲覧したりするなど、一方的に情報を受け取るだけでした。しかし、今の情報収集のトレンドは情報検索とWEBコミュニケーション。誰もが情報を獲得しにいける時代となり、この変化が個人のキャリアの歩みにも強い影響を与えています。

例えば転職を考えた時、簡単に転職先の情報を収集できたり、検討先の年収水準や福利厚生情報を知ったりできます。この結果労働市場は成熟し、転職や副業、起業も大きなリスクを抱えずに実践できる世の中になってきたわけです。

さらにキャリアモデルについても様々な情報が共有され、多様なキャリアの在り方も生まれました。「大手企業で昇進・昇格していく=成功・安定」といった画一化された考え方は薄れてきています。

こうして社会的なステータスの重視よりも、個人の判断や価値観でライフキャリアとビジネスキャリアをバランスさせていく「キャリアの個人化」の流れが強まってきていると思います。

機械化

今まで人間がやってきた仕事はロボティクスやAIの活用によって、幾分か負荷は軽くなるでしょう。それはビジネスだけでなく家事も同様です。人は効率的にお金を稼げるようになり、ある程度の余暇時間を手にするようになります。そうなったときに、自分は余った時間を何にどう使うのか、ということを考えておくことも求められてきます。

これまで自分の時間は主に仕事へ費やされてました。「24時間働けますか?」という企業CMがかつてあり、「起きている時間=仕事の時間」という時間認識があったのかもしれません。ストイックさやハードワークが是であるという価値観もかなり強かった。

しかし、仕事に対して注ぐ時間が減少するとき、私たちはその時間をどのように過ごすのか。どのような時間の使い方をすると人生が充実するのか、そうした考えもきっと求められてくるのだろうと思います。

  • キャリアの個人化が強まってると話す神谷氏

人生というゲームの勝ちパターンの変化

「ゲーム」という表現は少しチープですが、人生をゲームに置き換えてキャリアを解釈すると分かりやすいかもしれません。従来のゲームは、「勝ちパターン」が見えていました。いい学校に入り、いい就職をして、そこから昇進・昇格して、定年を迎えて、余生を過ごす。

若手社員の時に多様な経験を積み、成長に投資をする。するとミドルでの収入を最大化でき、貯蓄も増え、豊かな老後を送れたり子孫にお金を残せたりする。そんな勝ちパターンがありました。

これからは「どうしたら勝てるのか?」が見えにくくなります。ゲームのルールが常時変化し、前述の長寿命化、情報化、機械化といった要素が絡んで社会がどんどん変わっていきます。人生をどうコントロールしたら勝てるのかは変動的で、常に情報を収集して大きな動きを捉えながら動いていくことが求められるのです。

そもそも「自分にとって勝ちとは?」という定義すら、それぞれが考え直さなければいけないのかもしれません。ルールが変わるのに、主人公が変化しなければ、そのゲームに適応できません。

自身の「次」のキャリアに意識的になり、主体的に選択していくことが必要になると話す神谷氏。この後、具体的に「どうキャリアをみつけるのか」を解説します。