今回のテーマは、「お気遣い」と「お心遣い」です。ビジネスシーンでも使用することの多い言葉で、一見まったく同じような言葉に思えますが、実は違いがあります。本稿では例文を交えながら、それぞれの意味と違いについて解説します。

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    「お気遣い」と「お心遣い」、どう違う?

「お気遣い」「お心遣い」の意味とは

まずは、「気遣い」と「心遣い」の意味についてみてみましょう。

「気遣い」の意味は、「あれこれと気を使うこと」「よくないことが起こるおそれ。懸念」で。「お気遣い」の意味として相応しいのは前者の方です。「使う」には「頭脳・神経などを働かせる」という意味があることから、「気遣い」は「神経を使って相手に何かをしたり、発言したりすること」を言います。

一方、「心遣い」の意味は、「あれこれと気を配ること。心配り。配慮」「祝儀。心付け(贈答品やご祝儀など)」です。前者の意味は「気遣い」と非常に類似していますが、「心遣い」には「心配り」という意味があることから、「心から相手のことを思いやって、何かをしたり発言したりすること」という意味になります。

どちらも頭に丁寧語の「お」が付いていますが、自分の行動に「お」を付けることはありませんので、気を使ったり、気を配ったりしているのは相手になりますね。つまり、「お気遣い」「お心遣い」は、相手の気遣いや心遣いに対して使う丁寧表現になります。

「お気遣い」「お心遣い」の違い

非常に類似した意味を持つ両者ですが、「お気遣い」が一般的な言動とするならば、「お心遣い」はそれ以上の言動といったニュアンスがあります。

たとえば、雨の日にデパートで買い物を終えて帰る際に、店員さんが「足下に気を付けてお帰りくださいませ」と声をかけてくれるのは「お気遣い」ですが、子どもと荷物を抱えていて傘がさせないことに気付いた店員さんが、「お車までお送りします」と言って車まで傘をさしてくれたら、それは「お心遣い」と言えるでしょう。

もう一つ例をあげると、取引先を訪れた際にお茶菓子を出され、「このお茶菓子、とても美味しいですね」と言ったとします。すると、話している最中に先ほどのお茶菓子を買ってきて、手土産にと持たせてくれたとします。この場合、お茶菓子を出してもらったことは「お気遣い」ですが、手土産を用意していただいたことに対しては、「お心遣い」が正解です。ちなみに、このケースでは、「心遣い」の意味である「心配り」と「贈答品」の両方が当てはまります。

このように、「お気遣い」は一定のマナーやマニュアルの範疇にある言動であるのに対し、「お心遣い」はその範疇を超えた言動と言えるでしょう。

「お気遣い」「お心遣い」の例文

「お気遣い」

・この度はお気遣いいただき、誠にありがとうございました。
・お気遣いに感謝します。
・どうぞ、お気遣いなく。
・お気遣いなく。お気持ちだけ頂戴します。

「お気遣いなく」という表現は、相手の気遣いを断ったり、遠慮したりする場合にも用います。この一言で、「これ以上の気遣いは要りませんよ」「これで十分です」「ご心配はなさらないでください」といった気持ちを表現することができます。ちなみに、「お心遣いなく」という表現はありませんので、注意しましょう。

「お心遣い」

・お心遣いいただきまして、本当にありがとうございます。
・お心遣いいただき、大変恐縮です。ありがとうございます。
・お心遣いに感謝申し上げます。


気遣いや心遣いができるということは、ビジネスにおいて立派なスキルであり、ときに武器にもなります。単に技術や知識だけを増やすばかりではなく、自然と気遣いのできる社会人でありたいと思うと同時に、常に相手のことを思いやる姿勢を忘れずにいたいものですね。