日本デザイン振興会は3日、主催事業であるグッドデザイン賞の2018年度受賞結果を発表した。鉄道関連では、「グッドデザイン・ベスト100」に小田急電鉄「70000形特急車両 ロマンスカー GSE」などが選出された。
今年度のグッドデザイン賞は、昨年を上回る4,789件の応募の中から全1,353件が受賞。「グッドデザイン・ベスト100」の選出された100件の中から、今後さらに審査を実施し、「グッドデザイン大賞」などの特別賞を決定する予定としている。
「グッドデザイン・ベスト100」に選出された小田急電鉄「70000形特急車両 ロマンスカー GSE」は「六十年の伝統を踏まえさらに快適で上質な旅の楽しさを感じていただける優雅に走るロマンスカー」をデザインコンセプトとしており、2018年3月に就役。審査委員からは「ローズバーミリオンの色がまぶしいボディは、30年振りにフルモデルチェンジでありながら、従来のロマンスカーブランドの伝統や様式を損なうことなく新たな息吹も醸し出している」と評価されている。
流線型をカットした大胆なフロントデザイン、3次元曲面の窓部のサイズ拡張による通路逆側からの景観への配慮、丁寧な断面形状の修正、2座席1セットのシートデザイン、展望車における荷棚の撤去やピラー周りの調整による正面視野の拡張、運転席の快適性向上など、細やかな工夫で眺望・開放性・車内快適性を実現したことも評価された。
相鉄20000系、叡山電鉄「ひえい」などグッドデザイン賞に
鉄道関連ではJR東日本・東京都の「駅前広場と道路空間からなる景観(丸の内駅前広場から行幸通りに繋がる景観)」も「グッドデザイン・ベスト100」に選出された。また、鉄道車両では相模鉄道「相鉄20000系車両」、叡山電鉄「ひえい」、大阪高速鉄道「大阪モノレール3000系車両」、JR西日本「SLやまぐち号レトロ客車」、日立製作所「標準型近郊車両 AT200/ Class 385」がグッドデザイン賞を受賞している。
「相鉄20000系車両」は、創立100年を迎える相模鉄道が都心直通運転という新たなステージを前に製造した新たな通勤車両。「自動車を思わせる前面の造形は、ネイビーブルーのカラーとともに、無味乾燥になりがちな通勤車両に明確な表情を与えることに成功している」などの評価を得た。
叡山電鉄「ひえい」は、シーズンに左右されない新たな洛北エリアの観光創造をめざし、既存車両(1両編成)を改造した観光列車。「30年前製造車両のリニューアルであることを感じさせないデザインとなっている。大胆な楕円系のフロントデザインは、京都市街地を徐々に抜け、山々の緑陰に入り込んでゆく過程での豊かな『緊張感』を車内にまで持ち込んでいる」と評価された。
「大阪モノレール3000系車両」は、通勤利用だけでなくショッピングや観光などの多様な乗客のニーズに応えるという新型車両。「単なる移動手段ではなく、眺望を楽しみたいという要望を重視し、ガラス面積を大きく取った開放感のあるインテリアを実現している点が魅力的」などの評価を得た。
JR西日本「SLやまぐち号レトロ客車」は、国鉄時代の1979(昭和54)年から山口線で運行している「SLやまぐち号」の新たな客車として、旧型客車を現代の技術で再現。「現代技術を用いた昭和初期の客車復刻というコンセプトのもと、当時の素材や製法で忠実に再現したレトロな雰囲気に、現代の乗客に必要とされる空調機器やベビーカースペース、バリアフリー対応を違和感なく融和させたデザインを高く評価した」とのこと。
日立製作所「標準型近郊車両 AT200/Class 385」は、通勤などで利用される標準型近郊車両で、「Class385」という名称で納入されたスコットランドにおいて試験運転が始まっている。審査委員からは「分割併合のための貫通扉を先頭部に用意し、乗車定員確保のために運転席寸法が限られるという制約の中で、大胆な曲面を取り入れた前面形状は個性的であり、灯火類も面の流れに溶け込んでいる」などの評価を得ている。