旅行中のアクシデントでかかった費用を補償してくれる海外旅行保険は、多くのクレジットカードについています。でも、補償される範囲や上限金額はカードによってまちまち。旅先での「万が一」に役立つ1枚を選ぶには、どんなところに注目すればよいのでしょうか?

今回は、海外旅行保険が充実したクレジットカードを選ぶポイントをご紹介します。

海外旅行保険が付いたクレジットカードの選び方のポイント

カード付帯の保険は、カードを持っていれば保険の対象になりえます。基本的に別途の保険料を支払う必要もありませんので、どんな補償がついているのかよくわからない人も多いでしょう。

でも、いざ海外に行くときにはしっかり活きる補償を確保しておきたいですよね。そこで、次の3つをチェックしてみるのがおすすめです。

自動付帯かどうか

カード付帯の保険には「自動付帯」と「利用付帯」の2種類があります。カードの種類によって、保険が有効になる条件が違うのです。「自動付帯」はカードの会員であれば自動的に補償の対象になるもの。旅行中にカード払いをしなくても、あるいは旅先にカードを持っていかなくても、万が一のときには保険金を受け取れます※。

これに対して「利用付帯」は、そのカードを旅行で使わなければ保険がききません。たとえば出発前に支払う旅行代金や、空港へ向かう新幹線やバス、タクシーなどの交通費をカード払いするなどして初めて、旅行中のアクシデントを補償します。

利用付帯で保険を有効にするつもりでいながら、うっかりそのカードで払うのを忘れてしまったなんてことを防ぐには、自動付帯のカードがあると安心です。

※ただし、現地で事故に遭ったときの保険の手続きをスムーズにするためには、カードが手元にある方が便利です。

携行品損害や航空機遅延などへの補償がついているか

標準的なカードには、旅行中の病気やケガ、死亡の補償はついていますが、賠償責任を負ったとき、持ち物が壊れたり盗まれたりしたとき、飛行機が欠航したり遅延したりで空港近くのホテルに泊まった、現地の空港で手荷物が出てこなくて急きょ着替えを買ったなどのトラブルまではカバーできません。

こうしたアクシデントでかかった費用を保険で備えるには、次のような補償が含まれているカードを選びましょう。

賠償責任費用

旅行中に他人のものを壊した、人にけがをさせてしまったとき、請求された損害賠償金や被害者への応急措置費用が支払われます。

救援者費用

旅行中に死亡した、病気やケガで入院した、遭難したときに、家族が現地へ向かうためにかかった費用が支払われます。

携行品費用

旅行中に持っていたカメラやスマホなど身の回りのものが盗まれたり壊れたりしたときに、その時価が支払われます(1事故につき3,000円など自己負担が発生します)。

出航遅延費用等保険金

飛行機が欠航、運休、遅延して、一定時間内に代替便に乗れなかったときに、その間にかかった食事代が支払われます。

乗継遅延費用保険金

搭乗した飛行機の遅延によって乗り継ぎ便に乗れず、一定時間内に代替便に乗れなかったときに、その間にかかったホテルの宿泊料や食事代が支払われます。

寄託手荷物遅延費用保険金

搭乗した飛行機に預けた荷物が到着後一定時間内に受け取れなかったときに、やむをえず購入した衣類や生活必需品の費用が支払われます。

寄託手荷物紛失費用保険金

搭乗した飛行機に預けた荷物が到着後一定時間以上受け取れなかったときには紛失したとみなして、現地でやむをえず購入した衣類や生活必需品の費用が支払われます。

賠償責任や携行品損害、救援者費用は、カード会社が独自に発行するプロパーカードなら、一般向けのカードでも含まれていることが多いです。ゴールドカードになると、年会費が高めなこともあり、航空機の遅延や手荷物に関する補償もついていることがあります。

一方で、鉄道会社や家電量販店、スーパーなどの提携店が発行するクレジットカードの場合は、カードによって付帯している補償はまちまちです。死亡と病気・ケガの補償のみのものもありますし、年会費無料でも賠償責任や携行品損害までついているものもあります。同じ発行会社のカードで比べると、一般向けよりはゴールドカードのほうが付帯する補償が多い、または保険金額の上限が高い傾向があります。

カードの保険だけでカバーしたいなら、できるだけ広い補償、上限が高い保険金額を備えたものが安心でしょう。

キャッシュレスサービスや日本語デスクを使えるか

保険はいざというときに使えてこそ意味があります。現地での思わぬアクシデントで慌てずに対処しやすいサービスがついていると便利です。

それが、事故に遭ったときの対処を日本語でサポートしてくれるサービスです。現地の病院の案内、通訳や弁護士の紹介、日本から家族に来てもらう場合には案内、宿泊の手配をしてくれます。24時間対応なので、時差を気にせず利用できます。

また、現地の病院にかかるときには日本の保険証が使えませんので、高額な医療費がかかることがあります。海外旅行保険から保険金がおりるまでの間は基本的に自分で立て替えることになりますが、サポートデスクに電話をすると現地で自己負担せずに済む「キャッシュレス治療」のサービスを利用できます。「医療費キャッシュレスサービス」とも呼びます。

日本語でのサポートはほとんどの海外旅行保険で受けられますが、キャッシュレス治療はカードによってサービスに含まれていないことがあります。キャッシュレス治療のサービスがついたカードなら、万が一のときにお金の心配をせずに治療できますね。

海外旅行保険が充実したカード3選

では、海外旅行保険が充実しているカードを3つご紹介しましょう。

ビックカメラSuicaカード

けがによる死亡・後遺障害で最高500万円、傷害・疾病治療でそれぞれ最高50万円の補償が自動付帯されています。利用付帯で国内旅行中のケガでも死亡・後遺障害は最高1,000万円、入院は一日につき3,000円などの補償がついているので、国内外を問わず旅行で活躍しそうです。

年会費は初年度無料、2年目以降は477円(税抜)ですが、カードの利用があれば無料になります。

三井住友クラシックカードA

自動付帯で幅広くカバーできるのがこちら。けがによる死亡・後遺障害で最高300万円、傷害・疾病治療で最高100万円のほか、賠償責任で2,500万円、携行品損害で20万円、救援者費用で150万円の補償も自動付帯されています。

死亡・後遺障害は利用付帯で最高2,000万円にアップしますから、旅行に持っていけばより安心です。

年会費は1,500円(税抜)ですが、オンラインから入会申し込みをすると初年度無料になります。

エポスカード

年会費無料ながら自動付帯されるのがエポスカードです。傷害死亡で500万円、傷害治療200万円、疾病治療270万円、賠償責任2,000万円、救援者費用100万円、携行品損害20万円が自動付帯されています。

旅先での備えを気軽に準備できるカードの付帯保険。すでにお手持ちのカードと合わせて充実したカードを揃えると、より安心かもしれませんね。

※本稿は2018年9月現在の情報をもとに執筆しています。金利や各商品の詳細は今後変わることがあります。

※写真と本文は関係ありません

加藤梨里
ファイナンシャルプランナー(CFP(R)認定者)、慶應義塾大学スポーツ医学研究センター研究員
保険会社、信託銀行を経て、ファイナンシャルプランナー会社にてマネーのご相談、セミナー講師などを経験。2014年に独立し「マネーステップオフィス」を設立。専門は保険、ライフプラン、節約、資産運用など。大学では健康増進について研究活動を行っており、認知症予防、介護予防の観点からのライフプランの考え方、健康管理を兼ねた家計管理、健康経営に関わるコンサルティングも行う。