小型車「ノート」が2018年上期の販売台数で登録車首位を獲得した日産自動車。「サニー」以来48年ぶりという首位奪還は明るいニュースとなったが、その直後に完成検査時の排出ガス測定における不正が発覚した。そんな日産の現状を見ていく。

  • 日産本社ビル

    悲喜こもごもといった感じの日産自動車

再発防止の取り組みが進む中で

日産自動車は7月9日、国内工場における排ガス測定に関する緊急記者会見を行った。今回のケースは、国内5つの完成車工場において、正規の試験環境を整えずに行った排出ガス・燃費測定試験のデータを有効なものとして扱ったことと、一部の排出ガスデータの検査で測定値を改ざんしていたことが主な内容となる。

2017年9月に国土交通省が日産車体(日産子会社)の湘南工場を調査し、無資格者による完成車検査が発覚したのが発端となり、日産では10月2日に西川廣人社長が会見し、約121万台のリコールを表明した。しかし、その後も日産国内工場では無資格検査が続いていたことが発覚し、10月19日には国内全6工場の国内向け出荷を停止するに至った。11月7日からは出荷を順次再開していったが、従業員の意識改革や再発防止への取組みを進めている矢先の日産で今回の問題が露呈し、それらの取り組みが台無しとなったのだ。

  • 日産の西川社長

    2017年10月2日の会見でリコールを発表した西川社長

300を超える質問が集まった株主総会

日産が2018年6月26日に開催した株主総会には筆者も出席し、ルノーとの統合問題で株主からの質問が出るだろうと耳を傾けた。カルロス・ゴーン会長が議長として総会を仕切り、質問にはゴーン会長と西川社長が並んで立って対応した。ゴーン議長によると質問の数は300件を超えたそうだが、株主総会をスムーズに進めるため、アットランダムに現場抽選で7つの質問に絞ったという。結局、ルノー統合についての質問は選ばれず肩透かしの格好になったが、注目されたのは、完成検査問題における経営責任の追及や販売現場の対応の悪さの指摘など、日産の生産・販売現場が疲弊している部分が露呈したことである。

工場の完成検査不正については、「ゴーンさんは会長になっても日産の顔である。なぜ、会見に出てきて陳謝しないのか?」との質問が出た。ゴーン議長は「CEOが会社のボスであり、今の日産のボスは西川さんで私はアライアンスをまとめる役目。日産の新しいボスは西川さんだから、私は登場しなかったのだ」と回答。経営責任者(CEO)を譲った今、あくまで責任はトップの西川社長にあることを強調した。

その西川社長も、今回の排ガスデータ改ざん問題では会見に出席せず、山内康裕チーフ・コンペティティブ・オフィサー(CCO)が対応したことで、記者側から「なぜ、この場に西川社長がいないのか?」と質問されている。

ルノー/日産連合に三菱自動車工業が加わり、国際3社連合の中核となった日産だが、コンプライアンス(法令順守)とガバナンス(統治力)の立て直しは急務となっている。