お笑い芸人の山田ルイ53世(髭男爵)、小島よしおが、現在放送中のTVアニメ『HUGっと!プリキュア』(日曜あさ8時30分~9時)に、7月15日放送回から出演する。本作には、14話から世界的なデザイナーの吉見リタ役としてキンタロー。も参加している。普段は「一発屋会」でも親交のある3人。気の置けない仲間との共演となった今回の出演について、インタビューを行った。
新たに加わる山田と小島は、ジェロス(クライアス社幹部)に仕えるイケメン執事風のタクミとジンジンを担当する。どんなキャラクターとして描かれるのかについても注目だ。
――声優としてキャラクターを演じる上で、役作りや収録で特に難しかったところはどこでしょう。
小島:声優のお仕事は以前にもやらせてもらったことがあるのですが、その時はみなさんがいない自分ひとりの状態で声を出して、監督がマンツーマンでチェックしてくれるという環境だったんです。わからなくても監督の言った通りにすればなんとかなる、いい感じにまとめてもらえるという。今回は(収録に)30人くらいいて、流れの中で声を出さないといけないので、それはすごく難しかったですね。それに今までゲストで声優をやらせていただく機会はあったのですが、レギュラーとしてというのは初めてなので、その雰囲気に呑まれちゃうというか……。
山田:まだちょっとアウェーなんですかね。我々がそう思っているだけなんでしょうけど、空気感がお笑い芸人の現場とまた違うから、変に構えてしまうというか、緊張しますね。
キンタロー。:みなさん気を遣われているんだと思います。あまり軽く声をかけちゃダメだと。私は3回ほど収録しているのですが、私の場合は(吉田)ウーロン太さん(オシマイダー役)がきっかけになって打ち解けられたんですよ。「あっ、しゃべっていいんですね」なんて言われちゃって、「ぜんぜんいいんですよ!」みたいな。私も(声優の)プロの現場にお邪魔させていただいて、はしゃいじゃダメだという思いがあったので、お互いに気を遣い合っていたんだなと。
山田:不勉強で申し訳ないんですけど、雰囲気的に「確実に大御所やん!」みたいな、大御所オーラ半端ない方が何人かいらっしゃったんですよ。
小島:わかります!
山田:そこでまた緊張感をあおられるんです。だから、わかりやすくしてほしいんですよね。ここは大御所ブロック、ここは何年目のブロックとか。コの字でいっぱい座っているんですけど、キャリア別にまず分けてほしいんですよ。企業のパーティの営業とかに行くと、だいたいこの辺が取締役やなとかわかるんです。ああいう感じにしてほしいんだよな。どこに偉い人がいるのかわからないから。
小島:初めは誰がどの役かわからなかったので、頭にキャラクターの顔の絵とかつけてほしかったですよね。あれやってくれれば、「ああ、なるほどな~」ってできてたのに(笑)。
山田:大御所の人にそんなこと言えるか!!(笑)
小島:できれば次の現場からはそれをやってほしいんですよね。
山田:何回かだけでええから。せめて2回だけでええからな。
――キンタロー。さんは、すんなりできたんですか?
キンタロー。:リタさんの声って、実はすごく難しい領域なんですよ。音が難しい。めちゃくちゃかわいいキャラクターのアニメ声でもないし、かといって普段の声でもなくて、最初は年齢を高めに設定して「あら、ヤダ」とかやっていたんですけど、監督から「もう少し若い声でやってくれ」と言われまして。ちょっと若めなんだけど、30~40歳くらいの落ち着いた声というのが一番難しかったですね。いままでにない難しい声の領域でした。
山田:ちゃんと考え過ぎや! 俺らが浮くやろ。
――でも山田さんもすごくいい声で、ナレーターでもご活躍です。
山田:ですが今回は、すごくシュッとしてカッコいいキャラクターですから。今までに何度か声の仕事はやらせていただいたことがあるんですけど、たいていが将軍とか番長とか、要するに「ワッハッハ!」みたいな感じが多かったから、この声を出している自分というのが想像しづらいんですよ。
――確かに最初にビジュアルを見た時はびっくりしました。
山田:見る方も「なんでなの!?」みたいなのはあるでしょうね。だからこちらにとっても新しい挑戦なんです。
――キンタロー。さんは"ものまね"をたくさんやられていますが、今回の声は誰か具体的な方から作り上げていかれたのでしょうか。
キンタロー。:イメージしていた方はいますが、「もうちょっと若く」と言われたので、結局まっさらなところからイチから作り出すことに……。だから逆に難しかったですね。土台が"ものまね"ではなく、あのスタジオから生まれた声なので。
――役をつかむ上で、ポイントになることなどはあったのでしょうか。
キンタロー。:監督から「もっとぶっ飛んでください」と言われて、それで初めてやりやすくなりました。あっちゃん(前田敦子)でもそうなんですけど、泣いていたり感情が高ぶっているほうがやりやすいんです。逆にノーマルはすごく難しいですね。高ぶった声がOKだということがわかったので、それでやりやすくなりました。
山田:監督、俺にはそんなに指示くれんかったけどな……。
小島:ないってことはよかったんじゃないですか。俺なんか2、3回言われましたよ。
山田:ほとんど何も言われなかったな。好きにやってくださいみたいな言われ方やった。
小島:もう大御所レベルじゃないですか!
山田:仕方ないからマイクのほうに行ってなんか言うたけど、すぐOKになってしもうたから……。
小島:「なんか言うたけど」じゃないよ! カッコいい言い方して。
山田:小島くんは監督からなんて直されたの?
小島:「もうちょっと突き抜けてください」とか「もうちょっとおとなしく」とかは言われましたね。
山田:監督の指示もなんかざっくりしすぎなんだよな。「突き抜けてください」とか「ぶっ飛んで」とか。「よくわかんねえよ!」みたいなとこない?
小島:ないですよ! やめてくださいよ、勝手に監督を敵に回すようなこと言うの。
山田:監督に言ってやろうと思って(笑)。
――小島さんは、今回このお2人と一緒に参加ということを聞いて、どう思われましたか。
小島:「一発屋会」とかで一緒にご飯を食べたりとかしますし、そういう意味ではすごく安心感のある2人ですね。ホッとできるメンバーだなって。先輩すぎると緊張しちゃうんですけど、男爵だとぜんぜん緊張しないので(笑)。
山田:なんやねん。ちょっとは萎縮せえ!(笑)
小島:だから伸び伸びできるなというのはありました。
――山田さんはどう思われましたか?
山田:キンタロー。ちゃんはちょっと置いといて、小島くんとコンビ的なものを組むというのが、同じ事務所で付き合いは長いんですけど、実はあまりなくて。小島くんってみなさんご存知だと思うんですけど、「陽」の男なんでね。僕ってどっちかというと「陰」やから、心配ではないけど、その差にどうしようというのはありました。先輩やけど、現場では小島くんに引っ張っていってほしいというのはありますよ。
小島:わかりました!(即答) 学級委員長タイプですからね。学生時代、男爵はひきこもっていたけれど、僕は学級委員長とか応援団長とかガンガン前に出るタイプでしたから。
山田:「一発屋会」でも幹事というか、日取りを決めてくれたりとか、音頭をとっていくほうの人なので、ちょっと引っ張っていってほしいなというのはありますね。
キンタロー。:私も「一発屋会」でお会いする先輩なので、普段の芸人さんよりは安心というか……。
山田:俺らも一緒にというのは、キンタロー。を起用する上でベストな方法ですよ。けっこうほら、めんどくさい子ですから。よくわかっている大人が2人いたほうがいいんです(笑)。
――今回こうした形で出演して、あらためて感じた『プリキュア』の魅力はどんなところでしょう。
山田:(昔のアニメに比べて)すごいテンポが早くて、早いんだけど気持ちいいというか。今の若い子は、ウチの娘も含めなんですけど、こういうテンポのものを見て育っていくんやなというのはすごいなと思いました。
キンタロー。:扱っているテーマでいうと、昔はもっと単純で、「悪は必ず滅びる」みたいな構図だったと思うんです。でも今はそうではなくて、男性、女性といった「性」にとらわれずになりたいものになれるし、女性という「性」に閉じこもらずに、もっと自由なんだよ、夢は叶うんだよということを言っている作品なのかなと思いました。
小島:「なりたいものはなんにでもなれる」っていうじゃないですか。それってすごく大事で、僕が子どもの時とかはわりとそれがダサいというような風潮があったんです。もしかしたら今でも大人の人はいうかもしれないけど。「夢は叶うなんて言うんじゃねえ」みたいな人いるじゃないですか。
山田:俺よく言うわ。
小島:ほんと大っ嫌いなんですよ。
山田:昔からそう言うと(レイザーラモン)HGさんと小島にはよく怒られるんです。
小島:俺は本当になんにでもなれると思うんですよ。特に子どもはそうですし、大人だってそうです。俺もお笑い芸人になるなんていうのは、周りには「なれるわけねえ」と言われていたんですけど、自分は絶対になると言い続けていたらなれたので。そう考えると、夢が詰まった『プリキュア』はすごい。日本の夢を背負ってる作品だなと思います。
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