外為どっとコム総合研究所の神田卓也氏が2018年6月の為替相場レビューと、今後注目の経済指標やイベントをもとにした今後の相場展望をお届けする。

【ドル/円 6月の推移】

6月のドル/円相場は108.720~110.940円のレンジで推移し、月間の終値ベースでは約1.7%の上昇(ドル高・円安)となった。良好な米5月雇用統計を受けて堅調にスタートすると、5日に110円台を回復。日銀が大規模緩和の維持を決めた15日には110.90円台にワンタッチした。利上げに動いた米連邦公開市場委員会(FOMC)と、大規模緩和を維持せざるを得ない日銀との政策スタンスの違いがドル買い・円売りを促した。

12日に史上初めて開催された米朝首脳会談を無事に終えた事で市場に安心感が広がった面もある。その後は、米中貿易戦争の激化が懸念される中で110円台を割り込む場面もあったが、月末にかけては実需のドル買い観測などに支えられて再び上昇。米企業による海外利益の本国送金(リパトリ)観測など、四半期末に絡む季節要因を交えながら、29日には110.94円前後まで上昇して月初来高値を更新した。

【ドル/円 7月の見通し】

ドル/円相場は、7月も引き続き米経済と米政治の両睨みで推移していく事になりそうだ。米6月ISM製造業景況指数から米6月雇用統計へと続く月初の重要統計では、米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げやトランプ米政権が仕掛ける貿易戦争が、実体経済に悪影響を及ぼし始めていないか点検したい。そうした懸念が払しょくされれば、ドル高・円安が進みやすくなりそうだ。一方、米6月雇用統計と同じ6日には、中国製品340億ドルに対する25%の追加関税措置が第1弾として発動される。中国も同規模の対米追加関税を発動する構えだ。

ここまでは、市場も織り込み済みと見られるが、報復合戦がさらにエスカレートするようならドル売り・円買い圧力になるだろう。そのほか、7月には、茂木経済再生担当相と米通商代表部(USTR)のライトハイザー代表による貿易協議の初会合が行われる予定だ。トランプ米大統領と安倍首相の関係が良好とはいえ、日本の対米貿易黒字は688億ドル(2017年)と世界で3番目に大きいという現実もある。貿易戦争が日米間に飛び火する可能性もゼロではなさそうで、当面はトランプ米大統領のツイッター(@realDonaldTrump)のチェックが欠かせないだろう。

【7月の日米注目イベント】

執筆者プロフィール : 神田 卓也(かんだ たくや)

株式会社外為どっとコム総合研究所 取締役調査部長。1991年9月、4年半の証券会社勤務を経て株式会社メイタン・トラディションに入社。為替(ドル/円スポットデスク)を皮切りに、資金(デポジット)、金利デリバティブ等、各種金融商品の国際取引仲介業務を担当。その後、2009年7月に外為どっとコム総合研究所の創業に参画し、為替相場・市場の調査に携わる。2011年12月より現職。現在、個人FX投資家に向けた為替情報の配信(デイリーレポート『外為トゥデイ』など)を主業務とする傍ら、相場動向などについて、WEB・新聞・雑誌・テレビ等にコメントを発信。Twitterアカウント:@kandaTakuya